自分の中から呼び起こされる、終わりまで駆け抜けるためのエナジー
2012年に〈Impulse Records〉よりリリースされた3rd Album『till the end』を全曲リマスターし、〈ungulates〉からリリースしたリイシュー作品。『till the end』は2011年の東日本大震災の影響を多大に受けて制作された作品だが、純粋にCurveの10周年を記念した作品だとしても、未曾有の感染症拡大の中生きざるを得ない2022年現在の私たちにとっても、意味深いものとして響くことは間違いないだろう。
M1“Dawn Promised”の夜明けを待つ夜の中にいるような冷たい静けさを感じさせる美しいギターと、その中で体温を伴ったYusei Ra(Vo / Gt)の歌声。そこにドラムとベースが合流し感情がじわじわ昂っていくと、トレモロで暗く冷たい夜から何とか抜け出そうとする一筋の希望が溢れだす。高揚したままM2“Window Children”、M3“Till The End”と一続きに聴き進めていくと、自然と自分の中からも何か沸き立つものを感じるが、これだけ力強く走り抜けるエナジーは一体どこから湧いてくるのだろうともふと思う。
M4“Running Through The Dawn”の歌詞に出てくる「The sun is shining in your eyes」というフレーズから確信するのは、夜を切り開く力を一人ひとりが持っていて、その力を信じるか否かだということ。そのことは己を奮い立たせるように儚くも力強く歌うYusei Raの歌声が身をもって示しているようでもある。“Till The End”の歌詞で、愛や与えることは自分自身で学ぶものだと定義しているし、アルバム全体に共通する内省を後押しするような美しく力強いバンドサウンドが、前の見えない暗闇の中でも光を見ることを手放さない意思ある希望を始終感じさせるのだ。
そうして走り抜けた先、M11“No End”に見る「end」のひとつは「死」であるが、私たちは10年前も今もただでさえ死について考える時間が多くあった。ただそれだけでなく、このリイシュー盤で追加収録されたM12“Cellar Door”でday dream、つまり眠って見る夢ではなく自分自身で描いた夢が必要であると歌い出しで述べていることや、幾度となく「理由は要らない」と歌っていることから、各々の人生を紡いでいるプロジェクト一つひとつの結末についても重ねることができる。
いずれにせよ、社会の影響を受けたとしてもあくまでも終わりを描くのは自分自身に委ねられていていいと思わせてくれるし、誰しもに終わりまで走り切る力があると、思わせてくれる作品なのだ。
till the end (10th Anniversary Edition)
アーティスト:Curve
仕様:CD / デジタル
発売:2022年8月26日
レーベル:ungulates
配信リンク:https://linkco.re/cRUyYG3C
収録曲
1. Dawn Promised
2. Window Children
3. Till The End
4. Running Through The Dawn
5. The March
6. The Long Distance Of The Night
7. When We We’re There
8. December
9. The World You Loved
10.Over The Hill
11.No End
12.Cellar Door
Curve
2003年に2ピース(ギターボーカル&ドラム)編成にて結成、現在はYusei Ra(Vo / Gt)、Kenta Inoue(Ba)にKou Nakagawaを迎え3ピース編成で活動する東京拠点のバンド。
2008年までに2枚のアルバムをリリース。2012年、3ピースで初となる3rdアルバム『till the end』をimpulse recordsよりリリース。シングルリリースや自主企画イベントなどを続ける。2022年8月には完売していた『till the end』のリイシュー盤『till the end (10th Anniversary Edition)』をリリースした。
Twitter:https://twitter.com/curve_jp
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YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCLN5mwbDuBQEua_rnxATR7Q
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WRITER
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滋賀生まれ。西日本と韓国のインディーズ音楽を好んで追う。文章を書くことは世界をよく知り深く愛するための営みです。夏はジンジャーエール、冬はマサラチャイを嗜む下戸。セカンド俗名は“家ガール“。
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