INTERVIEW

bed 4thアルバム『via nowhere』特別1万字インタビュー!彼らが考える「bedらしさ」とは?<後編>

MUSIC 2016.03.09 Written By 山田 和季

 

3rd『Indirect Memories』で得たものを経て辿り着いた、今作『via nowhere』。インタビュー前編ではbedがさらに一歩先へと踏む出すために繰り返してきた試行錯誤を語っていただきました。後編ではサポート活動時の様子、bed結成以前の秘話など「今」のbedがどのように形作られてきたのかに迫ります!

 

前編はこちら

 

bed

 

元々別々のバンドで活動していたGt / Vo.山口、Gt / Vo.ジューシー、Dr.長生、Ba.村山の4人で結成。結成当初から刺激的で力強いライブが評判を呼び、コンスタントで着実なライブ活動を通して国内外問わず様々なバンドと共演。地元である京都へ多くのバンドを招聘するなど、精力的な活動を止まることなく続けている。

 

特にバンドマンを中心に熱い支持を得ており、轟音と繊細さが共存するそのサウンドは年齢性別を問わず高く評価されている。群雄割拠のインディーバンドシーンにおいても、その存在感は確固たるものを築き、日々更新し続けている。

 

2016年03月09日、4thフルアルバム『via nowhere』をリリース。

ライブで確認し続けないと前に進めないということをもう知っている

──

サポートメンバーを迎えて活動している間、なにか変化などはありましたか。

山口

8年前ぐらいにも一回村山が4カ月ぐらいバンドを休んだことがあって、そのときにも「どうしよっかなぁ」って思ったんですけど、たまたまそのタイミングで知り合いからすごく良いイベントに誘われたんです。単純に出たいと思ったから一度限りのつもりで知り合いにサポートベースを頼んだんですけど、その中で新たな発見もあったし単純に新鮮で楽しかった。それ以降実は4年周期ぐらいでサポート入れて活動していた時期があるんですけど……オリンピックみたいやなとか言いながら (笑) 

今回も村山が1年ぐらい抜けるのは前もって分かっていて、周りも「今年は村山多分活動できひんな」みたいなのをうすうす感じてはいたんです。だからサポート頼めそうな人たちには「そろそろやで」っていうのを匂わせていたんですけど、そしたら東京の魚頭さん(OSRUM、Z)から「東京でやる人いないんだったら俺やるよ」って言ってもらって。一瞬、東京の人にサポートしてもらうなんて練習もできひんしどうなんやろ?とかも考えたんですけど、とりあえずスタジオ入ってみたら案の定よくて……そもそもすごく尊敬しているギタリストなので、そんな人と一緒にやれる機会も貴重だったし新しい発見がとても多かった。魚頭さんとやることで村山の良さも改めて発見することができたし、自分たちの曲の強度とかにも気付かされたところがあります。

──

ただサポートしてもらうというだけでなくて、バンドにいい変化がもたらされたんですね。

山口

10年ぐらい同じバンドをやっていると阿吽の呼吸、悪くいうとなあなあな空気感で進むんですよね。ただそれで閉塞感を感じていた時期だったので、これはもうブラッシュアップするチャンスだなと思いこれを機に曲の作り方も変えました。今までは4人同時に持っているものを出し合うセッション的な作り方だったんですけど、村山がいないことで、ギターボーカル2人が各々ちゃんと曲を練ってもってきてそれを3人で作り上げる形になりました。まあ村山がちゃんと1年で帰ってくるって明言していたのでできたことかなとは思いますね。これがいつ帰ってくるのかわからない、みたいなことだったら他のベース探すかもう解散するか、とか話は変わってきてたと思います。見えていたからこそ、その間で何ができるかとか、新しい風をどう吹き込むかを考えることができました。

──

バンドを続けていくにあたって1年ぐらいであれば活動休止という手段もあったと思います。そこで休止しなかった理由って何かありますか。

山口

もちろんその間バンドそのものを休むっていう選択肢もあったのかも知れないですけど、多分ライブをやらなかったらその間自分たちを確かめるものがなくなってしまって、自信とかもなくなっちゃう気がするんですよね。煮詰まってしまうというか。ライブだけは今までやり続けてきたから、曲をつくってライブで試してっていう形でちゃんと確かめていかないと自分たちは前に進めないっていうことをもう知っているんですよね。

──

以前、山口さんの口から「死ぬまで音楽をやっていたい」という言葉を聞いたことがあってそのことがすごく心に残っています。今回、村山さんの復帰次第では「解散」っていう可能性もあったことを先ほど話されていましたが、今と昔でバンドに対する心境の変化などはあったんでしょうか。

山口

同世代とか周りのバンドが解散したり、音楽やめたり、メンバーがガラっと変わってしまったりっていう変化を感じる中で「自分はただ音楽を続けたいのか?それともこのバンドを続けたいのか?」って迷ったりもしました。以前は「俺が続けていくにはbedしかない」と考えていた部分もあって、それは勿論今もあるんですけどより一層「音楽」を続けていきたいって気持ちも強まっているかもしれない。でもできるならこのバンドをずっと続けていきたいと思ったからこそ、今回もサポートメンバーを探してまで足を止めないようにしてきました。

知り合いからは「いろんな人にサポート頼むぐらいなら解散したほうが潔くないですか」って言われたこともあって……その言い分に納得できる部分もあったんですけど、単純にそれを聞いて「あっ、解散したくないな」って思いました。ゼロからバンドをやるってイメージは自分の中ではあまり沸かないですね。そういう「音楽がやりたいのか、このバンドがやりたいのか」みたいな選択肢の答えが自分の中で見え始めている気がします。

──

4枚目のリリースにあたって、今のお気持ちはどっちですか?

山口

完全にbedでやっていきたいと思っています。並行して別のバンドをやりたいとかも全然僕は思わない。僕以外のメンバーは別のバンドもやっているし全員がそういうわけではないだろうけど。例えば、家でひとりで作った曲をスタジオに持って行ってメンバーと一緒にやったら全然違う方向に進んで行く、みたいなのがバンドの面白さだと思うんですけど、そこで一番自分が上手く舵をとっていけるのはbedっていう場だと思っているし。あとはけっこう特殊な環境でやりくりしてバンド活動を続けているので今さら他のガチガチのバンドに入ったとしてもやっていける気がしない…… (笑) 。結局、一番自分の言いたいことが言えて好きなものの感覚が似ている、っていう存在が今のメンバーかな。

ブレない活動をし続けている自信はあります

──

――bedを結成したとき、同世代のバンドってどんなバンドがいらっしゃったんですか。

山口

dOPPOとか、ちょっと上の世代だとup and comingとか。あとはFLUID、torico。そう考えると今いないバンドも多いし、FLUIDもメンバーがそのときとは変わっていますからね。

──

活動当初、よく出ていたライブハウスはありますか。

山口

僕ら活動初期からライブハウスのブッキングとか全然出たことなくて。当時やってたバンド同士で固まって、人脈で企画とかツアーを組むパターンが多かったですね。まあその中だと初期はとくにwhoopee’sにお世話になりました。あとはメトロも初期はよく出ていたかな。最近はもう全部自分たちで企画とかも決めているので、突出してお世話になっているっていうハコはあまりないかも。でも活動初期に一緒にやっていた友達がそれぞれのハコで今働いていたり……それこそ安齋くん (二条GROWLY / CUSTOM NOISE) とかジャックさん (メトロ / FLUID) とか山田さん (GATTACA店長) とか。今は一周回ってそれぞれ仲良くさせてもらっていますね。

──

今はやっぱり結成当初の活動の場としてはブッキングが主流なのかなと感じるんですけど、当時はそういった仲間内の人脈で場所を築いていくっていうやり方は多かったんですか。

山口

それこそ昔の話で、bedの前に組んでたバンドはCDをライブハウスに持って行って「お願いします!」ってやってたんですけど、やっぱノルマとかでお金がかかっちゃって。そういうときにwhoopee’sが結構いいイベントとかツアーバンドとかのブッキングをよく当ててくれていたんです。決定的な出来事はアメリカのKARATEってバンドが来日したときのツアーに出ない?って呼んでもらえたこと。めちゃくちゃ好きだったんで4000円ぐらいのチケット20枚ノルマを死ぬ気で友達呼びまくりました。

dotlinecircleというレーベルを運営していて、海外バンドの招集も積極的にやっていたカトマンさんという方にそのときのライブで気に入っていただいて、次の日から「京都にいいバンドいる!」ってブログでめっちゃプッシュしてもらえたんです。そのときカトマンさんの発信力ってすごかったからいろんなところからCDの取り扱いのメールが舞い込んできたり、僕のブログのアクセス数がバーンって跳ねあがったりしました。その経験があってからbedを結成しているので活動当初からブッキングよりはイベント中心で活動していますね。上の先輩からもどうせお金を落とすんだったら自分たちで企画して好きなバンド呼んでそこで人脈つくったほうがいいって言われていたので。

──

そういう背景があったんですね。どちらかというとバンドのブランディングを狙って自主イベントを中心に活動されているのかと思っていました。

山口

それはあまり意識していないですね。でも結果として自分たちの好きなバンドたちとやりたいようにやることがバンドとして「かっこよく」みえるっていうのはあるかもしれない。ブレない活動をしているっていう自意識は持っています。やりたいライブしかやらないし、それだったら自分たちでやった方が確かだなって思っていますね。

今までbedを聞いてこなかった人にも届いて欲しい

──

3枚目の『Indirect Memories』はbed的には力作だと先ほどおっしゃっていましたが、リリースされたときに安心感とかはありましたか。

山口

自分たち的には進歩した気持ちや集大成感はあったんですけど、リスナーからは「今までどおりのbedやな」、「相変わらずやな」って意見も見られたので……受け手のみんなが自分たちの思っているように捉えてくれる訳でもないんで、もっともっと行くところまで行かないとなと思いました。まだまだ全然届いてないって気持ちはずっと持っていますね。それは4枚目以降も変わらないです。

──

では今作『via nowhere』はどういった人に聞いてほしい、届いてほしいですか。

山口

もちろん今まで聞いてきてくれた人にも聞いてほしいし、そろそろ「そういえば聞いたことないな」みたいな人にも聞いてほしい気持ちはあります。そのためにいろんなバンドとツアーやったりしているし、CDも4枚出してるし、どれか1枚だけでも…… (笑) 。

──

やっぱり「音楽好き」な人たちに特に聞いてほしいという意識は強いんですか?それとももっと軽く幅広いリスナーに向けて発信しているんでしょうか。

山口

うーん、やっぱ普段レコード屋に行く機会が少ない人たちとかに響かせることがいかに難しいことかっていうのは痛感していますね。諦めたら駄目だとは分かっているんですけど、やっぱり難しい。だからまずは音楽とかバンド好きな人から広がっていけばいいなと思っています。 Applemusicとかで音楽の聞き方とかも今は変わってきているし、これからどんどんすそ野や門戸は広げていくつもりです。

──

幅広い音楽という点でお伺いしたいのですが、最近のJ-POPとかアイドルについてどう思いますか?山口さんはアイドルに詳しいと噂を小耳にはさんでいるのですが、今のアイドルひいては音楽界について何か思うことはありますか。

山口

最近はすごく音楽業界の人がアイドルに関わりだしているというか、それこそ運営とか楽曲とかもろもろ。もちろん常にチェックはしているんですけど、僕は逆にそういうところにはあんまり興味がわかないですね。僕はハロプロが一番好きなんですけど、なんで好きかというとそういうものとほとんど関わりがないからなんです。箱庭感というか……ちょっとイケてるバンドマンとかに楽曲提供をさせる余地すら与えていないんですよね。

もちろんアイドルとバンドが関わっていくことでwin-winな部分もあると思うんですけど、そういうラジカルさにはあまり惹かれないですね。もちろん良質な音楽を作っている人たちには注目していますが。まあハロプロとperfumeは単純に好きなのでずっと追っています。安心して追いかけられるというかブレないので……ほんとに第三者が入る余地がない。

──

では、最後の質問です。みなさんが若返って、今この2016年にbedを結成するとしたらどんな音楽をやりたいと思いますか。

山口

結成当初に戻るとしたら二十歳ぐらいか……。逆に出来ることは限られそうですね。例えばもうちょっと音楽性の幅とかを持たせてみたいかも。それこそ結成当初はもっとダブっぽいこととかも取り入れようとしていたんですけど、今やり直すならリズムアプローチとかもっと16ビート的な感じを取り入れてみたいなと思います。今この歳だともうできないですね、多分ベースが無理かな (笑) 。いいのか悪いのかは分からないけど、初期にそういう方向に行っていたらもっと違うバンドになっていたかと思います。もし、トライできるならやってみたい。やった結果10年続けたら今みたいなバンドに結局なるかもしれんけど (笑) 。まぁなんにせよ自分たちのそれぞれの色が出てきた結果が今の僕たちですね。

──

ありがとうございました!

3月19日の京都アーバンギルドを皮切りに7月末にかけて全国7か所を周るツアーも行うbed。また今回も『via nowhere』収録曲のMVを撮影済みとのことで、こちらは先日アップされました!

「変化」「進化」を経ながらも同時に「裏切ることのない」「不動の」存在で在り続けてくれるbed。彼らがいるから京都のバンドマンはこの地で音楽への気持ちを燃やし続けていられるのです。

via nowhere

 

bed-nowhere
 

発売日:2016年03月09日 (水)
価格:2,000円(税別)
発売元:3P3B Ltd.
販売元:JAPAN MUSIC SYSTEM

 

収録曲

1. 100万周年

2. ヒマな2人

3. プレイバック

4. YOU

5. 誰も知らない

6. stairway

7. シチュエーション / ジェネレーション

8. クライング

9. つまらない土曜

10. Note

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