書評企画『365日の書架』1月のテーマ:時間が経つのも忘れて
『365日の書架』は、関西の書店がおすすめする書籍を紹介する連載企画。ちょっとニッチな世界を紹介する本や、自分自身の人生を考えさせられる本まで、それぞれの店主おすすめの書籍をテーマに沿って紹介します。1月のテーマは「時間が経つのも忘れて」。
1月のテーマ:時間が経つのも忘れて
年を取ると時間が経つのが早くなっていくような気がする。でもこれはけして悪い意味ではないのかもしれない。その間に多くの経験ができているということでもあるはずだから。新しい出会いや発見があったからこそ、そのような感覚に陥るのではないかと思うんです。事実、時間を持て余した大学生の時は、随分と一日が長かった。
企画趣旨
皆さんは、自分の人生を変えた本に出会ったことはありますか?生き方の羅針盤になったり、毎日をちょっと素敵にしてくれたり、新しい価値観を教えてくれる力が書籍にはあります。そんな出会いを与えてくれる場所の一つが、個人の書店です。店主が独自の目利きで選書した書籍は、そのお店でしか出会えないものばかり。他では触れられない、様々な出会いに触れることができるでしょう。『365日の書架』は、関西の書店がおすすめする書籍を紹介する連載企画。参加店舗はON THE BOOKS、只本屋、マヤルカ古書店の3店舗です。ちょっとニッチな世界を紹介する本や、自分自身の人生を考えさせられる本まで、唯一無二のセンスを持つ店主おすすめの書籍を、テーマに添って紹介していきます。
ON THE BOOKSが選ぶ今月の1冊
競馬カルチャーマガジン ラウンダーズ
出版:ROUNDERS
発行:2011年~2014年
金杯に始まり有馬記念で終わる1年、競馬は季節の移り変わりを様々なレースで感じとることができます。時計が1日の時間を指すものならば、競馬は1年の四季を教えてくれます。中央競馬は毎週土日の開催、競馬新聞はだいたい水曜日頃からレースを予想します。競馬ファンは出走馬が確定すれば「あーでもない、こーでもない」と過去のデータを分析して時間を惜しみなく費やします。さあレース本番、勝負です。たった1分~3分の間に決着がつきます。
……さて、この本を読み終えた後、改めて競馬を楽しんでみてください。幾多にも積み重なった人生/馬生のドラマを知っているあなたは、まばたき数十回程度の出来事をどのように感じるのでしょうか?
購入方法:こちらの通販サイトからお買い上げいただけます。
ON THE BOOKS
アートブックやサブカルチャーなどの古本/古書、アジア買い付けのキッチュな雑貨、ここでしか買えない作家グッズなど、ドキドキワクワクがいっぱいつまったお店です。旧大阪府庁舎を改修した大阪府立江之子島文化芸術創造センターにて営業中。
住所 | 〒550-0006 大阪府大阪市西区江之子島2-1-34大阪府立江之子島文化芸術創造センター B1 |
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営業時間 | 11時~20時(月曜定休) |
Webサイト | |
オンラインストア |
只本屋が選ぶ今月の1冊
Himagine
発行:2013年 –
馬鹿をやったのはいつだろうか。
大体の大人は、ある時期を経て思慮深くなり、慎重になり、馬鹿をしなくなり、低俗なものを退け、大人になろうとする。大人であろうとする。その振る舞いに酔いしれると言ってもいいかもしれない。たまに馬鹿騒ぎして反省したり、あの頃はもう戻ってこないとか言ってみたりする。それはやっぱり大人だからだ。そうやって時間が経ったことを認識するからだ。
Himagineというフリーペーパーがある。2013年創刊の社会人による暇つぶしのためだけのフリーペーパーなのだが、7年前かつて学生だった彼らが今なお続けているフリーペーパーだ。とにかく下らない。身になる物がほぼない。ただ暇がつぶせるだけ。本当に馬鹿だなーと思うのだ。だがやがて何号も読み進めているとその姿勢に心打たれるようになる。もう一丁前の大人がこんなにも下らないことに本気になれるのだろうか。そんな姿勢を好気な目で見てしまうのだ。
ここまできたらずっと続けて欲しい。止まったままの時間をずっと動かさないで欲しい。続ければ続けるほど、お酒のようにいい感じに仕上がっていくような気がする。暇があるならばぜひ読んで欲しい。
只本屋
只本屋は、毎月末の土日だけ清水寺のお膝元・東山五条にあらわれるフリーペーパー専門店です。全国各地の魅力溢れるフリーペーパーを取り揃えています。また、本屋としての機能だけでなく、クリエイティブに関心を持つ人々と交流できるなど、カルチャースペースとしても注目されています。
住所 | 〒605-0871 |
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営業時間 | 毎月末の土・日 |
Webサイト | |
オンラインストア |
マヤルカ古書店が選ぶ今月の1冊
全国厄除け郷土玩具
著者:日本郷土玩具の会 / 中村浩訳
出版:誠文堂新光社
発行:2020年
古来より、日本の人たちに愛され、各地の文化や暮らしとともに育まれ、受け継がれてきた郷土玩具。その小さく愛らしい玩具には、人々の大きく温かい願いや祈りが込められています。本書は、日本有数の郷土玩具コレクターで、「日本郷土玩具の会」の会長も務める著者が、疫病退散!を合言葉に2020年の年末に発刊した郷土玩具や縁起物186品を紹介した一冊。
どれも現在入手できるものばかりで、過去の由来や歴史だけでなく、現在の作り手についてや入手方法も掲載されているのがうれしい。また、ところどころ触れられる、10代の頃から郷土玩具に魅せられてきたという著者の蒐集にまつわるエピソードや失敗談、感動した思い出なども楽しく、郷土玩具だけでなく、長い間、絶やすことなく玩具を愛でてきた私たち人間も愛らしいなと思わせてくれる。玩具の愛好者だけでなく、手仕事や日本の文化、暮らしを知りたい方にもおすすめの一冊だ。
購入方法:こちらの通販サイトからお買い上げいただけます。
マヤルカ古書店
2013年オープン、三年前に西陣から一乗寺に移転しました。 古書の取り扱いジャンルは、文学、文化、アート、絵本、食と暮らし、自然、民藝。 毎日のささやかなシーンにすっとよりそい、手のひらでそっと包みたくなるような本を。店舗2階では、新刊の販売とさまざまな催しをしています。
住所 | 〒606-8187 京都市左京区一乗寺大原田町23-12 |
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営業時間 | 11~18時(火曜・金曜定休) |
Webサイト | |
オンラインストア |
WRITER
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26歳で自我が芽生え、とうとう10歳に。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が持てる荷物の量を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。
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