INTERVIEW

ー僕らにとってのシューゲイズー ART-SCHOOL木下理樹×blgtz田村昭太のルーツに触れる対談

MUSIC 2017.10.30 Written By 山田 和季

2017/10/08(日)に京都三条VOXhallと京都木屋町UrBANGUILDの2会場にまたがって開催された『DAYDREAM’17』。シューゲイズというジャンルに焦点を当てたこのイベント。主催団体<京都SHOEGAZER>代表の片山宜寿(colm)の「京都でシューゲイザーイベントが観たいけどない。じゃあ自分で作るか」というDIY精神から発起し、今年だけでも京都・東京・名古屋・台湾での開催が決定するなど確実にシューゲイザーの輪を広げていっているイベントだ。

 

今回の公演にはスペシャルアクトとしてDJ木下理樹(ART-SCHOOL/Killing Boy/Ask me?)とblgtzが参加。blgtzはバンドセットでの演奏と、翌日に田村昭太ソロセットでの演奏もあり話題を呼んだ。メジャーなバンドマンたちからも支持されることの多い彼ら。この日の共演者の中にも、熱狂的といっても差支えないほどに彼らのことを敬愛し音楽を始めたバンドマンが多くいた。それぞれにとって特別なイベントとなったことだろう。

 

今回はイベントの直前にお二人のシューゲイズ観に迫るインタビューを決行。それぞれの楽曲から感じられる破滅的な美しさや儚さから、もしかしてこの二人って似ているのでは?と思っていたリスナーも多いのでは。そんな共通項も見えてくる内容となった。

 

根幹にパンクを感じるシューゲイズたちの魅力

――:今回、シューゲイズのバンドを集めたイベントということでお二人の考える「シューゲイズ観」みたいなものにフィーチャーできたらと思っています。お二人はシューゲイズに影響を受けているところも多いかと思うのですが、具体的にどういったアーティストや作品に影響を受けているのでしょうか。

 

田村:僕はどちらかというと綺麗目なものの方が好きですね。slowdiveとかpale saintsとかは普通に好きです。あとは4AD周りのアーティストとかCocteau twinsとかmy bloody valentineとかってもともとポストパンクの流れから派生してきて「シューゲイズ」って呼ばれるようになったんですけど、そういうルーツがちゃんとあるバンドはすごく僕の中でしっくりくる感じはあります。例えば90年代のシューゲイズシーンだけを切り取って聞くよりも、そういったルーツも含めて聞く方がもっといろんなジャンル性に深く入っていけますよね。

 

――:マイブラを起点にもっといろんなジャンルの音楽に辿りついていけるということでしょうか。そこで出会ったものがまた田村さんの作品に生きてきたりするんですね。

 

田村:そうですね。もともとノイズ音楽が好きなので、ノイズのザラついた感じとかは自分でも演奏してて気持ちいいなってなります。

 

――:やっぱり、聞くより演奏する方が気持ちいいんですね。

 

田村:それはきっと、みんなそうでしょう。みんな、演奏するときはうつむいてやってますしね。

 

――:木下さんはシューゲイズのどういったところから影響を受けていますか?

 

木下:そうですね……僕がシューゲイズについて伝えたいことはもう全部彼が言ってくれました(笑)。うーん、あとはアノラック(トゥイー・ポップ)っていうジャンルの影響も大きいかなぁ。アノラックサウンドももともとパンクから派生してきたジャンルなんですよ。だから僕はその系譜を辿っているマイブラも好きで、マイブラの初期の方の作品ってちょっと可愛らしいじゃないですか?メロディとかコード進行とかね。あとはRIDE……いやRIDEは途中からおかしくなってしまったんだ…… (笑)!でも1stの『nowhere』はやはりとても良いですね。僕『シューゲイザー・ディスク・ガイド』の帯にも「シューゲイザーはジャンルや世代を超えた」って書かせてもらったんですけど、シューゲイズって「ジャンル」というよりは「生き方」に近いですよね。生活とか物事の考え方みたいなところにまで染み渡っている気がします。まぁ一体何をもって「シューゲイザー」とするのかは良くわかんないんですけど。んー、僕は轟音を浴びてるときって静かな気持ちになるんですよ。例えば大好きなMogwaiとかenvyを聞いてるとき、とっても静かな気持ちに僕はなる。

――:厳かな気分になるときがありますね。

 

木下:厳か……、なんか天空に昇っていってるような気分になる。

 

――:「何をもってシューゲイズとするのかは分からない」って先ほど仰っていましたけど、今シューゲイズというジャンルそのものに対する注目が盛り上がってきていますよね。RIDEの復活やベルセバ来日なんかもあって……でもその度に「シューゲイズとは?」という答えの出ない議論が繰り返されている気がしています。あくまでお二人にとっての「シューゲイズ」の定義って何ですか?

 

田村:僕の定義となると Talk Talkだとか、あとはAztec Cameraの2ndアルバムに坂本龍一さんがプロデュースしたものがあるんですけど、そういった80年代の作品のリバーブの深み=シューゲイズってことになっちゃうかな。一般的な定義だとやっぱり「下を向いて轟音を掻き鳴らしている」っていうのがシューゲイザーのイメージになるんだろうけど。

 

木下:RIDEのヴォーカルとかもうハゲちゃってるから下なんて向けないよ……。

 

――:たしかに……(笑)!でも「シューゲイザーは下を向く」って定義としてみんな言いますけど、盤になっちゃうと分からない訳じゃないですか。盤の場合ってどういうところからシューゲイズ性を感じ取るんですか?

 

木下:僕は初めてblgtzのアートワークを見たとき、シューゲイズっていうのかな……なんかパンク的なものを感じました。センスの良さというか。基本的にセンスは重要ですよね。「俺たちシューゲイザーだぜ!」って言っちゃうような人って多分センス無いと思うし、隠しても出てきちゃうのがその人の本質であり、魅力であり、シューゲイザーである部分に通じていると思う。

 

田村:形だけで入れるものでもないですよね。どんなジャンルでも、何でも。

 

木下:でもシューゲイズ好きな人ってなんかセンス良くないですか?ファッションとか映画とか、生き方とか生活にこだわりがある人が多い気がする。音楽の面だとエフェクターの細かい音作りへのこだわりだったりとか……bloodthirsty butchersの吉村さんとかもそうだったなぁ。「なぁ、理樹。俺たちはシューゲイザーだろ?!」って説教されましたからね(笑)。

 

――:吉村さんは言っちゃっても、全部後からついてきているから格好いいですよね。

 

木下:なんで俺説教されてんだろうな……とは思いましたけどね(笑)。

自分の音楽で「どこかの誰かの自殺を止められたんじゃ……?」って気はしている。

――:アンテナも京都SHOEGAZERも京都を土壌としている団体なのですが、京都って学生の街かつカルチャースポットにも恵まれている土地なんです。なので学生をしながらバンドをやっている若者も多いんですけど、お二人が10代・20代の頃ってどんなことを思って音楽をされていたんですか?

 

田村:僕は音楽始めたときってずっと部屋にこもって宅録をしていて。そのときは「世の中クソだな」って思いながら曲を作っている反面、自分の曲を「世界中の人が聞いて、すごいって言うに違いない」とも思っていました。そういう気持ちが昔はすごく強かったんですけど、まぁそこからいろいろあって何年も経って、今はそうじゃないなって思うようになったんですけど……でもあの頃は本当に何も考えてなかったですね。

 

木下:僕も宅録始まりです。でも家がとても厳しかったんですよ。音楽で食べていきたいってなると、じゃあ家出ていけって話になるんですよね。だから、とにかく自分が良いと思える曲を書いて音楽で食べていけるようになるんだって気持ちはとても強かった。今の子たちは感覚的には仕事をしながら好きなこととして音楽をやるっていう考え方がポピュラーなのかもしれないけど……でもそれは音楽が音楽だけで食べていけるほどの商品として成り立たなくなってきている背景もあるとは思いますが。僕はそのときの気持ちは今でも持ち続けているし、遊びの音楽が良いときももちろんあるんだけど、シューゲイズ然りやっぱり心が動く音楽っていうのは本気のものが多いなとは感じます。

――:木下さんがこれまでに受けられた各所のインタビューの中で「若い人たちのシェルターになるような音楽をしたい」という発言がとても印象的で、下の世代のことを常に考えている方なんだなぁと思っていました。でも木下さんもかつてはマイブラなんかに救われていたわけですよね。いつから救う側に立つようになったのでしょう。

 

木下:いや、僕は最初から今までずっと音楽を聞いているときは救われていますよ。救われるって言ったら大袈裟かもしれないけど、そこに居場所があるなって感じる。単純にそれをバトンタッチしなきゃいけない年齢になってきただけ。

 

――:救われ続けているけど、救うこともできるようになってきたっていうことでしょうか。

 

木下:救えるようになったかどうかっていうのはよく分かんないけど……。例えば、どこかの誰かの自殺を止めれるようなことをしたんじゃないかな……?って思えるときは正直あります。

 

田村:ときどき長いメールが届くんですよね。そういう「救われました」っていう想いが書かれたものが。そういうのを見ると嬉しくはなります。木下さんと僕を同じ括りにしていいのか分からないんですけど、お互い歌詞が自傷的な部分もあるんですかね?聞いた人にとって自傷的な部分を代わりに埋められるような音楽というか、身を削っている部分があるというか……。

木下:身を削った分、ちゃんとこっちに返ってきてくれるよね。まぁ、こっちの目は死んでるんだけど(笑)。今ってフェス文化も盛んだし、バンド自体の数ってすごく増えてきているじゃないですか。一体この中でどのぐらいの数のバンドが生き残るのかなぁとかときどき思うんだけど、その中でそうやって僕らを選び取ってくれているんでしょうね。

 

田村:最近は音楽の聞き方自体も変わってきていますよね。ストリーミングやクラウド化されている今は、良い音楽を取りこぼしても何ら問題がない。あとからいつでも聞きにいけますし。これを聞くなら次はこれ、みたいな流れもできちゃっているし自分で選び取りにいく感覚は薄れてきますよね。

 

木下:でもblgtzは例えるとチェーン店みたいな音楽じゃなくて、「うちにしかこの味は出せないんですよ」っていうタイプの音楽をやられていると思いますよ。

 

田村:ありがとうございます。

 

――:わかります、知る人ぞ知るというか。私の音楽の聞き方の話になるんですけど「好きなアーティストの好きなもの」を聞くっていうのがすごく好きなんです。blgtzはそういった聞き方でこそ引っかかってくるタイプのアーティストだなと感じています。選択肢の第一線には出てこないかもしれないけど、第一線にいる人たちがこぞって好きなタイプのアーティストじゃないかなって。

 

木下:そういうアーティストが長く太く生き残っていくのが一番良いと思うんだけどね。

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重なる部分もある二人の世界観は一体どこからインスピレーションを受けているのか?

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