REPORT

斑斑(skip skip ben ben) “台湾から来た二人” @公○食堂 2014.11.01

MUSIC 2014.11.06 Written By 堤 大樹

妖精 from 台湾

台湾インディー界を語る上でなくてはならないバンドは間違いなく“透明雑誌”と”skip skip ben ben”だろう。その両バンドのフロントマン、Vo.モンキーとVo.斑斑(バンバン)が2人で日本ツアーをすると聞き足を運んだ。実は斑斑はmy bloody valentineの台湾ライブで直接メンバーから指名を受けて前座を務めるほど世界的にも評価されている。私は昨年に行われたskip skip ben benアルバムリリース来日ツアーを見たのだが、その日のライブがとても素晴らしく、「世界広し」と衝撃を受けたのをよく覚えている。

 

この日は定刻より10分ほど押してライブがスタート。スタートの時点ですでにお客さんは満員で、立ち見が出るほどだったことからもたくさんの人がこの日を楽しみにしていたことがわかる。「ミナサンコンバンハ、斑斑デス」と片言の日本語で照れくさそうに自己紹介して、アコースティックギターを優しく弾き始める。その小気味よいリズムのギターに透き通った真冬の早朝の空気のような声が乗っかっていく。1曲目は彼女の声が一番引き立つようなシンプルな曲だった。

 

その次の曲からは足元にたくさん並んだエフェクターやルーパーを駆使して次々とリフを重ねていく。一聴するとあやしげだったりストレンジに聞こえるフレーズでも、彼女の手にかかればそれは最高のポップスとなる。その手腕には舌を巻くばかりだったし、一番彼女の音楽的センスの良さが浮き彫りになる瞬間だったのではないだろうか。

 

斑斑は英語と台湾語を使いわけて次々と曲を披露していく。ライブも終盤に差し掛かると、一緒にツアーを回っているモンキーがコーラスとして参加。急遽決まったことだったのか、2人ともお互いの顔を見合わせて様子を見ながら演奏していた。その声はとても優しく、そしてなによりも楽しそうに演奏していたのが印象深い。

 

今回斑斑のライブを見て一番驚かされたことはそのボーカルとしての表現力の高さだ。最初は少女のような無邪気な澄んだ声というイメージだったが、中盤では恋をする女の子のような色気を増して、終盤では母性すら感じる優しい声に変わる。そんな彼女の声に聞きホレているとあっという間に40分のステージは終わってしまった。

 

ステージをおりた彼女に現在新譜のレコーディング中だと教えてもらった。今回のアルバムは特別なものになるからじっくり録りたい、と言っていた。一体どんなものに仕上がるのか楽しみに待ちたいと思う。

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