Ribet townsは京都で結成された12人組バンド。……想像してください、12人組バンド。違う、スカパラじゃない。全然違う。追加情報としては「トイポップ・北欧トラディショナル・
ひとつ彼らの楽曲において面白いのが現実感のあるリリック。 “ベッドタウン”はその名の通り、人々が帰ってくる暮らしの場所を歌った曲だ。「ベッドタウン」と聞いて思い浮かべるのは、家で帰りを待つ家族とふかふかの布団……曲中にクリスマスの如く鳴り響く鈴の音がまた、そんな風景を思わせる。わくわくドキドキさせるような曲調と、まるで楽器たちがこどものように走り回っているような賑やかさ。「渋谷と北ヨーロッパに憧れるバンド」と自称するだけに、ふとした瞬間にテレビや街角の雑貨屋さんから流れてきそうな多幸感が溢れている。語弊を恐れずに言うと渋谷系って音楽なのにファッショナブルで、音楽なのにオシャレな生活を予感させるもの。でも現実世界では「生活感」ってピカピカなものじゃなくて、少しくたびれたぐらいで丁度いいんです。庶民を代表して言わせていただくと渋谷系の方々と我々の生活は違うんですよ! 実際一部の人にとっては整えられた「生活感」ってこそばゆかったりもする。けどRibet townsが歌う「ベッドタウン」は人々が静かに夢を見る場所じゃなくって、<終電をなくした夜に><タクシーで乗り付けて><眠るだけ それだけじゃないのよ><ハードワーク癒せるの>なんて超生活感のある場所として描かれていて、身に覚えのあるリアルさにくすっとしてしまう。可愛らしいかったり遊び心のあふれるフレーズの中に、ところどころブチ込まれる生活臭パンチにガチガチのベッドタウン住まいの私としては笑ってしまった。
打って変わってギュッと詰め込んだように早口なボーカルのメロディと、かわるがわるに隙間なくリズムを刻む楽器たち。”ショートシネマ”で魅せるRibet townsのもうひとつの面白さは声質・フレーズのキュートさやあたたかさとは逆に、機械的な印象すら感じるほどの耳への情報量の多さ! この「ポップでかわいいだけじゃないんですよ、フフン」みたいなやつの正体は何なんだ?! って考えているうちにあっという間に曲が終わってしまう。きっと細部に宿る楽曲制作の丁寧さと演奏の「テクさ」がこの謎の正体なんだろうな……。
ここまで一貫していたせわしなく騒がしくハッピーなノリをひそめて少し落ち着いたはじまりを迎えるM3 “caravan”。カントリー調のギターに合わせて<かばんを持って出かける ドアを開けてさよなら>という情景を思わせるには十分な歌詞とサウンド。しかしラスト1分半でグッとまた元のRibet townsの賑やかしい世界へと引き戻してくれる。ひとりで行ってしまおうかなぁとしていたところを、大勢の彼らに「こっちこっち」と連れ出されるようで少しドキッする。一回かばん持ってさよならしたのになぁ、結局なんか大勢いるじゃんって感じ。そうそう、キャラバンっていうのは車なんかの乗り物だけじゃなくて、移動する集団そのものを指し示す用語なんですよね。ひとりではキャラバンには成りえないっていう、曲展開と歌詞とタイトルの意味を勝手に合致させて腑に落ちていた。
ラストナンバー”メトロ”はこのEPの中でもグッと物語性を感じる一曲。相変わらずたくさんの楽器たちでそれぞれのフレーズがわいわいと繰り返され、コンパクトながらにドラマティックな展開。絶妙に「あとちょっとだけ聞いていたかったな」と思わされる。地下鉄を舞台にまだ見ぬ「君」を探すストーリーがアニメMVにも描かれているのだが、そのストーリー性を知ってしまったが最後、これまで徹底して多幸感を演出していた楽器隊の賑やかさ・音数の豊かさがすべて「焦燥感」に変わってしまう。人でごった返した地下鉄、君を追いかけないといけない! 次で降りないといけない! 急かすように鳴らされるピアニカ、心拍数のように刻まれるグロッケン。是非”メトロ”のMV視聴の上で、改めてこのEPを頭から再生してほしい。ただハッピーなだけじゃない、多幸感の中にも力強さや切なさ、ひたむきさなんかのいろんな感情が見えてくるはず。
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思ったことをオブラートに包まず言ってしまうし書いてしまう故の、他称「めたくそライター」。遠慮がなく隙のあるだらしのない文章を好みます。音楽はアメリカのハゲorヒゲがやっているバンド、映画はしとやかなエロと爽やかなゴアが好きです。
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