1+1+1+1に成ったthe coopeezの無限大~京都ワンマンライブ直前インタビュー
「the coopeezの進化が加速している」。
昨年8月にリリースされた新音源『appealtime』を聴いたり、直近の彼らのライブを目撃していたなら、少なからずそんな感想を抱いた方が多いのではないでしょうか。
以前にも増して私たちの心臓をえぐるように届く歌詞と、バンドとしての魅力に磨きがかかった高圧なステージング。活動14年目の彼らがなぜ今こんなにも変化し続けているのか。藤本 浩史(Vo/Gt.)山本 聡(Ba.)小川 宏実(Gt.)の3人に話を聞いてきました。
「自分本位」を目指してメンバー全員の意見が詰まった作品
『appealtime』を製作する際、歌詞にフォーカスを当てて作っていかれたとTOTEさんのインタビューでお話しされていました。なぜ前作からそのような制作方法に至ったのかをあらためてお聞かせ下さい。
曲調が多種多様なせいか、かねてからthe coopeez(以下、クーピーズ)は良くも悪くも捉えどころのないバンドだと思われているように感じていて。じゃあ何がクーピーズの中で一貫しているか考えた時に、僕の主観で作った歌詞が核になるかなと思ったんですよ。新作に取り掛かる際、もっと「自分らしさ」が真ん中にある作品を選んでアルバムを組み立てていった方が、より強い作品が出来るんじゃないかと考えたのが始まりですね。それでメンバーに「自分本位にやってみたい」って相談しました。
今作の歌詞や楽曲は、アルバム製作のために書き下ろされたのでしょうか。
元々デモが何十曲もあって、その中からアルバムに入れる曲を選んでいます。その過程は同じなんですけど、今までは集まった曲達から浮かんだイメージを打ち出す感じだったし、MVも僕が作ったイメージをメンバーに提示していました。
今作はまず「藤本くんらしい歌詞の作品」というのをコンセプトにして、それに添う作品を選んでいきましたね。
クーピーズの楽曲は以前から共感する部分は多かったんですが、リード曲“永遠に美しく“はハッキリと「これは私のための曲だ!」と思いました。藤本さんが歌詞を書く際、「誰か」のことを思って書くようになったとか、そういう変化はあるのでしょうか?
僕は僕以外の人のために書くことはほとんどないですね。自分のことを内に向かって色濃く書けば書くほど外に跳ね返って、受け取った人が「自分のことだ」という気持ちになると思っていて。そういう意味でも“永遠に美しく“は閉鎖的な意味ではなく最も内に向かっている作品ですね。苦しんでいる自分の日記を書いたぐらいの感覚です。
なるほど。そのように内に向かっていく藤本さんの歌詞に、メンバーの皆さんは共感することはあるんですか?
100%共感するというよりかは、書かれている言葉に引っ掛かることがよくあります。僕と(小川)宏実は、出来るだけ書かれていることがそのまま伝わるように、もしくはさらに支えてあげられるようなアレンジを考えることに集中しました。
歌詞が一番伝わるようにアレンジしていくってことですね。
藤本くんのデモには元々しっかりしたアレンジが入っていて、言葉にもアレンジにも熱量が詰まっているんですよ。それは良いことではあるんだけど、より伝わりやすくするために挑戦をしていました。例えば、言葉かアレンジのどちらかを冷ましたり。それが特にうまくいったなと思うのが“永遠に美しく“だと思っています。
そういう作り方も初めてのことだったのでしょうか?
より意識して、より明確に歌詞が伝わることを目指したという感じですね。
フルボルテージで作ったデモから歌詞を明確にするというのは、自分では一番やりにくいところなんですよね。だからメンバーに客観的に分析してもらいながら調整をしました。
“永遠に美しく“の歌詞が深く刺さって、ライブで観ても最初から最後まですごく集中したまま心が揺さぶられて聴きいってしまう理由が、今のお話しで分かりました。
アレンジや演奏が良くなかったらそこまで歌詞の良さが届くこともないと思っていて。アレンジや演奏そのものを良いと言われるのも嬉しいけど、「歌詞が良かったです」とか、全体で感情的になれたって言ってもらえると、目指していたところに辿り着けた感じがします。
元々「自分本位にやってみたい」って言って製作を始めたんですけど、最終的に「自分本位」というコンセプトをメンバーで共有するという形になったので、半分以上メンバーが選曲したり、全く自分本位にはなっていないんですけどね(笑)
「藤本さんらしさ」という内向きなコンセプトをメンバー全員で共有するって、よく考えたら面白い作業ですよね。
良い意味での矛盾がありますよね。今回はジャケットもMVもアー写も、メンバーで共有したイメージに向かって全員で作業していく流れだったのが大きな違いですね。これは初の試みでした。
アルバムのグラフィックも抽象的にすることで、より具体性のある言葉にフォーカスが当たるように試みたり。MVもそうですね。全てにおいて言葉を際立たせるためにはどうしたらいいかを考え続けました。
テーマは自分なのに、それに対してのアイデアに他のメンバーの意見が今までで一番詰まっていて、一番クーピーズ感、そしてメンバー感が出た作品になりましたね。こういう作り方が、メンバーにとってもやりがいになったように思います。
山本さんと小川さんにとって、今まで以上にやりがいを感じる創作でしたか?
やりがいはもちろん今までもあったんですけど、やりがいの種類がちょっと違っていたというか。
コンセプトに向かって注力するっていう、新しいやり方へのやりがいがありましたよね。
挑戦してみること自体をアリだと思えた
リリースから5ヶ月程経ちますが、実際にライブ会場での反応はいかがでしょうか?
手ごたえは今までで一番ありましたね。実際に音源を聴いてくれた人、ライブを観てくれた人には思っていたように印象づけられたと感じています。
「言葉に重きを置く」といったコンセプトは、リリース時には公に言ったりしないんですけど、ちゃんとその部分が届いている感じはしました。
以前からクーピーズを好きなお客さんの反応はいかがでしたか?
「前の方が良かった」って言う人がいるかもしれないと思っていたんですけど、ポジティブに「今の感じが良いですね」って言ってもらうことが多かったです「思っていたのと違う感じになったけど、でもいい!」って言ってくれる人もいて。既存のお客さんにも受け入れてもらっていると感じましたね。
ライブではサポートでキーボードを入れられて5人編成という新しい試みがあったり、何より藤本さんのみならず全員がフロントマンという感じの圧力の高いステージングは、何か意識することが変わったんでしょうか?
僕は変わりましたね。自分が変わったというより、バンド全体で誰が何をやっているかを把握しようとしています。以前はもっと各々の演奏がステージに集まってきているって感じだったけど、アレンジを考える際にアンサンブルをすごく意識したので、常に関係性を考えながら演奏していますね。
僕はお客さんを意識して演奏していることは、以前からあまりなくて。今回は特にちゃんとコンセプトがあってつくった楽曲なんで、ステージに上がってもしっかりそれを全うするのみって感じなんですよね。やるべきことをやれば、ちゃんとそれが表現出来るっていう自信がありますよね。
それはそうだね。作る過程でバランスもアンサンブルもちゃんと考えたから、しっかりやれば届くというか。
5人編成の手ごたえはいかがでしょうか。今後も継続することはあり得ますか?
5人編成という試みをして、むしろクーピーズの4人というのが濃くなって、それが自信になったと思います。5人だろうが4人だろうがクーピーズはクーピーズだ、というライブが出来ているから、今後はやりたいことに対して編成を考えたらいいのかなって思えました。ツアー中も5人編成でやることもあれば4人の日もあって、どちらも自分たちらしく出来ていたので、今あまり恐れはないんですよね。
試みたことで何でも出来るという自信になったんですかね。
5人編成は大きな挑戦だったんですけど、自分たちとしては大きな結果を掴めたとも思っているし、5人編成を続けるのもアリだし、また他のことに挑戦してみるのもアリですよね。挑戦してみることに対してアリだなって思えるようになったというのが大きいかな。
挑戦してみることってストレスにはならないですか?クーピーズみたいに長年やってきておられると、今までの枠を壊していくってパワーも使うし億劫になったりしないのかなと思うんです。
聡くんは今までと違うもの、新しいことをやりたがるんですよ。僕はどちらかというと新しいことは億劫になるタイプなので、定番化して保っていたいという欲もあります。ライブも4人で出来ることをなんとかやればいいって思っていたんですけど、今回聡くんがキーボードを入れてみようって言い出したときにも、その意見に耳を傾けられるようになって。
それはなぜなんですか?
このバンドが僕だけの持ち物ではないという感覚が年々増しているんですかね。今までのことを打ち壊すとまで思っていたわけではないけど、メンバーがやりたいっていうならやってみようか、という気持ちは大きくなってきましたね。
長く続けていると、今までにない空気を放り込んでみることも必要で、それが僕のクーピーズでの役割かなと思っています。鍵盤も今までみたいに4人で割り振ることも出来るんですけど、4人だけで出来ることは結構色々やれているかなとも思って。
やり尽くしたということですか?
いや、まだ4人で工夫を凝らすことも出来るんですけど、今までと違う工夫を足してもいいんじゃないかと思って。そうすることで、変化や挑戦に対してタフになるんじゃないかなと思っています。個人的には音楽性がどんどん変化していくことも良しとしているんですよね。メンバー間ではそこの趣味の違いもあるんでしょうけど、そういうメンバーが共存しているのがいいのかな。変化することが好きな人ばっかりでもありがちな感じになるでしょうし。
四人がバンドの四分の一になって辿り着いた、今のクーピーズ
お互いやりたいことが違う部分もあるけれど、それを受け入れ合える関係性も出来てきたのでしょうか?
考え方がバラバラな他のメンバーの良い所や悪い所を受け入れながら、バンドという一つのことをやり遂げるって、人生の縮図だなって思っていて。まぁちょっと壮大過ぎるかもしれませんけど(笑)。バンドをうまくやっていくことが、生きていくための楽しいリハビリみたいだと思っています。
リハビリですか(笑)
バンドって人と関わって基本的に面倒くさいところもあるじゃないですか。藤本さんは作品づくりという部分においては一人でやった方がもっと自分を出せるんじゃないかなと思うこともあるんですけど、本来は人と関わることが好きなんですよね。
僕と藤本くんの関係性や役割も、長い付き合いの中でどんどん変化していると思います。作るものに対して我を通すところばっかりだったのがお互いの意見を聞くようになってきましたし。
人生において、自分に出来ることと出来ないことに悩むと思うんです。例えば僕はゼロからイチを生み出すのが得意だけど、今までだったら誰の手も借りずに一人でやり切りたかったんですよね。でも最近は自分がバンドの四分の一になれているなと感じているんですけど、そうじゃなければ今回みたいなアルバムは絶対出来ていないと思うし、今のバンドに対する評価やライブの手ごたえも存在していないと思います。
技術面ではなく関係性という意味で、相手の意見を聞くとか仕事を任せられるってことがとてもゆっくり変わってきたから、ここまで長く続けてこられたのかなと思います。他のバンドだったらもっと急激に変わって成長しているんでしょうけど、クーピーズみたいに頑固な人間が集まると成長がゆっくりになるんですよね(笑)
バンドの関係性がゆっくり変わってきた結果、ここにきて音楽への向き合い方が変わったというのも自然な流れだったということなんですね。
最初から今の状態じゃなかったし、長く続けてみないと分からないことって絶対あると思うんですよね。
流れの中で、必要性を感じて変わってきたんだと思います。
難しい人間関係の問題を、他でもないやりたい音楽に纏わるコミュニティで悩めているというのがいいんですよ。そこを乗り越えないと音楽は作れないですし、「出来た!」っていう感覚に中毒性を感じているんじゃないかな。ライブだって年々疲れるし大変なんですけど、いつまでもその感覚があるから続いていくんだと思います。
2月17日には地元京都で4年振りのワンマンライブということですが、これはツアーファイナルという位置づけでよろしいのでしょうか?
そうですね、ただ今回の『appealtime』は通販とライブ会場限定での販売なので、これからもリリースツアーは続けていく予定です。でも、一旦ここまでの集大成として節目はあった方がいいかなと思って。あと単純に長い尺でライブをやりたいという欲求もあります。
今の編成で半年経つからね。
『appealtime』以前のクーピーズから観てくれている人も、『appealtime』で初めてクーピーズを知ってくれた人にも楽しんでもらえるワンマンになると思います。
今のクーピーズが思う存分堪能出来るワンマン、楽しみにしています!今まで色んなタイミングでクーピーズを気にしていた全ての人たちに観て欲しいですね。本当にありがとうございました!
the coopeez 4th full album 「appealtime」release tour FINAL ONE MAN SHOW
日時 | 2018年02月17日(土) open : 18:00 / start:18:30 |
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会場 | 京都MOJO |
料金 | 前売:2,800円 + 1drink 当日:3,000円 + 1drink |
ゲスト | 突然少年 |
チケット |
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WRITER
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滋賀生まれ。西日本と韓国のインディーズ音楽を好んで追う。文章を書くことは世界をよく知り深く愛するための営みです。夏はジンジャーエール、冬はマサラチャイを嗜む下戸。セカンド俗名は“家ガール“。
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