【SXSW2017】vol.0 まとめ
「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)を知っているか」
これが副編集長岡安との一番最初の会話でした。今思えばこの話からアンテナが始まり、ひとつの目標としてきたこのイベントに念願叶ってようやく参加することができました。プレスという正式な形で参加できたことは、本当に嬉しい誤算でしたが。
自分はSXSW初参加だったので、昨年とくらべてどうだったのかはわからないのですが、所感としては「めっちゃ楽しいけど、情報量多すぎて頭の処理がなかなか追いつかない」でした。
巷の評判に嘘偽りなし
みなさんはSXSWってどんなイベントだと思いますか?僕も正直なところ、実際に行くまでは全然イメージができませんでした。
いわく、「SXSWは世界最大規模のショーケースである」。
いわく、「SXSWでは街中の至るところで音楽が打ち鳴らされている」。
いわく、「SXSWへ行くと人生が変わる」。
これは僕が渡米する前に聞いていた情報なんですが、これに関しては嘘偽りがなかったという印象です。
街全体から音楽が鳴っているという状況が、オースティンに行ってみるまでは本当にイメージができなかったのですが、老若男女が参加する街全体をあげたお祭りと言えばわかりやすいでしょうか。京都で言えば、祇園祭をイメージしてもらえればわかりやすいのではないかと思いました。オースティンの6th Streetを中心としたいくつかのストリートは歩行者天国となっていて、その周辺の全てのレストランやショップで音楽が打ち鳴らされ、映画が上映され、企業がブースを出しているという環境です。
面白いのはオフィシャル以外にも多くのアンオフィシャルイベントが開催されているという点。ここが実にアメリカらしいというか、楽しいことがあれば自分たちもやりたいという意識が強く、ちょっとした公園から民家のガレージ、至るところで勝手なパフォーマンスが行われています。だから本当にその全体っていうのは誰にもわからないみたいで、それがこの異常な雰囲気を作り上げているんだと思います。
たまにSXSWの紹介で「ライブサーキットのようなもの」という説明を見るのですが、個人的にはピンときてません。ライブサーキットと違い、SXSWの非参加者が街にあまりいないんですよね。電車に乗っていても、みんなリストバンドかバッジをぶら下げていて、知らない人同士の50歳のおっさんと、若い入れ墨のお兄ちゃんが「今日見たやべえイベント」の情報交換をしている。この光景はライブサーキットではなかなか見られないんじゃないでしょうか。
またSXSWの本懐はあくまで「ショーケース(見本市)」であり、登竜門にすぎないということ。インディーミュージシャンや封切り前の映画、ローンチ前のサービスなどが中心で、世間一般の人の目に触れる前の、世界の最先端の情報が集まっています。ビッグなアーティストはお祭りに便乗してきているだけで、一部を除いてあまり出ていないんですよね。だからグラストンベリーや、コーチェラ・ボナルー・ロラパルーザのような大きなフェスティバルとは違ったものとして確立できている。もちろん会場によってはガラガラの場合もあるけど、それゆえ自分なりの嗅覚で良いものを掘り出せた時の喜びはひとしおなんですよ。アーティストによってはyoutube見ても全然音源がアップされてなかったり、絶対に日本で見れないような知名度のアーティストも沢山います。この独特な魅力は他のイベントでは味わえないんじゃないかと思います。
そもそも京都のローカルメディアである自分たちが、何故SXSWを取り上げたいと思ったのか
「アンテナって京都のWebメディアじゃないの?」
こんな風に感じた人もそこそこいるんじゃないでしょうか?そうです、私たちは京都(+地方)のWebメディアです。
まずは「日本のカルチャーを外に出したい!」という側面から話をすると、そもそもアンテナで情報を発信するのにあたり、日本人に限定して発信したいわけじゃなかったということがあります。音楽も映画も人種の壁を越えて共感できる素晴らしいひとつの言語だし、日本のインディーシーンにも世界に向けて知られるべきものがたくさんあると思っています。レポートの一日目に目標として「京都の音楽を世界に届ける」って書いたんですが、京都(+地方)の媒体である自分たちがSXSWを取り扱うことで、世界と繋がれる情報の発信場所として機能できればなと考えています。
今の時代インターネットが発達していて、どこにいても世界中と繋がれるわけで、別にみんながみんな東京という目標を目指さなくてもいいんじゃないかなあと思っています。単純な人口で言っても日本の人口は世界規模で言えば何十分の一なわけで、もっとその先にある大きなマーケットがあるのではないかなと。少年ナイフに始まりBOOM BOOM SATELLITESやBo Ningenなど海外に活路を見出したバンドは沢山いて、そういったバンドが少しでも増えると、なんかこう嬉しいじゃないですか。日本は世界的なアーティストが輩出しにくい環境かもしれませんが、日本の音楽がこれ以上世界と切り離されてしまわないように、少しでもこの状況を変える力になりたいんです。
次に「SXSWのことをみんなに知ってもらいたい」という側面から話をすると、SXSW自体が日本ではまだまだ認知度が低く、特に音楽の情報に関しては調べてもほとんど情報がないからです。調べても出てくるのはインタラクティブの情報が中心で、音楽や映画の情報は少ない。だからこそ自分たちが取り上げてもいいのかなと思っています。なおかつ今でこそ「商業的になった」という声もあがっていますが、元々は音楽から始まったインディースピリットに溢れているイベント。これからの日本のインディーシーンの参考になるのではと感じています。
あとはオースティンという街であることも重要です。小じんまりとしていて、アートの土壌があり、なんだか京都に近い雰囲気なんです。僕は一発で好きになれました。これほどまでに街がカルチャーと共存できているケースは世界的に見ても少ないですし、これからの京都(+地方)のあり方としても良いモデルケースになるのではと思っています。おじいちゃんおばあちゃんが楽しそうにもぎりやってるのを見て、本当にいい雰囲気だなと感じたんですよね。これがニューヨークのイベントなら多分取り上げたいとはあまり思わなかった。
だから一度SXSWに行ってみて欲しい
ここまでとやかく色々書きましたが、とにかく楽しいお祭です。そして何よりもこのイベントの一番素敵なことは、誰しもが「音楽や映画などのカルチャーの力を信じていること」と「自分たちがイノベーションを起こせると信じていること」を感じられたからです。そしてみんなが純粋にこのイベントを楽しんでいて、そこには人種の壁も、言葉の壁も、宗教の壁もなくて、同じものを共有できる気持ちよさがある。この雰囲気はぜひ一度現地でこそ感じていただきたいなと思いました。
前置きが長くなりましたが、それでは今年取材した各イベントのレポートをご覧ください。個人的ベストアクトは!!!(chk chk chk)とLVL UP。
【SXSW2017】レポート一覧
vol.0 – まとめ
vol.1 – SXSWとは?
vol.2 – The 2017 Grulke Prize Winners
日別フォトレポート
Daily – 2017.03.12 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170312/
Daily – 2017.03.13 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170313/
Daily – 2017.03.14 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170314/
Daily – 2017.03.15 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170315/
Daily – 2017.03.16 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170316/
Daily – 2017.03.17 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170317/
Daily – 2017.03.18 https://antenna-mag.com/column/sxsw2017_daily_170318/
堤SXSWへ行く
1日目:https://antenna-mag.com/post-10604/
2日目:https://antenna-mag.com/post-10658/
3日目:https://antenna-mag.com/post-10716/
4日目:https://antenna-mag.com/post-10786/
5日目:https://antenna-mag.com/post-10840/
6日目:https://antenna-mag.com/post-10933/
7日目:https://antenna-mag.com/post-11018/
8日目:https://antenna-mag.com/post-11077/
9日目:https://antenna-mag.com/post-11261/
WRITER
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26歳で自我が芽生え、とうとう10歳に。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が持てる荷物の量を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。
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