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三者三様のウェットなアツさに満ちた夜。CARD企画 “PICK ME UP vol.7″ライブレポート

MUSIC 2017.08.25 Written By 山田 和季

 

2017年8月12日、梅田HARDRAINにて催されたCARD企画『PICK ME UP vol.7』。New T-shirtのWリリースツアーという位置づけとなっている今回の企画。この前日には名古屋RIPPLEにてshe said企画に出演、翌日は京都GATTACAにてライブ、その後も徳島・東京と絶賛お盆ツアー中のuri gagarn。関西に来る頻度は決して多いとは言えない彼らのライブをじっくりとスリーマンで見ることができる夏は今年だけ!?そしてuri gagarnと同様、10月ボロフェスタへの出演が決まっているCARD。しかし直近8月25日 (金) には神戸Helluva LoungeにてアメリカのClap Your Hands Say Yeahとの共演が決定しており、どちらもまたとないステージになること間違いなし!そんなアツい夏がまだまだ終わらない二組に加えて、その名の通りAnd Summer Clubがさらに濃密な夏の夜をお膳立てする1日となりました!

 

 

テキスト:山田和季

写真:岡安いつ美

 

And Summer Club

uri gagarnともCARDとも未共演ながらに本日ここへ招集されたのは「HEAVY HAWAII PUNKバンド」を名乗る大阪の4人組、And Summer Clubだ。「よろしくお願いします!」と元気に飛び出てきたかと思えば、1曲目から一心不乱にフロアタムを爆走させるDr.高山に向かって「ちょっと待ってちょっと待って!曲順違う!」と叫ぶGt.Vo.角田……いきなりのちぐはぐさを披露し笑いを誘う場面も。しかし改めて曲が始まると、フルスロットルなショートチューンの応酬であっという間に彼らの土俵へと連れていかれる。終始中腰どころか低腰にも限度があるぞ!という程に腰を落として弾くチャーケンのベース、軽やかに弾いているかと思えば唐突にガツンとギュインと歪む斗紀世のリードギター。軽快でいて爽やかなサウンドも織り交ぜながら、ああ!確かにこれはパンクだぜ!と思わず拳を握らせるようなライブ感がある。

斗紀世がVo.を務める曲では、ふふーんとした表情で歌いながら同時にギターで単音フレーズも弾き、いかにも軽々とそのままギターソロまで独り占めしてしまう彼女の姿に目と心を奪われてしまう。その一方、それまで目立っていた単音フレーズを弾かずにギター二人がひたすらにコードをド歪みまくりで掻き鳴らしまくるシーンでは、それはそれで夏独特の焦燥感を駆り立ててくる。続けて「友達のカップルに捧げる歌です」と言って披露した新曲は、なんともゆったりしたグッとくる曲。心をぎゅーっとする力の優しさはそのままに、でも二段階にも三段階にもグッとくるツボをじんわりと突いてくる。軽やかだけどパンチと重みのあるショートチューンたちに、ときどきアンニュイさを覗かせてくる感じ。このアンニュイさがHEAVY HAWAII PUNKの『HAWAII』を腑に落としているんだな。

uri gagarn

ハハハとGt.Vo.の佐藤が笑いながら「uri gagarnです!」と挨拶すると、そのままの飄々としたuri gagarnらしい疾走感にあふれる“Korobbokuru”からスタート。相変わらず最初から最後まで一貫してステージ上で前を向くことがなく、背中を向けっぱなしのBa.英。ひたすらにハイポジションで構える彼のベースから放たれるキャッチ―なリフにわくわくが止まらない!” Octuplets”で得も言われぬ不穏な旋律を響かせたあとに、もはや凶悪さすら感じるほど爆音の”Resistor”!その圧と言ったら全部をなぎ倒して踏みつぶしていくブルドーザーモンスターのよう。そんな常にフルテン状態みたいな曲の中でも、曲のピークに向けてまだまだエネルギーを増して畳みかけてくるのだから、彼らのライブはもはや音の暴力である。

 

 

佐藤のギターは不思議な音がする。うるさい訳でもないのに重たくてズンとして研ぎ澄まされていて、でも籠っている訳でもないのに丸みも帯びている。ほとんど8ビートやルート弾きのないベースに、そんな重くて心臓にクるギターが重なるといよいよ脳みそ掴まれてぐらぐらに揺らされている気分になる。でも何故だかそれがしんどくなくて、ずっとこの甘い揺れの中に浸かっていたいと思えるのがuri gagarnだ。

 

どことなく哀愁漂うコードから奏でられる”IJDB”。物悲しくなるギターのそばで叩かれるドラムだけでもずっと揺れていられる……と思うのだがそうもさせてくれないのが彼ら。これでもかと圧と感情を増してくる後半の流れにはドラマティックさすら感じる。紛うことなき名曲である。足元はRATしか踏んでいないのに、こっちの感情を揺さぶるほどにこの1曲の中で魅せるベースの豊かさは一体何なんだ……。

 

 

最初から最後までバタバタとギターを抱えて跳ねる佐藤の振動が、リアルに軋みがちなHARDRAINの床を通して伝わってくる。それまで文字通り息を飲むほどのステージに圧倒されてばかりいた客席からも思わず「かっこいい!」という声があがった。10月にはボロフェスタへの出演も決定しているのが今から楽しみで仕方ない!

CARD

 

静と動のコントラストが印象的な”WHITE LINE”から演奏は始まり、降り注ぐようなアルペジオに思わず目を閉じてしまう”雨”へと移り変わっていく。観客はその美麗さに、恵みの雨を待ちわびていたかの如く歓声をあげる!ギター二本のアルペジオの重なりから広がっていき、どんどんとドラマティックなメロが展開されあっという間にフロアは彼らの空気に飲まれてしまった。フロアタムが打ち鳴らされてズンズンと力強く進んでいく様と、一貫してひたすらに美しいギターとコーラスが止まない風景は、さながらまさに冷たい雨が降っているかのよう。続く”pass”では散歩しながら不意に口ずさみたくなるほどにチャーミングなリフが愛おしい。そんな優しくてキュートな中にも交えられる、要所要所で少し尖ったGt.清水のフックあるギターや後半に巡ってくる轟音っぷりは何回聞いてもテンションをくすぐられて顔がニヤついてしまう。

 

 

“yank”では耳触りの良いフワッとしたGr.Vo.中野の声の上から、メンバー全員がさらにフワッとしたコーラスを三本も重ねてくる。これがせわしなくクルクルと周っていくような曲調にも、不思議とがっつりハマるのである。ステージ上ではBa.白神の前に清水と中野がオラオラ~と詰め寄ってくる場面もあり、すっかり盛り上がったフロアのテンションをさらにグッと引き上げる。ライブ中盤で披露された新曲は撫でるような中野のギターが印象的な優しい一曲と、じわじわと増幅してはまた消えていく絡み合う二本のギターの轟音に、気が付けば溺れさせられているような心地よい息苦しさを感じる一曲。振幅たっぷりのサウンドから徐々にラストにむけて音像が鮮やかにはっきりしていく様といったら!またしても全員で奏でるコーラスに加えて、気持ちいいほどに遠く向こうから空気を這って鳴っているように聞こえる清水のギターが相まっての圧倒的サラウンド感。CARDのライブで一番気持ちいい瞬間はこれ。すべてのサウンドがぼんやりと曖昧に混ざり合っている感覚を、はっきりと体で感じられる一瞬がたまらない。

ラストナンバーはCARD史上最もドキドキさせる6拍子ソング、”django”。淡々とあるようでいて、思わず追ってしまうメロディの起伏や合間に鳴る攻撃的なギター、絶え間なく鳴り続けるフロアタムにぐんぐんと気持ちは急かされる。曲が終わりステージを降りてからほぼ間を置かずに、観客の呼び声に連れ戻されるメンバーたち。アンコールに呼ばれて戻ってきたというよりは、「おいおいまだ帰るなよ」と観客たちがハナから彼らを離そうとしなかった雰囲気に思わず顔がほころんでしまう。ベースとドラムの軽快なパターンにつられて体を揺らしてしまう曲”SCENE”にてステージはフィニッシュ。はぁ、重ねて自分もコーラスしたくなるほど心地よい!明日の夏がもしピーカンに晴れたら、外気とは真逆の冷えきった場所で澄ました顔をしながらこの曲を聴いていたいなぁ、なんて願望がじめっとした帰り道に脳裏をよぎった。そんな絶妙な温度感。つかみどころがない、でも一番気持ちいい。そんなCARDの魅力をずるずると引きずることになった夏の一日であった。

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