INTERVIEW

bed 4thアルバム『via nowhere』特別1万字インタビュー!彼らの考える「bedらしさ」とは?〈前編〉

MUSIC 2016.03.07 Written By 山田 和季

結成10年を越えてもなお、精力的な活動を続けるbedがその証拠としての4枚目のアルバム『via nowhere』を3月9日にリリースする。近年のリアルな京都バンドシーンを語る上では、彼らの存在を避けては通れないであろう。前作『Indirect Memories』より約2年3カ月ぶりとなるリリースだが、その間にオリジナルメンバーの休止期間を経ている彼ら。その間もサポートメンバーをいれてのライブ・曲作りを絶えず行う姿勢は京都中のバンドマンが舌を巻き、またその姿からたくさんの刺激を受けたことだろう。

 

そんな愚直なまでにまっすぐで等身大な「今」のbedが刻まれた今作。Gt / Vo.山口さんをお呼びしてのインタビュー、とってもアツいものとなりました。アルバムの内容についてはもちろん、今のbedが今のbedたる理由、彼らの活動に込められた思いなど10年以上活動し続けている今だからこそのbedらしさに迫る内容となっています。

bed

 

元々別々のバンドで活動していたGt / Vo.山口、Gt / Vo.ジューシー、Dr.長生、Ba.村山の4人で結成。結成当初から刺激的で力強いライブが評判を呼び、コンスタントで着実なライブ活動を通して国内外問わず様々なバンドと共演。地元である京都へ多くのバンドを招聘するなど、精力的な活動を止まることなく続けている。

 

特にバンドマンを中心に熱い支持を得ており、轟音と繊細さが共存するそのサウンドは年齢性別を問わず高く評価されている。群雄割拠のインディーバンドシーンにおいても、その存在感は確固たるものを築き、日々更新し続けている。

 

2016年03月09日、4thフルアルバム『via nowhere』をリリース。

「100万周年」が出来た時にアルバム像に芯が通った

──

2年ぶりの新譜、リリースおめでとうございます。リリースまでの間にBa.村山さんの離脱期間が1年ほどあったわけで、もちろん様々な葛藤があったかと思いますがいかがでしたか。

山口

字面だけ見たらすごくかっこいいような言い方かもしれないけど、僕らはちょっとでも止まってしまうともうそこから動けなくなるんじゃないかという心配があったんです。もちろん各々の仕事とか家庭とかがあるので。よっぽどのことが無い限り歩みを止めるっていうことはしたくなかったですね。

──

今作『via nowhere』からは村山さんが不在だったこともあって、曲の作り方をセッション方式から大きく変えてみたそうですね。とても大きな変化だと思うのですが、なにか感じたことはありますか。

山口

ベースが不在のままでの曲作りだったから物理的に弾く弦の数が増えましたね。今までやったらギターの単音×単音にベースがあってって感じだったけど、そういうのがほぼなくなってギターだけでもちゃんと曲として成立するような作り方になりました。基本弾き語りに近い形で持っていくようになったから……今まで本当にこんな作り方したことなくてスタジオでゼロからせーので出し合うやり方ばっかりだったので。

──

これまでのアルバムも『via nowhere』でもボーカルの割合が山口さんとGt / Vo.ジューシーさんでほぼ半々だなっていう印象があるんですが意識はされているんですか。

山口

今回で綺麗に半々になりましたね。3枚目まではスタジオでセッション的に作って行く中で、ノッて来た方が歌い出してそのままその曲のボーカル担当する感じだったんですけど4枚目はちょっとだけ意識しました。半々ぐらいで行こうかなって。ジューシーメインの曲が増えてきたら「あっ、俺もそろそろいっとこかな」みたいな。特に今回はネタ持ちより制だったから「やべぇあいつめっちゃ持ってきてる、俺も作らないと」っていう気持ちはありました。

──

いろいろ試行錯誤や変化があった4枚目だと思うんですが、その中でも特にターニングポイントになった曲や意味の深い曲とかはありますか。

山口

あんまり自分たちの中ではアルバムの曲で強弱があったりするわけではないです。強いていうなら1曲目の「100万周年」って曲。曲を作っている中で「あっ、これでアルバム作れそうやな」って思う瞬間があるんですけど、この曲が形になったときがその瞬間でした。その時点ではまだ新しい曲も全然作れてなかったんですけど「この曲でアルバムに芯通るな」って思ってそこからなんとなくアルバム像っていうのが見えてきました。単純に良い曲できたなって思ったし、メンバーそれぞれがこの曲の完成をきっかけに次のステップにむけてスイッチが入ったような感覚がありました。ここからは結構早かったです、スタジオ1回いったら1曲できていく調子でエンジンかかっていきましたね。

しっかりと自分の歌と向き合いたい

──

個人的な印象としては1stから枚数を重ねることに「歌」にすごく重点を置いているバンドだと感じているんですが、そのように変わってきている理由などはありますか。

1stアルバム『Response』
山口

バンドアンサンブル・サウンド面で誤魔化せるのには限界があるというか、いつかネタが尽きてしまうというか…結局はいつか歌と向き合わなくてはいけなくて、ましてやこうやって日本語でやっているのでガッツリ自分の歌と向き合わないとバンドとして絶対に良くならないと思っています。周りのバンドについても、ちゃんと歌と向き合って苦しいながらも乗り越えていけたバンドは今も頑張っているバンドが多いですね。単純に自分たちが好きなバンドも歌のうまい下手に関わらずちゃんと歌おうとしているっていうバンドが多いので、実はそこって一番恥ずかしい部分でもあり大事なものだと思う。自分の歌いたいものがちゃんと歌えたらそれだけでライブの達成感とか満足感も高いし、枚数を重ねるたびにそれは実感していますね。

──

今作はどういったところで歌と向き合ってきたんでしょうか。

山口

2枚目まではわりと早録りというか1回バンっと録って直してやっていたんですけど、3枚目の時のエンジニアさんがその点シビアな方だったので細かいピッチだったりとかを補正に頼るんじゃなくてちゃんと自分の声で何回も納得がいくものが出るまでやりなおして……そのときに「メロディってここまでやらなあかんねんな」っていうのが3枚目のときにあったので、4枚目はもうそれありきで更にその先に挑まないといけないっていう気持ちで自分の中のメロディをちゃんと歌い込んでレコーディングに臨みました。

──

山口さんが大事にしている歌のテーマって何かありますか?あるとすれば、ジューシーさんと共通のビジョンを共有できているんでしょうか。

山口

歌メロに関しては同じことは考えていると思う。しっかり自分の歌と向き合って、力強い歌を歌いたいっていう意識。あとはなるべく難しい言葉は使わずに、表現に逃げるのではなくてストレートな歌にしたいっていう意識もあるかな。あとはあんまり俺が俺がっていうような歌は性格上向いていない (笑) 。まあそれは勿論あくまで僕らの場合なんですけど。例えばbachoとかだと言霊というかメッセージ性が強い、日本語ラップ的な言葉でぐいぐい引っ張って行くタイプですよね。仲良くさせてもらっているので話もするんですけど、彼らの場合はメッセージを伝えることに重きを置いているような歌詞の作り方をしていて、僕らとはベクトルが違いますよね。

僕らは逆にもっと日常的だったり自分たちのパーソナルな部分を歌に落とし込むっていうのを意識していますね。そういう雰囲気はジューシーとも共有はできているんじゃないかな。だってジューシーがある日突然「冷凍都市」みたいな歌詞持ってきたら流石にやめとけって言うし (笑) 。ジューシーも「それは違うんちゃう?」みたいな部分があれば言ってくると思うんですよね。

──

今までお互いの歌詞について言及したことはあるんですか。

山口

全然ないですね。ライブでジューシーがマイク通ってないけど俺の歌詞を口ずさんでいたりするときがあって、そういうのはちゃんと僕の歌も歌詞も聞いてくれてるんだなってちょっと嬉しくなる (笑) 。そういうところで確認したりはしますね。

──

今日お話しさせていただく前からもライブを大事にされているバンドだとは思っていたんですが、bedにとってCDの位置づけ・役割ってどのように考えていらっしゃいますか。

山口

ちゃんとバンドとして前進していることを示すツール、っていう位置づけかな。音源を作ることで自分たちの「今」を刻むことができて次に進んでいけるというか。あとは単純に久しぶりに会った人に「まだ音楽やっているの?」って聞かれたりもするから、興味のない人とか離れている人にはたちまち届かなくなってしまう現状に対して「アルバム今度出すよ」って言えるだけでだいぶ違うと思うんです。

数字として反応も見えますし、音源を全国流通させることの意味はちゃんとあると思っています。僕らはちゃんとそうやって刻んで行かないとダメなタイプで、「俺らはちゃんと出すよ」って意地もちょっとある。それに刺激を受けて「俺らも出す」っていうバンドも出てくると思うし、身近なところで言うとmy ex、my letter、hellohawk、CARD、melegoatとかが最近リリースが続いていたし「やばい!俺らも出さな!」とは思いましたね。僕ら10年活動していてリリースも3枚あるけど、下から突き上げられてるなと思うのでちゃんと見せないとなって。そういうのをこれからも周りのバンドと繰り返していきたい。

遊びを「らしさ」に落とし込んでいったのが4thアルバム

──

外から見ている人たちの思う「bedらしさ」というものがあるとは思うんですが、山口さんたちの内からみた「bedらしさ」ってどういうところだと思いますか。

山口

あまり意識したことはないけど、例えばCDショップで展開してもらったときに「京都インディーの~」みたいな文句をつけてもらうことが多いんですけど、自分たちは「ずばりココ!」という位置づけよりはもっと幅広くおいしいところに居たい気持ちはありますね。オルタナ・インディーロックでありながらもよりパンク・ハードコアのバンドシーンにも足を突っ込んでいたい。自分たちで企画を組むときにも、このバンドにはこのバンド!ってガチガチに固めるよりはちょっと横幅のあるようなジャンルとかバンドとかを意識しています。僕たちだからこそ作れるような幅っていうのは常に意識していますね。

──

楽曲に関連する部分での「bedらしさ」は何か意識していらっしゃるところはありますか。

山口

3枚目の『Indirect Memories』を出した時に「これがbedの決定版」っていう意識があって、これを聞いてさえもらえればbedがどんなバンドか分かるっていうアルバムとして作りました。これが完成したときにbedの骨格というか、芯が一本ドンッと通ったような感じ。自分たちが考えていた「bed節」っていうのがあって、例えばBPMだったり、ビートの選び方とかコード感とか…ここをこうすれば自分たちっぽくなるよなっていうのが3枚目で形成されていたので、それじゃあ4枚目はどうしようかなって考えたときにその先を超えて行きたいなと。

自分たちの武器とからしさを出せる方法がもう分かったので、極端な話ここから先はある程度何をやってもbedらしくなると思うんです。だからあとは自分たちなりにどう遊ぶのか、いろいろやってみた末に「bedらしさ」に落とし込んでいったのが今回の4枚目ですね。聞く人が聞いたら相変わらずって言われるかもしれないけど、自分たちはその遊び部分をすごく意識しました。

3rdアルバム『Indirect Memories』
──

その遊んだ部分とは具体的に言うと何ですか?

山口

3枚目まではツインギターが絡むとかベースがずっとリフっぽいとかBPM130ぐらいのエイトビートが多いとか…そういう部分はあったと思うんですけど、あえてそういうところを一回取っ払ってみました。ギターのリフとか気にせずに片方のギターがジャーンってコード弾くとか、今まではセッション的につくってきた曲をひとりが根幹をしっかり作ってくるとか。もちろん遊んだ結果イマイチやなみたいなのもありました。曲の展開をもっと増やしてみるとかも試してみたんですけどあんまり自分たちには合わなかったですね。自分たちらしさは掴んでいるので合わないものは合わないなって試した瞬間にわかるんです。

──

やってみた結果、やっぱりこれは譲れないなみたいな部分ってありましたか。

山口

ギターロックらしさというか、ギターの音がバーンってくる感じは譲れなかったですね。ドライブさせたときのジャーンっていう気持ちよさは欠かせない。ピロピロピロ~みたいなことはやらない (笑) 。もし仮に曲の途中でそういうのを入れたとしても、最終的にはジャーンってなっちゃうと思う。ロックらしさというか、歪んだギターかましてなんぼでしょって思っています。

これまで活用しきれていなかった武器をしっかりと考えたい

──

確かにリスナーとしてもそのbedらしいサウンドイメージはとてもしっくりきます。ちなみに、今後の曲の作り方はどう取り組んでいく予定ですか。

山口

4枚目の3人で曲作って村山に投げてベースつけて4人で合わせていくやり方かな。もっと沢山スタジオに入れればセッション的なやり方でもいいと思うんだけど、それも限界があるかなと。

──

もし、時間や環境を気にすることなく制作を行えるとすれば、どちらのやり方が好ましいと思いますか。

山口

やっぱゼロから4人で作っていくときはその場のノリとかライブ感が出るからそれもいいと思うんですけど、自分の考えではそのやり方は20曲ぐらい作っちゃうと引き出しが終わっちゃうと思うんですよね。両方のやり方で作っていけるのがベストかなと思う。まぁどうしてもセッション的なやり方は時間を要するので…4時間スタジオ入って何もできなかったとかもあったし。どうしてもそこは時間とか効率は考えちゃいますね。まあ考えなくていい環境であれば、セッションですごい曲ができたら気持ちいいですよね。

──

もう少し新譜についてお伺いします。今作を作るにあたってどういう意図・テーマがあったのかお聞きしたいです。

山口

5曲5曲でそれぞれメインボーカルを務めているんですけど、自分たちの持っているけどこれまで活用しきれていなかった武器、例えばボーカルが2人いることでもっとコーラスとかもできるんじゃないかとかギターソロももっと入れれるんじゃないかとか。そういうところをちゃんと考えてみようという部分はありました。あとはメロディの良さとか曲の強度とかはこれまでちゃんと作品を積み重ねてきたからこそ、しっかり今回も出していかないと駄目だろうとは考えています。

後編はこちら

via nowhere

 

bed-nowhere
 

発売日:2016年03月09日 (水)
価格:2,000円(税別)
発売元:3P3B Ltd.
販売元:JAPAN MUSIC SYSTEM

 

収録曲

1. 100万周年

2. ヒマな2人

3. プレイバック

4. YOU

5. 誰も知らない

6. stairway

7. シチュエーション / ジェネレーション

8. クライング

9. つまらない土曜

10. Note

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