【俺とマンガとお前と俺と】第8回:コマで読ませろ!メリとハリ!
アンテナ読者の皆さん、お久しぶりです、名古屋造形大学マンガコースの石川です。もうすぐ夏じゃありませんか!何ってワケじゃないんですが無意味に焦ってきませんか? (笑)
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さて当コラムも8回目、前回予告した通りいよいよ「構成」の話に入っていきたいと思います。
今回はまず「コマ割り」についてです。構成の最小単位でもあるマンガのコマにはいろいろな使い方がありますが、基本的なルールは簡単に言うとたった2つ、「右から左」と「上から下」です。
その流れを基本に、マンガのコマには大きい / 小さいがあります。さらに言えば枠線の幅の太い / 細い、変形コマ、枠外ベタとか様々なバリエーションがあり、それぞれに意味があるんですが、共通しているのは全てドラマにおける進行上の「時間」に関するバリエーションなんですね。つまり読者がマンガを読むスピードや、読者が一つのコマ (シーン) における時間をどう解釈するかについてのサインなのです。こう説明するとマンガの読み方に関するリテラシーは複雑なんですが、幼い頃からマンガに親しんできた我々日本人はすでに無意識にマスターしているんですよ!……すごい!w
マンガのコマ割りは4コママンガはともかく、同じ大きさのコマが延々続く事はまずありません。細かくコマ割りされているページがあれば、見開きで一コマというページもあります。コマの大小が「時間」に関わるサインであるという意味は、読者が一つの「コマ」に留まる時間と関係があるという意味でもあります。
例えば映画においてカットにおけるシーンの長さは物理的に観る者の時間を拘束し、ドラマの構成を時間によって編集しています。大事なシーンはじっくり見せ、めまぐるしいカットではスピード感を体感させているんですね。
こうした見る人の時間をコントロールする事でドラマの緩急 (メリハリ) をつけ、物語の輪郭を強く伝える演出はマンガでも同様に行われています。映画におけるシーンの長さと同じくコマが大きいほど読者はじっくり見るでしょう。つまりマンガ家はコマ割りで読者の読むスピードをコントロールし、読者の脳内で再生されるドラマの編集を行っているというワケです。ではどんな時に大きなコマ割りをするのか、いくつか考えてみました。
1. キャラクター (特に主人公や重要人物) の初登場シーン
2. ストーリー上じっくり見せたい絵 (物や表情)
3. キメ絵 (勝敗のついた瞬間、恋に落ちた瞬間etc……)
4. ストーリー上読者に印象付けたいセリフ (表情込み)
5. 大きく雰囲気を変えたい時の風景やキャラ
6. 単純にスケールの大きさを表す時
……等ざっと思いつく範囲ではこんなところですが、どなたかの言葉で「コマの大きさは主人公の心臓の鼓動 (感情の振幅) に比例する」という言葉がわかりやすいかもしれません。ただ、ネームでもどのシーンに大ゴマを充てるかで微妙にストーリーの印象が変わってくるので、まずは作者がネーム段階で一つ一つのシーンの意図をしっかり把握していないと、狙い通りの展開が作れません。以前にも書いた通り読者は常にストーリー先読みを行っているので、あまり重要ではない人物やセリフを大ゴマに入れたりすると、上記のような意図として受け取り混乱させてしまう可能性があるので気をつけたいところです。
あと重要なのがテンポ、大ゴマが「ゆっくり」ならば小さいコマは「早い」です。つまり大ゴマは小さいコマとセットで使う事で読者の読む流れのテンポを作りだす事が出来るのです。曲で言うとAメロBメロときてサビがドーン!とくる感じですね (笑)
マンガ家は皆それぞれコマ割りのテンポを持っています。その作家独自のグルーヴ感もまた読者にとって魅力になっているハズなので、そこも味わって一度マンガを読んでみて下さい (「ジョジョ」の荒木先生のグルーヴ感たるや!) 。
以上、マンガの「コマ割り」がシーンを描く以上の演出を担っている事がおわかりいただけたでしょうか?
ではここで今回のレクチャーのまとめです。
大ゴマはここぞ!で使う伝家の宝刀!
次回も引き続き「構成」のお話です。さいならー! (ドーン!)
WRITER
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石川俊樹プロフィール:1962年東京生まれ 大学卒業後浦沢直樹先生のアシスタントを2年勤めた後、マンガ家兼アシスタントとして業界で働く。現在名古屋造形大学造形学科マンガコース准教授。バンド「フラットライナーズ」Ba/Vo
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