【SXSW2020私ならこれを見る:小倉 陽子】CIFIKA,TENGGER:K-POPを拡張していくエレクトロニック・ミュージック
コロナウィルスの影響でキャンセルが決定したSouth by Southwest 2020(以下:SXSW)。彼らが掲げる「The show must go on」の精神にのっとり、ライティングワークショップ(音楽編)の受講生が注目していたアーティストのレコメンド記事を掲載します。
「K-POPという言葉の指す範囲が広がっている」
それは日本で受動的に情報を受け取っているだけでは感じにくいことだったが、SXSWでの韓国音楽の採り上げられ方を見て、シーンは性急に、縦横に変化をしているのだと知ることができる。
『K-Pop Night Out at SXSW』から2018年に名称を変えた『Korea Spotlight』にも出演したCIFIKAが、今年もSXSWに登場する。2016年、サウンドクラウドを利用して突然シーンに出現すると、2018年にはともにSXSWに出演したHYUKOHのVo / Gt OHHYUKとのコラボ曲“MOMOM”のリリース、そしてSXSWを皮切りに韓国人アーティストとしては異例のロングUSツアーを敢行するなど、エレクトロニック・ミュージシャンとして韓国内外から評価される。韓国に生まれ、思春期からの10年間をアメリカで過ごした彼女は、自らを見つめ直しミュージシャンとして再出発するための地として母国である韓国を選び、瞬く間にいわゆるK-POPのミュージシャンと肩を並べるほど注目された。
韓国とアメリカの両方にルーツを持つ彼女のサウンドは、冷んやりとした電子音に英語と韓国語交互に歌われる人肌の歌声で、ルーツや国籍、自らの活動場所への冷静な視線と、故郷を慈しむ温もり両方を感じる。国内ではK-POPとしてポピュラリティを得ながら、テキサスのテクノミュージシャンJeff McIlwainのソロプロジェクトLusineの作品にボーカリストとして参加するなど、その越境した活動にも今後注目したいアーティストだ。
韓国をホームタウンとしたエレクトロと言ってもう一組注目したいのは、TENGGER。韓国人女性アーティストイッタと、日本人男性ノイズミュージシャンマルキドのカップルにより2005年に活動を開始したエレクトロニック・サイケデリック・デュオだ。日本の四国と韓国の済州島を行き来していた二人の住環境、自然環境、その多くは海という共通項を表現したエクスペリメンタルな楽曲は、この二人の関係性と歴史の中でしか生まれ得ないものであり、突き詰めていけば世界中の人にとって普遍的なものとなる。そんな具体と抽象、自分と他人のあわいのような音は、様々な壁を取り払って世界中に届きそうな気さえする。彼女たちはソウルのショーケースであるZandari Festaの枠で、日本でも注目度の高いSE SO NEONらと同じステージに立つ。
SXSWのアジア圏出演者が気になって調べていたが、韓国からの出演者を2組ピックアップしただけでも、随分韓国音楽シーンのイメージが更新された。今、オースティンに、というよりも断然ソウルに行きたくなっている。
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滋賀生まれ。西日本と韓国のインディーズ音楽を好んで追う。文章を書くことは世界をよく知り深く愛するための営みです。夏はジンジャーエール、冬はマサラチャイを嗜む下戸。セカンド俗名は“家ガール“。
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