ナントカ世代『のけもの』
11月2日(土)~3日(日)、THEATRE E9 KYOTOにて、京都の劇団 ナントカ世代により『のけもの』が上演される。
これまで落語・近代小説・四コマ漫画・童話から女優の日記まで、ありとあらゆるものを原作として採り上げ、編み直し、見ても楽しく考えても楽しい現代演劇をつくってきた、ナントカ世代の「原作シリーズ」。その4年ぶりの新作で原作に採り上げるのは、フランスの小説家、エマニュエル・ボーヴが1927年に発表した同名小説「のけ者」だ。ただ自堕落な母子が借金を重ねて困窮する様を描くだけの救いのない物語を、舞台上に京都市の都市計画地図を広げ、不条理劇に再構築する。
不条理劇とは、1950年頃から、サミュエル・ベケットやエドワード・オールビーなどによって作られだした演劇のジャンルを指す。実存主義哲学の用語としての不条理(世界に人間が考える意味など通用しないことを指す)を表現することを目指し、それまでの演劇では用いられなかった手法がとられた。舞台にただ一本の木が立っているだけ(サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』)などの、具体性より象徴性を重視した舞台セットもその手法の一つに挙げられる。ところで、「都市計画地図」とは、地方公共団体がその行政区域内をこれからどうしていきたいかを書き記した地図のことだ。行政(政治)に自分の意見が通用すると思っている人はあまりいないだろう。そのように見ると都市計画地図は、現代人の思い通りにならない、不条理なものの象徴なのとも考えられる。つまりナントカ世代が再構築する『のけもの』は、「100年近く前に書かれた小説と、思い通りにならない未来を記す地図を用いた、現代の私達の物語」ではないだろうか。
もちろんここで書いたことが当たっているかは分からない。脚本・演出の北島淳は何を表現したくて、出演者やスタッフとともにどんな舞台を創り上げるか。ぜひ会場に足を運んで、実際に見て考えてほしい。
ナントカ世代とは
2005年に旗揚げ。当初は、すべての公演タイトルを『~世代』とすることを約束事としていたが、とうの 昔に約束を破り、現在は北島淳を中心とする、京都を拠点とするただの演劇企画である。2008 年から原作を採用して自由に創作を行う「原作シリーズ」を中心に展開している。「正確な日本語」と嘯く特異な言語感覚と、したたかな美意識によって織り成す絵本のような風景描写によって構成するオモシロ不可思議な世界観を得意 としている。
公演 | ナントカ世代『のけもの』 |
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原作 | エマニュエル・ボーヴ『のけ者』(渋谷豊訳、白水社) |
脚本・演出 | 北島淳 |
出演 | 延命 聡子、金田一 央紀、勝二 繁、土肥 希理子、永榮 紘実、松野 香澄、真野 絵里、御厨 亮 |
スタッフ | 音響:北島淳 舞台監督:釈迦谷悟 照明:真田貴吉 制作:作田京子・外山華子 製作:蚤の市 |
会場 | THEATRE E9 KYOTO (〒601-8013 京都府京都市南区東九条南河原町9-1 ) |
日時 | 2019年11月2日(土)~3日(日) 3ステージ 2日(土) 19:00- 3日(日) 11:00- / 15:00- ※開場は開演の20分前、受付は40分前から |
料金 | 一般:前売1,700円,予約2,000円,当日2,500円 学生・U25:前売800円,予約1,000円,当日1,500円 ※9月26日(木)からナントカ世代HPにおいて前売・予約受付 (前売・予約は前日24時まで受付) |
取扱 | ホームページ:http://sedai.main.jp メール:sedai@jv.main.jp TEL :090-7151-7107 |
助成等 | 京都芸術センター制作支援事業 beyond2020プログラム(京都文化力) THEATRE E9 KYOTOオープニングプラグラム |
WRITER
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92年生。「役者でない」という名で役者してます。ダンスやパフォーマンスも。言葉でも身体でも表現できる人間でありたいです。
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