ニューミューテーション #2『世界のうつし』展
京都芸術センターが昨年度より取り組む、関西圏を拠点に活動する若手作家を取り上げるシリーズ、ニューミューテーション。第2回となる今回は、音楽家、美術家の小松千倫とグループ展の他キュレーション等も手がける寺岡海の2名による展覧会を2019年4月16日(火)〜2019年5月8日(水)の間で開催する。また、会期中の4月20日(土)にはアーティスト・トークも準備している。2名の作品を通して、普段私たちの目にうつる世界を、ふたつの異なる角度から見てみよう。
私たちは、外的世界をありのままに感じ取ることができません。あまりにも膨大であるためにその一部分しか捉えることができなかったり、反対に微細にすぎるために多くを取りこぼしてしまったりします。一方で私たちが体験する内的世界はいつも秘められた一回的なものであり、生じては失われていくのをとどめることができません。私たちが経験するのは、世界のうつるさまざまな界面で生じる現実の数々です。ときにアーティストは、世界の思いがけない側面をうつしだし、私たちの世界認識を変容させるでしょう。
ひとつの雲を複数の地点から捉えた《雲を反対側から同時に撮影する/2011年9月13日12時15分》(2011)のように、寺岡の作品ではしばしば、自分の意識の及ばないところで確かに存在しているはずの(自分自身を含む)世界の姿へのアクセスが試みられています。自己と世界とがひとつづきの連綿へと還元されていくような、世界の全体性と因果律への言祝ぎ(ことほぎ)の感覚をもたらします。
小松は、自身の身体やコミュニケーションにまつわる記憶をもとにしたインスタレーションなどを発表してきました。そこではモチーフの組み合わせが想像の契機となり展示室という公共的な場に私的な記憶の時空間を立ち上げます。自己の内面を他者の側へ投げわたすとき、それは否応なく断片化や静止を伴うでしょう。本展では映像プロジェクションをメインとした構成でアプローチします。
世界が変わらずに豊かなものであり続けるとしたら、それをどのように感知できるのでしょうか。誰もがそれぞれに別様の世界を生きるようになった現代において、他者との共在が可能になるのはどんなときでしょうか。それは私たちにとって最も素朴で切実な関心ごとのひとつです。今回紹介する2名による作品は、私たちの目にうつる世界を、ふたつの異なる角度から届けてくれることでしょう。
プロフィール
小松 千倫(こまつ かずみち)
1992年高知県生まれ。音楽家、美術家。国内外でアルバム・EPをリリース、オンラインでの作品発表を行っている。「インターネット・ミーム」によるストーリーの複製や擬似的な生成のリサーチに基づき、喪失や紛失などをテーマに音響作品やインスタレーションを展開する。主な展覧会に 『FAKEBOOK」(Workstation.、東京、2016)、「シンフォニーLDK」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2017)、『見立てと想像力 ━ 千利休とマルセ ル・デュシャンへのオマージュ』展 (元淳風小学校、京都、2017)『Tips』(京都芸術センター、2018)など。
ウェブサイト
寺岡 海(てらおか かい)
1987年広島県生まれ。グループ展に『未来の途中の、途中の部分』(京都市立芸術大学ギャラリー@KUCA、2017)、『韓日芸術通信Part2 Cross Point』(韓国忠北文化館、2017)、『「応答」~SUMMER STATEMENT 2018報告とその後~』(秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT、2019)、個展に『世界と私のあいだ』(KUNST ARZT、2012、京都)、『Blanket and Dog』(Gallery PARC、京都、2015)、『A Wind』(KUNST ARZT、2017)があるほか、『描くこと | 平田猛 展』(art space co-jin、2019、京都)の企画をはじめキュレーション等も手掛ける。
日時 | 2019年4月16日(火)〜2019年5月8日(水) *会期中無休・入場無料 |
---|---|
会場 | 京都芸術センター ギャラリー北・南 |
出展作家 | 小松千倫、寺岡海 |
関連企画 | アーティスト・トーク *入場無料、事前申込不要 |
主催 | 京都芸術センター |
お問い合わせ | TEL:075-213-1000 |
HP |
WRITER
-
離れてわかる地元のありがたみを感じる道産子です。移動が好きで、わりとどこでも生きていけます。踊るのが好き。KPOPはARMYでN市民でEXO-Lす。
OTHER POSTS