REPORT

『果て』という極限を見据え続ける4バンドが集結。bed現体制でのラスト京都企画”turn it off~『詰めろ』の果て~”ライブレポート

MUSIC 2017.06.23 Written By 山田 和季

もともとDr.長生の脱退が決まる前から組まれていたという今回の企画。蓋を開けてみればなんとも偶然とは思えない、今日までのbedを語るには不可欠なメンツでは。過去インタビュー(https://antenna-mag.com/column/4wd_ishikawa_yamaguchi_2/)でもGt./Vo.山口が各地方で精力的に活動するバンドの代表として名を挙げていたNOT WONK。もはや多くを語らずともbedとは「盟友」と呼んで差し支えないだろうodd eyes。そして多くのバンドマンたちに背中を見せ続けてきたbed、その彼らが見てきた背中Discharming man。これまで主催してきた全ての企画のひとつひとつにも、血の通ったやり方で続けてきたbedだからこその内容だ。

NOT WONK

 

“Guess What I’m Thinking”の長くて穏やかなイントロが流れだす。Gt./Vo.の加藤が歪みのペダルを踏み込むと同時に、マイクにかぶりつくように前のめりになる。甘い響きだったイントロに激しさと加速度が重なって、思わずこちらの気持ちも昂ってしまう!ドライブ感や焦燥感と、それでいて眩しいような感覚を併せ持ったギラギラとキラキラの間みたいなギターがたまらない。ただただ真っ直ぐであるが故の攻撃性と純度をまざまざと見せつけられて、大人たちは居ても立ってもいられないだろうなぁ。案の定、開始早々に両拳を握る人たちの多かったこと。

 

 

ライブ感を引き立てるベースの8ビートやフロアタムの疾走感をそのままに突っ走るのかと思いきや、キュンとするようなメロディやコーラスワークなんかも垣間見える。「もらった分だけ返してやるよ、って歌です」と言い放ち演奏した”I Give You As You Gave Me”では、サビの呟くようなメロディに胸が締め付けられる。ワンストロークごとに、ワンコーラスごとにぶち鳴らすように演奏する姿は、ここにいる多くの人がかつて少年だったときに憧れた青臭いバンド像と重なるのではないだろうか。みずみずしさと汗臭さと爽やかさと、多くの大人の心さえも揺さぶる熱狂のようなものが彼らの中には散りばめられている。

odd eyes

もはや外れるタガはこれ以上ないだろうというほどにド頭からブッ飛ばしていくパンクネス、odd eyes。Vo.シュウトのすべてを投げ散らかしていくようなその様は、見ていて胸がざわざわするぐらいの不安定さだ。そんな得も言われぬシュウトの強烈さにも、負けず劣らずバリ固のサウンドでつんざくように攻めてくる楽器隊!

 

 

例えるならば「笑いながらブン殴ってくるヤバいやつ」みたいな不穏なベースの横で、とにかくギターを弾き狂うGt.岡村の姿は異質系ギターヒーロー……!一息ついたところで「どんな小さいことでも面白いものとか格好いいものを見ると『やってみたいなぁ』って思わせられる。同じような音楽ではないけれど、僕にとってそれがbedだった。そんなbedの節目に呼んでもらえて嬉しい。」と語るシュウト。odd eyesは京都の若いバンドの中でも、ひときわbedの背中を見てかつ肩を並べようとしていたバンドに違いない。さっきまでと打って変わって、ギターリフとベースフレーズをばっちり合わせたグルーヴ感のある曲では、相変わらず飄々としているシュウトのボーカルが音の隙間に調子よく乗っていく。フロアの客があげる拳も痙攣の如く震えていて、それに向かって這いつくばるように歌うその姿が最高に格好いい。まるで客との殴り合いみたいなライブなのだが「心を込めて演奏します」とMCで言っていた通り、血の通った殴り合いなんだな。論理・思考・精神・喜怒哀楽、そういったものを詰め込んだものを激情と呼ぶのなら、紛れもなくodd eyesのことだ。

bed

飛行機の欠航により、タイムテーブルに間に合わなかったDischarming manの代わりに急遽時間を繰り上げての演奏。客にとっても出演者にとっても「その時最高の演奏をできる(聞ける)」ことを最重要視する彼らのスタンスが感じられる。そんなbedが登場するとフロアの後方が驚くほどガラガラに……。もちろんこのタイミングで人が減るわけもなく、客の全員がみちみちになるぐらい前方へ押し寄せているのである。

 

 

聞いていて落ち着く、聞く側の一番良いところにストンと落ちてきてくれるような自然な重さのある長生のドラム。そんなドラムも含めて柔らかで優しく、そして大らかな”YOU”から始まる。続く”ヒマな二人”ではGt./Vo.山本と山口の二人がハモるフレーズで、同じ歌詞をBa.村山が口ずさんでいるのが印象的であった。その後の曲でも各々が演奏をしながら歌を口ずさむ、というシーンがいつもの彼らのライブより多く目立っていて、グッとこざるを得ない。

 

<馴れ合いじゃないってこととかさ/周り道を重ねてきたこととか/僕にはわからない/多分君も>咀嚼した言葉をくしゃっと吐き出すように歌う山本。あまり「君」や「僕」の話を歌うことが少ないbedだからこそかなりのパワーワードに感じられて、自分が今まで重ねてきたもの、ひいてはbedがこれまで積み上げてきたものをすこしだけ想像させてしまう一曲であった。ライブも終盤の“note”では相変わらずの泣きのギターの応酬がたまらなく胸を熱くさせる。

 

 

「結果的にDr.のはるちゃん(Dr.長生の愛称)が京都では最後ということになってしまったので、そんなエモーションもギターを弾いていてありつつ。ドラムもいつもよりちょっと前のめり。でもそんなの関係なく今日は最高の一日になったと思います。」とMCで語る山口。”100万周年”のアウトロに差し掛かる寸前、少しつんのめった声で歌う山本と、いつもよりほんのわずかにエモーショナルに演奏する三人の出で立ち!bedの場合、音楽・歌詞もさながら、彼らの演奏する姿そのものに奮い立たされる人も多いのではなかろうか。アンコールの曲、”僕ら”のキラーフレーズ<僕らは僕らでやってる/それなりに楽しくやってる>がまさに目の前で証言されていた日が今日。格好いい以外の何者でもなかった。

Discharming man

 

「トリだけは……って頑なに拒んだんですけど、無理でした」と笑いながら登場したのち、Vo.蛯名は丁寧にマイクに手を添えた。直立しながらひとつひとつ捻り出すように歌っていた蛯名がその大きな身体をぐらんぐらんと揺らし始めると同時に、ギターのハウリング・ハーモニクスがわめきだして曲はドラマティックに激しくなっていく。つんざくように美しく、キラキラなのにギラッギラに暴力的な音の二面性は同胞NOT WONKと通ずるものがある。酩酊さながらに感情を爆発させる蛯名。彼の圧に気を取られていると、ボーカルの感情の過激さに乗じて、とんでもないフックをあわせてくるベースとドラムにも足元をすくわれる。

 

 

「はるちゃんに捧げる歌、その1」と称して演奏された”カッコウが鳴いている”では<君は僕と同じ>と何度も何度も繰り返し歌う。プラスでもマイナスでも、以上でも以下でもないようなメッセージはbed山口がMCで言っていた「みんなにもそれぞれの人生がある」という言葉をふっと思い出させる。「じゃあはるちゃんに捧げる歌、その2」と”因果結合666”をそっと歌いだすとフロアからは歓声が沸く。息が詰まるほどどんどん荘厳になっていく。叫びのような呼びかけのような、届くところまで届かせようと捻り出すボーカル。やっぱり青色がとっても似合うバンドだなぁ。ちゃんと言葉で交わすことももちろん尊いのだけど、こうやって音楽を介してぼんやりとした何かをやりとりできるなんて……今日は全員にとって最高のイベントになったに違いないという確信に変わった瞬間であった。

―『詰めろ』の果て―とサブタイトルが振られた今回のbed企画、Turn It Off。もちろん、7月で脱退が決まっているDr.長生の趣味(の範疇を超えた)である将棋から来ているのであろうが、その『詰めろ』の果てとは……一体どこへたどり着くのだろうか。

「詰める」とは

・「しき詰める」スペースがものでいっぱいになる。

・「距離を詰める」空いている隙間・空間を縮める。

・「行き詰まる」その先がなくなる。

・「煮詰まる」十分に物事の検討、進行が行き切った状態。

 

強いていうならば総じて<極限、行き切るところまで行く>という意味なのかもしれない。行き切るところまで行った、それでもさらにその果てを考える。bedというバンドを言語化するならば、そういうことなのかもしれない。

 

 

 

テキスト:山田和季

写真:岡安いつ美

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