INTERVIEW

ー僕らにとってのシューゲイズー ART-SCHOOL木下理樹×blgtz田村昭太のルーツに触れる対談

MUSIC 2017.10.30 Written By 山田 和季

言葉がたくさんあると濁ってしまうから、削って削って少ない言葉数で

――:田村さんは2003年に1st mini albumの『チルコ』をリリースされたとき、トランク1つで東名阪のレコードショップを70店舗ほど自分の足で回ったそうですね。

 

田村:そうですね。77店舗ぐらい回ったんじゃないかな。トランクにポスターいれて、スカートを履いて電車に乗ってひとりで……。

 

――:他に若い頃に音楽をやっていくにあたって「これをがむしゃらにやった!」ってエピソードはありますか?

 

田村:やっぱり「人と違うことをやらないと」って思っていた節はあったかな。どうやったら周りにインパクトを与えられるのかっていうことをずっと考えていた。そのときは変なことをやっているのが格好いいって考えが染みついてしまっていて、今思うとそうじゃないな、そういうのはあんまり好きじゃないなって思います。それ自体が「ニセモノ」っぽく見えてしまうので。あとはとにかくいろんなところにデモを送ったりとかはしていましたね。

木下:僕もデモを作って東京でいうところのHIGH LINE RECORDSとか、大阪だとFLAKE RECORDSみたいなところが近いのかな、そういうレコード屋さんに「置かせてください」って頼みにいったりはしましたよ。……そのとき1枚だけ売れたのかな、めちゃめちゃ嬉しかった。

 

――:あと、個人的に聞きたいことがひとつありまして……。今回お二人がこうやって揃われることもなかなかないかと思うので。

 

田村:そうですね。

 

――:blgtzの曲に”スカートの青”(『music from the motion picture soundtrack』収録)という曲があるのですが、ART-SCHOOLが今年配信限定でリリースしたシングルの曲名も”スカートの色は青”ですよね。

 

田村:えっ、そうなんですか。似ていますねそれは。

 

木下:すごく似ていますね。

 

――:これって偶然ですか?

 

田村:シンクロニシティですね……。

 

木下:これはたまたまとしか思えない……。

 

――:曲はblgtzがインストで、ART-SCHOOLはバンドサウンドと違ったものではあるかと思うのですが、お二人がそれぞれそのタイトルに抱いているイメージってどういったものですか?

 

田村:お互い引っかかるものがあったんだろうね……(笑)。アカシックレコードじゃないけど、なんかこう降りてきたんでしょう。「透明感のある女性の青いスカートが……」みたいなイメージで作ったっぽいですけど、別にそういう訳でもないんですよね。

――:他の曲のタイトルをつけるときも、なんとなく思いついたものをつけることが多いんですか?

 

田村:僕の場合は歌詞を書くのが大変なんですよね。あんまりたくさん書けないので、自分の中で削って削って少ない言葉数で選んでいくのにとても時間がかかるんです。でも言葉がたくさんあるとどうしても濁ってしまう気がして。タイトルをつけるときも同じかも。

 

木下:僕は映画・本・写真とかからインスピレーションを受けることが多いです。あとは建築とかかな。機械的なインダストリアルなものが好きなので。そういうのを見てたら「うおぉぉぉ……!」ってなります。

 

――:“スカートの色は青”も「うおー!」ってなってつけたんですか?

 

木下:いや、”スカートの色は青”は違うんですけど。なんか……スカートの色は青の人ってかわいいなーってだけ、かな?(笑)

 

――:至極一般論ですね……!

 

田村:あれ……なんか僕もそんな気がしてきました。そんな感じでつけた気がする(笑)。

 

木下:なんかね、揺れてるスカートの人をどこかで見た気がしてるんだよ。ぼんやり頭の中に残っていて、それが青色だったってだけ。…あれ、俺、夢遊病なのかな?(笑)

とんがった台湾音楽シーンと、アンテナが敏感な京都音楽シーン

――:来月11月にはDAYDREAMが台湾にて開催決定しているということなんですけど、お二人は音楽をする上で海外のことって意識されたりしますか?

 

木下:台湾とか香港とかどんどん日本の音楽シーンとのマッチが増えていますよね。あと僕、京都のSOLE CAFEでソロライブを何回かしているんですけど、そのときにお客さんに「最近何聞いているんですか?」って聞いたらものすごいコアな海外のバンドの名前が出てきたんですよ。「え、誰?」って思って(笑)。

 

――:木下さんですら知らないようなですか!

 

木下:帰って調べましたもん。だから京都のリスナーってコアなイメージはありますね。センスが良いというか……。

 

――:キャッチアップの幅が広いんでしょうかね。

 

木下:そうそう、あっ……『アンテナ』!アンテナが敏感!

 

田村:それそれ(笑)。

 

――:ありがとうございます(笑)。

 

木下:でもアジア圏の音楽シーンっていうのはこれから絶対に来ると思いますよ。日本にとってもいいマーケットと言ったらあれですけど、台湾のバンドってとんがっていて格好いいバンドも多いのですごく合うと思う。

 

――:田村さんはこれまで海外のことを意識されたり、交流とかってなかったですか?

 

田村:ちょうど2~3日前にシングル(※配信限定リリース”ech0”)をリリースしたんですよ。それはマスタリングをジェイムス・ブレイクやブライアン・イーノも手掛けているマット・コルトンに依頼しているんですが、それでもやっぱり録音・ミックスまでは自分でやらないとなぁって思っています。そこまでは自分の手でやって、残りのお化粧をしてもらう作業は今回海外の方にお任せしています。あと、アジア圏の音楽の話なんですけど、アジア圏の方が日本語より音楽の言葉の乗りがいいなぁって個人的には感じています。あんまり聞いたことのない発音とかメロディとか……。僕自身も「洋楽的」って言われることが割とあるんですけど、曲を作る時にちゃんと言葉が「音にノる」ようにするのが難しくって、最初は意味のないでたらめな歌詞をつけた方がノリは出たりしますね。

――:割と歌詞に関してはノリ重視なんですね。blgtzの曲は心にチクチク刺さるようなメッセージが多いので少し意外でした。4年半ぶりの京都ライブ、今日は楽しみにしています。

 

田村:今日出演しているバンドの方たちの中にもずっと待っていてくれた人も多いようで嬉しいです。休止している期間が長くて、実質の活動期間で言うと5年ぐらいしかないので先輩ヅラはできないんですけど。

 

――:でも空白の4年半の間もblgtzを聞いていた人・blgtzに出会った人はいるわけですからね。その間もblgtzは確かに存在していましたよ。

 

田村:こういうインディペンデントイベントにひとつの目玉として呼んでもらえて嬉しいです。このイベントに関わらずそういった誘いはできるだけ断りたくないなと思います。

 

――お二人ともありがとうございました!

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