Indies New Encounters Playlist 2021.11
音楽配信サービスの恩恵もあり、フィジカルな出会いにとらわれずインディー・ミュージックとも出会いやすくなった今日この頃。ライブ好き/インドア派の編集部員・小倉がここ3カ月以内にリリースされたインディーズ音源に耳を澄ませ、毎月テーマを決めて5曲をセレクトしたものが「Indies New Encounters Playlist」です。各楽曲のショートレビューと合わせて、新しいインディーズを知るきっかけにしてください。
2021年11月のNew Encounters5
新たな一歩を誘い出す、煌めくギターサウンド
今何が足りないって、耳をつんざくギターの音だ。スカッとする、モヤモヤが晴れる、不安が和らぐ、眠っていた気持ちを呼び起こす、そんな力をくれるギターサウンド。キラキラともギラギラともいえるその音の煌きは、先の見えなさの中に抱えた閉塞感を、ただロックへの信頼で打ち破った先に感じる未来だと思えてならない。近いいつか、ライブで聴ける日を思って聴き込んで欲しい5曲を集めた。
『のみものを買いに行こう』SACOYANS
イントロから鳴らされる物憂げで浮遊感のあるギターの音は、1stアルバム『Yomosue』から通ずる大きな魅力。本作はそこにリズム隊がスイングするアレンジが加わることで、軽やかに外に飛び出そうとするポジティブな推進力を感じる。えりか(Vo / Gt)が力強く歌いリフレインする“だいじょうぶ”という言葉と、後半に向けて厚みを増していく音の重なりと圧力に、背中を押される楽曲。そして先行リリースされたこの曲が2ndアルバム『Gasoline Rainbow』のラストに据えられていることは、4人が今を前進していこうとする力の現れだ。
リリース:2021年9月29日(配信シングル)2021年10月13日(配信アルバム)
Twitter:@TSacoyan
『DETENTION』ナードマグネット
さえこ(Ba)の新加入に合わせて行われた『そうふくしゅうツアー』の物販として、カセットテープで限定リリースされた楽曲が、配信にて解禁。思わず手拍子をしたくなったり、拳を挙げたくなるサウンドと展開にナードマグネットの熱いライブを思い出し、その変わらない感覚に懐かしさすら感じてうれしくなる。しかし歌詞に込められているのは、身動きのとれなかったここまでの状況に対する、憤り・諦め・反論・奮起……。”こんなはずじゃないなら どんなプラン描いてた? 思い出せやしないよな今更”と、どうすることもできない現況を言い訳にして自分自身を身動きの取れない方向に押し込めていたマインドセットにも訴えかけてくる。今何をすべきか、感情を沸き立たたされる一曲だ。
リリース:2021年9月29日(配信シングル)2021年7月22日(カセットテープ)
公式web:https://nerd-magnet.com/
Twitter:@nerd_magnet
『Love Drive』And Summer Club
これまでの余白を感じるギターに英詞で歌うオルタナティブ・ロックから一転、2ndアルバム『Dreaming Galaxy』からのリード曲でもある“Love Drive”では、Tokiyo Ooto(Gt / Vo)の端正でやわらかな声で歌われる日本語詞が新鮮だ。その音数の少なさと対照的に、みっちり詰まったバンドサウンドがどこかハイファイでもある。低音、高音と豪速で絡まり合うギターが止まることのない恋しさを焚きつけるよう。駆け抜けるような2分、“意味はない ただスピードが欲しい”という歌詞が、ライブ自粛をしていて疼く心にも染みる。
リリース:2021年8月4日(配信シングル)2021年8月25日(CD/配信アルバム)
公式web:https://andsummerclub.tumblr.com/
Twitter:@andsummerclub
『Galaxy』ZOOZ
楽曲を貫く甲高いリードギターがイントロから煌きを想像させてくれるけど、ずっしり重いベースラインと高圧的でハイトーンなボーカルが影を担う。そのコントラストは90年代UKポストバンクへの敬愛と憧憬。3rdアルバム『Night』からシングルカットされた『Galaxy』は、活動開始から約2年半で50曲近くをハイスピードで制作してきた中でもより原点回帰的で、あらためてZOOZの名刺代わりと言っても過言ではないような1曲。しかし、ファンク色強めの同じくリードトラック『Neon Future』と聴き比べれば、その振れ幅に歩みを止めないZOOZの飛距離を感じられるだろう。
リリース:2021年9月19日(配信シングル)2021年11月6日(CD/配信アルバム)
公式web:zooz2002jpn.wixsite.com/zooz
Twitter:@ZOOZ_2002_ZOOZ
『まぼろし』NYAI
感情を露わにするギターは、ドラマティックなドラムのフィルインと同じくこれまでからNYAIの楽曲の要素としてあったはずなのに、決して熱を上げないボーカルとのバランスで、これまで以上にエモーショナルになって響いている。この楽曲からは、これまで以上にシーンの中心に自ら入り込んでいく気概をも感じるのだ。それはこのコロナ禍でメンバー全員が作曲に挑んだ制作環境や、NYAIのマネジメントを行うLD&Kが福岡に新たなライブハウス〈秘密〉をつくったことなども影響しているだろう。間奏で一音一音を響かせるスライドギターの高揚感は、これまで多くアーティストが生み出してきた名作を彷彿とさせ、ただ凛として音楽をつくるという覚悟を持ち合わせたのだと、うれしくなる。
リリース:2021年8月7日(配信シングル)
公式web:nyai-on-web.com
Twitter:@nyaiband
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WRITER
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滋賀生まれ。西日本と韓国のインディーズ音楽を好んで追う。文章を書くことは世界をよく知り深く愛するための営みです。夏はジンジャーエール、冬はマサラチャイを嗜む下戸。セカンド俗名は“家ガール“。
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