【俺とマンガとお前と俺と】第7回:ネームはマンガの設計図 その3
アンテナ読者の皆さん、こんにちは。ご無沙汰しております名古屋造形大学マンガコースの石川です。花粉とともに春の足音が近づいているような今日この頃、京都の皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
さて前回はマンガにおける「ツカミ」の大事さについて力説しました。そこで読者を掴んだら……次はいよいよ本編で勝負です!
ではここで今までのプロセスを振り返ってみましょうか。キャラクターと設定が決まって話のアイデアが見えてきたら、作者である貴方には自分の作品のおもしろさ (伝えたい事) がある程度見えてきているハズです。それが読者にとってもおもしろいかどうか、それはもう作品にして直接読者 (編集者) に問うしかありません。だから、まあ、自分が「おもしろい」と思った方向でとりあえずネームにしていきましょう!
その「おもしろさ」を伝えるためにはマンガには様々な工夫が必要です。入口でのその工夫が前回の「ツカミ」だったワケです。「ツカミ」で貴方のマンガに興味を持った読者はとりあえず本編に入ってきますが、だからと言ってそこからなんの工夫もないと、読者はすぐ「飽きて」読むのを止めてしまいます。それは「少しでもつまんなかったらすぐにでも読むのを止めるからな!」ぐらい厳しい姿勢であると思ってもらっていいでしょう。では読者が「飽きて」しまうのはどんな時なのか?
1.いつまでたっても主人公が活躍しない・話が展開しない
ツカミで興味を持った読者は、ある程度の所までは話につきあってくれますが、それも先の展開に期待しているからこそ!まずはネームの段階で主人公をはっきり示し、行動させましょう。主人公が行動する時、話もまた展開していくくらいのスピード感が必要です。
サンプル作(※第5回コラム参照)で言えば、設定を説明するこの3ページ目が飽きられやすくきわどい部分で、ここを丁寧にやりすぎるとすぐに「飽きられて」しまいます。
2.話がわからない・わかりづらい
元々のアイデアがそもそも複雑でわかりづらい場合、その時点で貴方のマンガを読んでくれる読者は限定されるでしょう。その事自体は仕方ありません。しかしながらどんなに難解なストーリーでもわかりやすくする努力は必要です!「話が難しい」なら読者に一応内容が伝わっていますが「話がわからない」ではそもそも何も伝わっていません。読者との闘いのリングにすら上がってないのです。じゃあどうするか?ネームの段階で以下のチェックポイントを何度も見直してみて下さい。話はそれからだ!(笑)
3.字が多い
大前提として、読者は字が読みたくてマンガを読むのではありません、キャラの言葉としてセリフを「見る」のです。現実でも人の長い話は飽きるでしょ? (笑) 説明しなければならない設定が多すぎるならば上の図のプロセスで見直してみましょう。また学生のネームで非常に多い欠点として「(言い回しを変えて) 同じ事を何度も言ってる」「会話の返事をいちいち拾いすぎ」というのもあります。これらももう一度客観性を持ってネームを読み返して見ると気づくので、是非やってみましょう。なんにせよ、マンガは字が少ないに越した事ないと思いますよ(笑)
4.展開に共感出来なくなる。
これもある意味致し方ない事で、途中からの展開が気に入ってもらえなかったらそのアイデアの「お客さん」では無かったとも言えます。ただ不用意に読者の期待を裏切るような展開をしてしまうのは、まだ作品に対する集中力が欠如しています。格好良さが期待されているキャラにカッコ悪い事をさせたり、エロさが期待されるようなおねいさんがひたすら真面目一本やりだとがっかりするでしょ? (笑) この場合大事なのはキャラのセリフや行動をネームの段階でしっかり見直し、キャラの魅力がブレないように細心の注意と集中力を持ってネームを推敲していく事です。
お金を払って2時間拘束されて観る映画のようなメディアと比較して、読者に自発的なページのめくりを要求するマンガというメディアは作者と読者の関係性が濃厚だとも言えます。プロの、まるで読者に対してページごとに「どう?おもしろい?どう?」と問い続けるようなその厳しさは、まるで1Pがボクシングの1Rみたいな勝負感に満ちているハズです。なんにせよネームの段階から「読者に対するモチベーション」と「自分の作品に対するモチベーション」が近いほど、サービス精神旺盛な良いネームになる気がします。
今回最後に絶対やってはいけないネームを2例上げておきます。
何故ダメなのか?その答えは「メリハリの無さ」です。次回はコマ割りの「テンポとメリハリ」について解説してみたいと思います。
今回のまとめ!
マンガは絵で読むエンターテインメント!
それでは皆さん、次回お会いしましょう!ばいちゃー!
WRITER
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石川俊樹プロフィール:1962年東京生まれ 大学卒業後浦沢直樹先生のアシスタントを2年勤めた後、マンガ家兼アシスタントとして業界で働く。現在名古屋造形大学造形学科マンガコース准教授。バンド「フラットライナーズ」Ba/Vo
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