REPORT

【山田和季の見たボロフェスタ2017 / Day2】BRADIO / カネコアヤノ / WONK / YOUR SONG IS GOOD / サイプレス上野とロベルト吉野 / クリープハイプ

BRADIO

写真提供:ボロフェスタ(Yuta Furuhashi)

リハーサルから本気のグルーヴィーなサウンドとパワフルなヴォーカルを披露する彼ら。もちろんフロアもすっかりその気になってしまう!あっという間にコールアンドレスポンスとクラップでBRADIOと観客と煽り合いが始まってしまった。「この後最高のパーティーをお届けするのでよろしく!」と言い残し立ち去ると、筆者の横に座っていたお姉さんが「え……リハーサル……?!」と呟いていたのに思わず「ですよね!」という気持ちになってしまった。

 

改めて登場するとSEのリズムに合わせてハンズクラップでまたしても煽る煽る!SEが途切れ無音になった瞬間にVo.真行寺の「アオ!」というファンキーボイスとその直後間髪入れずにカットインしてくる楽器隊!フロアを痺れさせるには十分すぎるキレキレのオープニングだ。あっという間にフロアはダンスフロアへと早変わり。この後も終始煽りっぱなしの彼ら。曲ごとに煽り方やパフォーマンスにバリエーションがあるため、こちらも思わず何度も何度もノせられてしまう。「(フロア後方を指さして)座っててもソウル暴れ出してるの丸見えだぜ?座ってても全然大丈夫だからな!俺たちが全員連れて行ってやるぜー!」なんてMCで和ませる場面もありつつも、誰一人置いていこうとしないソウルトレインは走り出したら止まらない!

 

圧倒的なパフォーマンスに気を取られていたが、楽器隊はドラム・ベース・ギターのコンパクトな編成。なのになんだこのパーティー感は!ベースはド直球のグルーヴィーさを奏で、ドラムは一音一音の粒がはっきりしているので聞いていて飛んで跳ねたくなる。ギターも軽快なカッティングでタイトかつキレッキレのサウンド……この人数でこのパーティー感は圧巻。

 

新曲ではシンセ音もはいって華やかな一曲。まるで月9ドラマで流れてもおかしくないようなロマンティックで甘い歌詞とファルセットボイス。ラストソングではフロアにサタデーナイトフィーバーばりのダンスをさせてしまう場面も(まさかのツイストダンス!)。そしてみんな習得早すぎ!やっぱりFPP(Funky Party People:BRADIOファンの通称)は違うぜ……。みんなでコールして踊って笑って、一体感に気持ち良くなっちゃってアドレナリン出まくっちゃう、そんな彼らの魅力あふれるライブであった。

カネコアヤノ

相撲の土俵がコンセプトの「どすこいステージ」。今年のメインステージのコンセプト「恐竜」もないまぜにしているせいで、土俵の周りにプテラノドンが飛んでいる。そんなカオスなどすこいステージには一見似合わないカネコアヤノが登場。しかし演奏が始まるやいなや、気ままで、強くて、こどものようなけもののような。なんだかまさに恐竜みたいなアーティストだなと思った。

 

始まる20分以上前から人はみちみちぎゅうぎゅう。そんな中で淡々とリハーサルをすすめる彼女。しかし本番になるとまるでスイッチが入ったかのように、顔中の筋肉を使いながら力強くときに挑発的に歌っていく。眉をひそめて、目を見開いて、口元をひきつらせながら、華奢な腕には似合わない力でガシガシとアコースティックギターを鳴らしていく。

 

”グレープフルーツ”ではふわっと丸い声で歌ったかと思えば、ビクッとしてしまうぐらいハスキーで気迫ある歌声へと切り替わる。ぐぐっと声と言葉が眼前にまで迫ってくる感じ。<誰にも分からないことだってあるさ / カレンダーめくって好きだと伝えた>と歌うくだりでカネコがまるで感極まったかのように声を裏返らせて歌う瞬間と、曲のピークに泣きそうになってしまう観客たちの心の瞬間が重なったように感じた。繰り返される<今のわたし 甘い砂糖と苦いグレープフルーツみたい>というフレーズ。まるでお気に入りの小説の最後の1行みたいな、何度でも胸を締め付けられるフレーズだ。

 

感情の塊みたいな歌唱・演奏である反面、その言葉たちはとてもとても丁寧に大切に作られていることがひしひしと伝わってくるライブ。日々の何気ない感情の揺らぎをこれほどまでに激しく歌うことのできるアーティストがどれほどいるか。カネコアヤノの手にかかれば、ある意味こんなにもどうでもいいことが、こんなにも心に染みる歌たちになってしまう。

 

(写真:益戸優)

WONK

フロアがスーッと青暗くなり、凛と澄んだ空気の中ドラムソロが響き渡る。そこへステージ袖からキーボードが加わり、ベースが加わりMPCトラックが加わり……とワンパートずつメンバーが増えていく演出。最後にVo.のkento NAGATSUKAが登場するとフロアからはスターを待ちわびていたかの如く歓声が湧き上がる。” Gather Round” では胃にビリビリくるほど歪んだベース、空気の中を細く真っ直ぐ貫いていく針のような金属質な音がとても特徴的なドラム、そして思わず動きを目で追ってしまうMPCプレイにメロディックでジャジーなピアノ……そんな刺激的な音像の上に滅茶苦茶にハイエンドなボーカルが乗る!

 

続く”Midnight Cruise”ではギターサウンドも加わりより一層ムーディーな雰囲気に。しかし「雨のせいか元気ないですね?もう一度、調子はどうですかー!」とフロアへのコール&レスポンスを何度も求めるMCからは、クールな佇まいとは対照的にしっかりとヒップホップやソウル的な熱いイズムも感じられる。” Dance on the Water” ではギターをサックスに持ち替え、タイトでクールなステージを披露。サックスソロはもちろんの熱量でそれだけでも圧巻なのだが、そこにシンセサウンドが重なりあうことでサックスが良い意味で機械的な新鮮な音像になっていた。

 

ドライブ感あるここまでの流れから一転”I Can’t Go For That”でホールは一気にシックでスロウな空気に。キックが重めのドラムにうっとりするような甘いシンセ、ディレイのかかったサックスにじっくりと空気を揺らすようなベース……。縦横無尽にステージを動いていたNAGATSUKAもハンドマイクからスタンドマイクへと変え、フロアをまっすぐ見据えるように歌う。曲の中盤からは見所ともいえるであろうドラムとサックスだけの即興プレイが始まった。ドラムセット前までにじり寄ってくるサックス、お互いクールかつアグレッシブに演奏する様に観客たちは興奮を隠せない!あまりに終わりの見えないプレイに思わずNAGATSUKAも吹き出してしまった。この日我々が目撃したのはこの世で一番格好いいお遊びだ。

 

(写真:岡安いつ美)

YOUR SONG IS GOOD

小気味のいいギターのミュートサウンドに浮遊感のあるシンセが気持ちいい“Cruise”からステージはスタート。初っ端からご機嫌そうなSyn.サイトウ”JxJx”ジュンの様子に観客の顔も思わずほころぶ!あいにくの雨でジメジメとしていたホール内だが、気分だけは爽やかで心地よい海辺に早変わり。

 

続く”Mood Mood”ではそんなご機嫌なジュンジュンに加えてGt,シライシも小躍りしはじめる。パーカッションの目まぐるしいリズムにフロアはお祭り状態。声を出して踊らずにはいられない!ジュンジュンも至る所で何度もガッツポーズをキメる。わかるわかるよ、こっちも同じタイミングで両手を天に挙げているから!延々と終わらないパーカッションソロがヒートアップする度に繰り返される「パーカッション!マツーイ!イズミー!」の紹介コールに当の本人も「何回呼ぶんだよ!」とでも言いたげな笑い顔だ。ディレイとワウの効いたギターに、シンプルだが飽きずにずっとノっていられるベース、そしてそこに加わるパンチのある強烈なシンセ!この長い一曲一曲の間にも何度もアガるポイントがやってくる感じ。だがそれらが熱狂のうちに少しずつごちゃ混ぜになって混沌としていくのがたまらなく気持ちいい。

 

“SUPER SOUL MEETIN’”の陽気なホーンとカッティングが聞こえたら、フロアからは歓喜の声が!待っていましたと言わんばかりに観客も一緒にシンギング。途中ドラムとパーカスだけになるパートでは、打楽器のリズムだけでなんでこんなに踊れるのか、いやむしろ今が一番踊れるくない?!と思うぐらい、まさに魂の底から飛び跳ねるようなハッピーな気分にさせられた。そのままジュンジュンがマイクを引きずってフロアの中心までイン!「ジャンプ!ジャンプ!」と煽るとあっという間にハイパーハッピータイムへと突入。今日一番の笑顔にあふれる瞬間だった。

 

(写真:岡安いつ美)

サイプレス上野とロベルト吉野

めちゃ意味わからん服で出てきたのはサイプレス上野(以下サ上)!そしてボロフェスタ出演随一の男くさい見た目だロベルト吉野(以下ロ吉)!「ボロフェスタ、俺たちが一番最強に汗臭いライブをしてやろうと思います!」と挨拶も早々に”Walk This Way(アセ・ツラ・キツイスメル)”のビートがスタート。「いやいやお前ら、ここ空いてっから!なんなの?このスペース、サークルモッシュでもしてたの?どう考えてもクリープハイプ待ってんでしょ?!俺らの世界観とかマジでどうでもいいんでしょ?!」と笑いながら観客ひとりひとりに前に来るように促すサ上のその顔、マジでガチすぎるから!

 

「んじゃぶっかますんで!」との宣言とともに始まったのは”ぶっかます”。もちろん自発的にブチアゲられたく前にやってきた観客たちは吉野のスクラッチに歓声を飛ばす。サ上の「こすれーー!」の合図ではちゃめちゃにスクラッチをするロ吉にもちろんアガるし騒ぐぜー!……って「ちょっと!こっち見て!誰もいないステージ見てないでこっち見ろ!」(笑)。全員をしっかりと振り向かせたところで、しっかりとヒップホップを教えてやるぜと言わんばかりのコールアンドレスポンス。続く”よっしゃっしゃす〆”のビートを流すと早々にステージ前方へやってくるロ吉。その口に含んだミネラルウォーターを……毒霧?!女性たちのガチ悲鳴が各地で巻き起こるがなんのその。そのままの勢いで突っ込んでいく!

 

「結局ヒップホップってのはみんなと一体化したいだけ」というサ上、本当にそのとおりのパフォーマンス。そもそも歌ってる内容なんてどうでもいいのかもしれない。ビートにノれればコールアンドレスポンスにも応えたくなるし、コールアンドレスポンスに応えてしまえば一瞬でヒップホップはすべてを巻き込んでしまう。去り際には15年前に西部講堂でボロフェスタが行われていた時代に、自分たちのラップなんてゆらゆら帝国の演奏を待っていた客しか見てくれなかった苦い思い出を即興でラップ。こうやってこんな遅い時間に据えてもらって、たくさんの人に見てもらえることが嬉しい反面その反骨精神を血で刻むような格好良さだった。

 

(写真:岡安いつ美)

クリープハイプ

写真提供:ボロフェスタ(saito nanaco)

ボロフェスタ、2日目のトリを務めるは彼ら。演奏前にどうしても伝えたいことがあると言わんばかりのMC土龍が登場。「自分のライブハウスに出てくれていたバンドが、大きくなってこのフェスに帰ってきてくれる。それが小さな街のライブハウスの店長としてはたまらなく嬉しいんです。今年も愛を持ってお呼びしました!」そんな言葉を受けて演奏されるは”バブル、弾ける”。オープニングにしてはなんだかしんみりしてしまうのは土龍のMCのせいだろうか。音源よりもほんの少しだけ攻撃的なGt./Vo.尾崎世界観のギターの音、眩く目を細めるほどの逆光で終始メンバーの顔が見えないようなライティング、ラ行を巻くように歌う尾崎の口角が歪む。「学生時代はずっと学祭でバンドやっているような奴らが羨ましくて、死ねばいいのになんて思ってた。俺たちはライブハウスでやることに誇りを持って、でっかいステージに立ってやるんだって思ってた。でもボロフェスタはそのときの学園祭に出れてるような、そんな気持ちにさせてくれます。」と尾崎からも愛のあるレスポンス。

 

nanoというライブハウスは故郷みたいな場所だから、と言って演奏したのは”愛の標識”。メンバーの様子は小さく狭いnanoで演奏するのとなんら変わらないようでいて、当たり前だがnanoでの演奏とは比べものにならないぐらい音には格段に広がりがあるし、客の熱量も何倍にもなっていることは実感せざるを得ない。だからこそ、心に響くライブがここボロフェスタには存在している。「僕からも感謝を込めて」と演奏したBa.長谷川カオナシがVo.を務める”かえるの歌”ではフロアからは喜びの声が。あれだけクリープハイプを象徴していると思われていた尾崎の歌声だが、不思議と長谷川が歌う曲でも全くと言っていいほど楽曲の「クリープハイプらしさ」は失われないんだよな。

 

バンド初期の名アンセム”イノチミジカシコイセヨオトメ”では叫びながら掻き鳴らしながら、でもフロアを最後に一瞬みつめてにんまりとした尾崎。その瞬間、今日最後のバンドの最後の曲にしてKBSホールのシンボルであるステンドグラスが開帳。フロアからは思わずため息混じりの歓声が漏れた。

 

アンコールでは銀杏BOYZにもカバーされた”二十九、三十”をそっと演奏。昨年のボロフェスタ、尾崎は個人的に客としてやってきてトリの銀杏BOYZを見て帰ったと語る。感謝の気持ちを表すのにはいろんな手段があると思うが、もらった愛に応えるにはそれは愛しかないのだ。私たちが生きる日常の中でも。そんなことを感じるライブであった。

WRITER

RECENT POST

REVIEW
フラッシュフィクション – Ribet towns
REVIEW
HUBBLE – noid
INTERVIEW
ー僕らにとってのシューゲイズー ART-SCHOOL木下理樹×blgtz田村昭太のルーツに触れる対談
REPORT
【山田和季の見たボロフェスタ2017 / Day3】バレーボウイズ / unizzz… …
REVIEW
ある日気がつく、同じ顔の奴ら – キツネの嫁入り
REPORT
三者三様のウェットなアツさに満ちた夜。CARD企画 “PICK ME UP vol.7&…
INTERVIEW
私たちがアンテナをやる理由。【ライター小倉・齋藤編】
REPORT
【座談会】働きながら音楽活動をする<京都編>  開催レポート・後編
REPORT
【座談会】働きながら音楽活動をする<京都編>  開催レポート・前編
REPORT
『果て』という極限を見据え続ける4バンドが集結。bed現体制でのラスト京都企画”turn…
INTERVIEW
music studio SIMPO
REPORT
THROAT RECORDS大忘年会―LOSTAGEが1年かけて作り上げたものを最後の最後まで見せつ…
INTERVIEW
Live House nano
REPORT
bedが歌う「僕ら」の話は、今ここにいる内向的な僕らの話
INTERVIEW
『4WD』発売企画 フラットライナーズ石川 / bed山口対談【後編】
INTERVIEW
『4WD』発売企画 フラットライナーズ石川 / bed山口対談【前編】
REPORT
【山田和季の見たボロフェスタ2016 / Day2】FUCKER / Doit Science / …
REVIEW
Kind of Blue – イツキライカ
REPORT
【山田和季の見たボロフェスタ2016 / Day1】渡辺シュンスケ / jizue / ゆーきゃん …
INTERVIEW
bed 4thアルバム『via nowhere』特別1万字インタビュー!彼らが考える「bedらしさ」…
INTERVIEW
bed 4thアルバム『via nowhere』特別1万字インタビュー!彼らの考える「bedらしさ」…
REVIEW
PAGETHERM – SPANK PAGE
INTERVIEW
宅録・サイドプロジェクト限定?そ―名古屋発コンピ『ナゴミハイツ』
REPORT
ナノボロフェスタ2014 2014.08.31 ライブレポート
REPORT
mothercoat @ 京都GROWLY
REPORT
カングルワングル @ 京都GROWLY
REPORT
ウサギバニーボーイ@ 京都GROWLY
REPORT
メシアと人人 @ 京都GROWLY ライブレポート
REPORT
ナノボロフェスタ2014 -day.1- 2014.08.30

LATEST POSTS

REVIEW
「キテレツで王様になる」SuperBack『Pwave』のキュートなダンディズムに震撼せよ

2017年に結成、京都に現れた異形の二人組ニューウェーブ・ダンスバンドSuperBack。1st ア…

REPORT
台湾インディーバンド3組に聞く、オリジナリティの育み方『浮現祭 Emerge Fest 2024』レポート(後編)

2019年から台湾・台中市で開催され、今年5回目を迎えた『浮現祭 Emerge Fest』。本稿では…

REPORT
観音廟の真向かいで最先端のジャズを。音楽と台中の生活が肩を寄せ合う『浮現祭 Emerge Fest 2024』レポート(前編)

2019年から台湾・台中市で開催され、今年5回目を迎えた『浮現祭 Emerge Fest』。イベント…

INTERVIEW
2024年台湾音楽シーンを揺らす、ローカルフェスとその原動力―『浮現祭 Emerge Fest』主催者・老諾さんインタビュー

2024年2月24,25日の土日に、台中〈清水鰲峰山運動公園〉で音楽フェス『浮現祭 Emerge F…

COLUMN
【2024年3月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…