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Monochrome Circus + Kinsei R&Dが挑戦するマルチメディアパフォーマンスとは。

不寛容について。これが今回のMonochrome Circusの公演のテーマとなっている。身体表現だけでは難しいとも捕れるこのテーマに至った経緯は何だったのか。ダンスカンパニー・Monochrome Circus代表の坂本公成さんとKinsei R&Dの藤本隆行さんに話を伺った。

Kinsei R&D 藤本隆行

この公演を製作するに至った経緯は何ですか?また、なぜこのテーマになったんですか?

Monochrome Circus 坂本(以下、坂本)

もともと藤本さんと一緒に公演を作ろうと話していたんですが、その当時、政治情勢や世界情勢に不安や憤り、不快感を感じていたんです。不寛容だと感じていました。そこで今回の公演のテーマになる不寛容ってなんだろう?という話合いからスタートしました。

Kinsei R&D 藤本(以下、藤本)

政治家や指導者も決して悪いことをしようと思っている訳じゃなくて、その人たちの正しいことをしようとしているわけだけど、じゃあ感じているこの気持ちを言葉にするとしたら何なんだろう?と考えたら、不寛容かな、と思って、じゃあ不寛容ってなんだろう?ってことを考えました。坂本さんと、ダンサーの森裕子さん、ドラマトゥルクのShinya Bさんも含めて話しをして、整理していきました。

一昨年から坂本、藤本、森、Shinya Bは月に1度話し合いを重ねながら公演を作ってきたが、その2〜3年の間にも世界各地では見過ごせない出来事が起こっている。

藤本

僕たちが考えている間にも、世界はこんなに変わってしまった。こんなにならなかったらよかったのに、と思っています。

坂本

現実が舞台を追い越してしまった。でもだからこそ、今、観てほしいと思います。

Monochrome Circusは純粋なコンテンポラリーダンス集団であるが、今回の作品には歌と映像、音楽に加え、台詞が存在する。役者との作品作りは、2人にとっても今までにはない新しい試みだという。

なぜ、台詞を入れようと思ったんですか?

藤本

この公演を作るにあたって、テーマを「不寛容について」としているので、どうしてもダンスだけでは表現できない部分があると思いました。そこで台詞が必要だ、という話になりました。

坂本

ちょうどキャスティングを考えているときに、1人芝居をやっている田中遊さんの公演を見に行ったんです。そこで、これだ!と思い一緒にやりませんか、と声をかけました。

藤本

2人とも芝居の台詞は書けないし、だからドラマトゥルクのShinya Bさんと相談して、台詞というかト書きみたいなものを書きました。演者の田中さんはスキルもあるしすごく誠実な方なので、この公演と台詞に向き合って、応えてくれています。演技指導と言っても僕たちはできないから頼りきりになってしまっているけど、本当に考えてよくやってくれていると思います。

Monochrome Circus 坂本公成

初めての試みで、苦労した点はどこですか?また、見所はどこですか?

坂本

ダンスと言葉がどう噛み合うのかというところですね。初めは違和感があって、どう釣り合いのとれるものになるのか、2つが合わさって別の次元にいけるのにはどうしたらよいのか?を試行錯誤しています。まだ謎のままなんですが、音、照明、映像も入るトータリティの中で、どこまでまとめられるか、不寛容というものがどう表現できるのか?というのは、本番の劇場に入ってみないとわからないかな。

藤本

見所は、実はまだ全体像が見えてないんだけど、コンテンポラリーダンスという見方をするより、歌もある、芝居も映像もあるマルチメディアなパフォーマンスだと思って見てもらえれば良いと思う。ダンス+メディアアートだと思って作ってるから、アートを体験するも良いし、ダンサーなら踊りを観てもいいし、どの角度からでも見てもらえると思います。

坂本

膨大な情報量だし、僕たちも本番まで全体像を探りながら稽古をやっているところもあるので、本番もライブだから毎回違うし、一度でわからない時はぜひ何度も足を運んでもらえたらと思います。

コンテンポラリーダンスにあまり触れたことのない人は、どう焦点を当てて観れば良いですか?

藤本

肩肘貼らずに。例えば、テレビ番組と思って観てもらってもかまわない。けれど、映画とか他のメディアとは違うライブ感を感じてほしい。生でやっていることに価値があると思っているので、滅多に観ない人が今まで出会わなかった、体験しなかったことをその場で感じてほしいです。

 

映画や舞台を作るときって、人の気配を消した演出の方が良いときもあるけど、今回の作品は、ダンサーの生身の身体だったり、うわ〜人がいるなあ、人の身体があるなあ、と思ってほしいと思って人をあえて見せて作っています。生身の人間が目の前でしているライブ感を感じてほしいです。

最後に、ダンサーの森裕子さんと野村香子さんにもお話を伺ったが、生身とメディアがぶつかって干渉していく瞬間、シンクロする瞬間、生身でゆったり動いているようでも、共存するメディアによって身体に要請されていることも違ってくる中で、ダンサーは裏で膨大な作業をしていることになる。

 

「寛容と不寛容」を表現するMonochrome Circusの踊りは「自由と拘束」がテーマで、自由に踊りたい!と爆発させたエネルギーは途中で邪魔されて止められてしまう。そこからまたエネルギーを再生産して踊り出す、ということを続けるのだが、この作業は非常にしんどいもので、800メートル走を走っているような感覚だという。舞台から聴こえる「ハァハァ」という息づかいは、演技ではなく本物だ。

 

インタビューを通して、一瞬で過ぎてしまう舞台の中には計算された膨大な作業があること、それに加えて生身の人間だからこそのライブ感があり、エンターテインメントとしての贅沢さを感じ、また観る側への懐の深さを感じた。

今回の公演は踊り、音楽、映像、照明、台詞、歌が交錯していてコンテンポラリーダンスというよりもマルチメディア作品である。観る人によって受け取るものがそれぞれであって良いのだ。

 

アート作品を観ることは決してハードルの高いものではないと思う。知識が無いならわからなくても良くて、それでも日常生きている中では出会わない出来事に遭遇する、という人生のプレゼントのようなものであると思う。そこで受けた衝撃は、明日からの自分に少しの変化をもたらすかもしれないし、人生を変えるようなこともあるかもしれない。さあ、ナマモノのパフォーマンスを観に行こう。

Monochrome Circus+Kinsei R&D最新公演 『T/IT:不寛容について』

 

旧人類は 500 万年進化しなかったと言われている。そこに現人類が現れ、他の動物の殺戮をはじめた。手も知識もが「力」となり、より大きな力を生み出す創意工夫が文明を発展させていく。やがてヒトは、「全能な力」を崇拝する。共に祈りを捧げ儀式を執り行うといった連携は、深い絆となり絶大な効力を持ち、ひとつの共同体となる。同じ神を信じない者への弾圧は残虐を極めたため他者との共存を図るために「寛容」という概念が生まれなければならなかった。そして共同体は、しだいに国家として社会のどの集団よりも上位に位置する権力となり「暴力を独占」していく。

 

ヒトは力に執着し、共同体は国家として暴力の正当化を進めた。武器は鈍器なものから鋭利なものへ発達し、そして弾丸となった。創発性と残虐性は同根の果実でありわかちがたい。でもだからと言って、わたしたちは飲み込まれるのか。

INFORMATION

日時

3月10日(金)20時

3月11日(土)15時 / 19時

3月12日(日)15時

*各回45分前より受付開始、15分前開場 

*入場規制:小学生以下入場不可

会場

京都芸術センター 2F 講堂 

京都市中京区室町蛸薬師下る山伏山町546-2

料金

一般前売り 3,000円 / 学生 2,500円 (当日券 各500円増し)

本公演専用予約ページまたはJCDNダンスリザーブ にて予約受付中。

クレジット

出演:

田中遊 (正直者の会)・長良将史

森裕子*・合田有紀*・野村香子*・小倉笑* (*Monochrome Circus)

演出:坂本公成 ・藤本隆行

振付:Monochrome Circus

音楽:山中透

ドラマトゥルク:Shinya B

映像:長良将史

照明・美術:藤本隆行(Kinsei R&D)

衣装:北村教子

舞台監督:渡川知彦(渡川組)

映像オペレーション:小西小多郎

ビジュアライザー・プログラミング : 白木良

宣伝写真:金サジ

フライヤー・デザイン:南琢也

制作:大籔もも

主催:一般社団法人ダンスアンドエンヴァイロメント、Kinsei R&D

共催:京都芸術センター

助成:文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)

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