REVIEW
THERM
SPANK PAGE
MUSIC 2015.12.18 Written By 山田 和季
前作『SAKANA.』より約1年ぶりとなる『THERM』がリリースとなった。SPANK PAGEが仲手川裕介のソロプロジェクトとなってからは2枚目のフルアルバムとなる本作。彼の持つ神々しく澄みきったイメージに加えてそれだけではない沸きたつような熱を秘めたアルバムになっている。 
 
前置きはほどほどにしておくが、頭から最後まで一貫してブルーとレッドの2色のみを併せ持ったような作品である。冷やかさと熱っぽさ、静けさと衝動、空の一番上と海の一番底、表裏一体のもの以外は介在する余地を与えられないようなクリアさを保ち続けた1枚。曖昧さは気持ちいいほどに存在しない。 
M2”RED”での少しずつ深部に潜りこんでいく感覚は、今アルバムを象徴するものがあるだろう。どんどんと鋼のように重たくなっていくベースにつられ、水の中へと引きずり込まれていくような気持ちに陥る1曲。気がつけば別世界に立たされているような、ハッとする終盤の展開は必聴モノだ。個人的にはこの曲なくして『THERM』は成り立たないなと感じている。 
 
アルバム中盤に位置付けられたM4”fire”ではSPANK PAGEらしい美しく高らかな旋律に重ねて色んな物の「消滅」を仲手川は歌う。そしてゴスペルを思わせるようなピアノフレーズが寄り添うように流れ続けるM5”grace”。この2曲の並びが今作で一番の澄み切った悲しさに溢れている一方で、ラスト2曲のM11”monster”、M12”EAT”の並びが最も静かな優しさに満ち満ちているのである。 
 
アルバムとして一貫したテーマを内包しながら、個々の楽曲からもそれぞれの強い意義が感じられる。その想いが丁寧に納められていることに感激すらしてしまうような芸術的な作品となっている。7分超とボリューミーなトレーラーからもその丁寧さは感じられるので、是非上記トレーラーもチェックしていただきたい。 
もちろん今作のレコーディングもライブにてお馴染みのサポートメンバー(Gt.田渕ひさ子/Ba.中尾憲太郎/Dr.水野雅昭)によるものとなっている。今作を携えてのリリースツアーがすでに12月上旬より始まっており、12月18日には京都二条GROWLYでのライブも決定している。その他の公演は12月20日の新潟CLUB RIVERST、12月29日の新代田FEVERにて。 
 
音源でも感じられる仲手川の圧倒的な歌声の存在感はライブでも健在。音源・ライブ・場所・形式を選ばずとも、彼の声と楽曲はいつだって最大限の輝きを放つことができるのである。”生”のライブを感じることができるのはもちろんのこと、その先を超越した”生”の才能をきっと目の当たりにすることとなります。是非。 

『HERM』Special Trailer

THERM

 

1.HEAT
2.RED
3.spliced sky
4.fire
5.grace
6.夏を待ってる
7.ゆめさらい
8.(Interlude)
9.さよならバイオレット
10.水曜のシャルム
11.monster
12.EAT

 

Release ‘15,11,25
Format ALBUM
Price 2,300円(税込)
Item twr-372
Lable Throw Records

WRITER

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