【小倉陽子の見たボロフェスタ2017 / Day2】接近!UFOズ / シンガロンパレード / H ZETTRIO / おとぼけビ~バ~ / ペトロールズ
接近!UFOズ
私のボロフェスタ、2日目の始まりは地下にある『街の底STAGE』2番手の接近!UFOズ。それぞれの楽曲に色んなルーツが見え隠れ、ジャンルレスというより全ての音楽を源にして飲み込んだ後の音楽のよう。”やさしい夜”では街を闊歩するような愛嬌たっぷりなリズムに、宇宙を感じるシンセサイザーの音。生活の隣である「ここ」のようで、誰も知らない「あそこ」みたいな世界。
「気楽に、チルしましょうよ」と始められた、ベースラインが非常に印象的で気持ち良い“サーフィン“では心地良く音の波に乗って揺らめいていられる。続く”煙幕“も心地良さはそのままに、よりスペイシーに、よりサイケデリックに高まっていくよう。まるで現実と夢を行き来するようでもあり、フォークとアーバンを両方感じさせる音は、まさに田舎でもあり都会でもある京都を感じさせる。これは宇宙の音でもあり京都の音でもある、そんなことを感じていた。
(写真:益戸優)
シンガロンパレード
地上の『プテラノドンSTAGE』ではこちらも京都のバンドであるシンガロンパレード。1曲目から”UFO”で観客を縦に揺らし、ぶち上げる。3ピースでありながらぎゅっと詰まった音の層と、Vo/Gt.みっちーの強い声量に厚みを増すコーラスを重ね疾走!止まることなく“YA・SE・RU・WA“で会場の一体感を高めていく。
「京都人の生活はそんなに雅じゃございません」と京都人である自分たちを紹介する”KYOTO-JIN PEOPLE!!”では横へ横へとステップを踏みたくなるリズムに誘う。シンガロンパレードの歌に載せる日本語には絶妙に促音で弾むリズムがたくさんあって、これがより彼らのグルーヴを強めているんじゃないだろうか。関西の中でも特に京都弁に由来しているようで、耳に残って気持ちいい。故人の目線で最期の別れを明るく歌う“サニーデイ“であたたかな気持ちになり、最後に“路地裏サスペンス“で踊り駆け上がっていく。
今年4月からトレードマークの派手な衣装を脱いだ彼ら。スーツで決めていても音で最高に観客を華やかで楽しい気分にさせる、そんな自信に満ちた清々しいステージであった。
(写真:岡安いつ美)
H ZETTRIO
続いて隣の『マンモスSTAGE』にはH ZETTRIOが登場。「よろしくお願いします」と軽やかに挨拶を済ませると“Beatiful Flight“からスタート。H ZETT Mの両手が軽かに動き、強くおどろおどろしささえ感じる圧倒的な音が鳴り始めると、観客がジャズのリズムに歓喜し思い思いに踊り出す。曲間の叫びにも似た歓声に、フロアに集まる人々がいかにのっけからH ZETTRIOに心を鷲掴まれたかが良く分かる。ジャズって凄く楽しい!計算されているようでもあり、アドリブでもあるような緊張感のある音に観客は夢中になっていく。
途中 “Den-en“の出だしでしっとり聴かせるピアノの音に酔いしれながら、さっきまでの手に汗握るような高揚から解放され緩む。見た目やパフォーマンスがロボットっぽい(?)彼らだが、そんな3人がお互いの呼吸と鼓動を感じ取るように演奏する姿に、そこから奏でられる美しい音に、人間らしい息づかいをはっきりと感じるのだ。
ゲーム音楽みたいなキュートな効果音を交えながらの“炎のランニング“では遊び心たっぷりの展開に観客が思わず声を出して笑う。終始会場全体が磁力に吸い寄せられるように、ステージに惹きつけられているのが目に見えて分かる35分間だった。
(写真:岡安いつ美)
おとぼけビ~バ~
次に打って変わって『プテラノドンSTAGE』に登場したのは京都のおとぼけビ~バ~。今年はSXSW出演やUKツアー、FUJI ROCK FESTIVAL 2017のRookie A Go Goステージ出演と注目を浴び続けている彼女たちだが、このボロフェスタ地上のステージは初登場。「5年前の地下から這い上がってきました~!」とGt/Cho.よよよしえが叫ぶと客席は歓喜に満ちる。関西弁の小気味良い言葉遊びみたいな歌詞に、サイケデリックでパンクなサウンドであらゆる女性の心の叫びを掻き鳴らしているよう。そんなおとぼけビ~バ~のパフォーマンスに圧倒される観客に、いつもより多めに太ももが見えるぐらいスカートをひるがえすVo.あっこりんりん。その眼差しは真っ直ぐで、フェスの持ち時間一分一秒を真剣に闘っていた。そこからさらに”いまさらわたしに話ってなんえ“で観客をまくり、“ラブ・イズ・ショート“で爆発! “あきまへんか“で客席にダイブするよよよしえ。かつてこの日の共演者であるキュウソネコカミやチッツと対バンをしていたという彼女たちは、ある意味変わることなく、魂いっぱいで誇りある音を鳴らしていた。そして最後に皮肉たっぷりの“あなた私抱いたあと嫁の飯“という衝撃的なタイトルのショートチューンを見せつけた。
(写真:益戸優)
ペトロールズ
ここ2、3年で全国のあらゆるフェスに欠かせない存在となったペトロールズがこのボロフェスタにも登場!期待の高まる観客がサウンドチェックからフロアをびっしり埋めた。Dr. 河村俊秀がカウントすると“表現“から幕を開ける。サウンドチェックのときからとにかくソリッドな音が鳴っていたが、重くて攻撃力のあるギターの音が時に滲んだりキラキラしたりしながら、自由自在に「表現」する。広いホールをずっしり底の底から震わせるベースに観客も思い思いに揺れる。3人がそれぞれ強くて職人みたいな音を奏でているのに、層になった途端なんて調和していて心地いいんだろう!強靭な音も魅力だけど、3人の柔らかなコーラスワークも楽曲を2倍にも3倍にも芳醇にしている。“not in service“のアウトロがどんどん速くなりフロアが高揚していくままに“ホロウェイ“へ突入。印象的なイントロまでスピードを引きずったところから、これでもかというぐらいじっくりゆっくり歌が始まる。単にBPMの話ではなく、ペトロールズはいつだって音楽の本当味わい深さを教えてくれるのだ。
ラストは“KA・MO・NE“でより一層メロウに、大らかに会場全体を包み込んだ。
(写真:益戸優)
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WRITER
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滋賀生まれ。西日本と韓国のインディーズ音楽を好んで追う。文章を書くことは世界をよく知り深く愛するための営みです。夏はジンジャーエール、冬はマサラチャイを嗜む下戸。セカンド俗名は“家ガール“。
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