このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューの中心となる1枚です。
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始まりの予感
美しいメロディと、広がりのあるギター・コーラス。Homecomingsの中には、90年代初頭のギター・ロックのエッセンスが凝縮されているが、なかでもTeenage Fanclubのそれは彼らの創作のすみずみにまで浸透している。2013年にはフロントマンのNorman Blake(Gt. / Vo.)との共演を果たしたことも――彼らのキャリアにとってはエポックメイキングだったとしても――リスナーにとってはごく自然なことだったのではないか。
さて、福富優樹(Gt.)が公言しているように(*1)、とくにアルバム2作目、『Bandwagonesque』からの影響は、本作においてたとえば――1曲目を飾る「the Concept」を想起させるような――やや遅めのミドルテンポやギターのストロークパターン、メロディを活かすコーラスワークやサビのキャッチーさなど、随所に聴き取ることができる。Norman Blake自身が2016年のインタビューで過去作ベスト3に挙げつつ語っていたが(*2)、この珠玉の12曲はTeenage Fanclubの名を世界に知らしめると同時に、ノイズミュージックから脱却する新しい音像を提示した。強く歪んだギターの中に聞こえてくる、すがすがしい始まりの予感。「Songbirds」もやはり、初秋に聴きたい一作となっている。
第三回【3×3 DISCS】:Homecomings『Songbirds』を中心とした9枚のアルバム
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