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『ブレードランナー』解析講座:過去からの影響と、未来への影響を8本の映画から探る – 後編 –

『ブレードランナー2049』がSF映画の傑作として歴史に残っていく作品なのかは今後の再評価が待たれる

このコラムでは『ブレードランナー』という題材をベースに、映画の表現がいかに社会とリンクしているか、時代性の影響を受けているかを検証してきた。それらを表現として作品にしてきたのは監督はもちろんのこと、関わった脚本家やコンセプトデザイナーの仕事も大いに関係ある。そして映画(に限らず創作物の全て)は過去の作品の影響を受けている。

 

1982年に公開された『ブレードランナー』が35年後に続編を作られるという事は単に初作の要素を引き継ぐだけの作業ではなく、その間に作られた映画やコミック、小説等様々な表現が影響してくる複雑なプロセスを経ている。今回のコラムで紹介した映画はそのほんの一部に過ぎないが、伝えたかったのは表現の歴史の流れの中で創作物を見るという感覚であり、一つの作品の評価はその作品が面白かったかどうかだけではない、さらに深層で時代とリンクしている部分がある事を知ってもらいたかった。

 

SF映画の表現を突発的に底上げした『ブレードランナー』という映画もそのベースにはフィリップ・K・ディックという先進的なSF作家がいて、その彼もまたパルプマガジン時代から苦労して後年の作風を築き上げた。コンセプトデザインを担当したシド・ミードは1960年代からフォードのカーデザインをはじめオーディオや電気ポット等のインダストリアルデザインを経て未来のイメージを醸成してきた。様々なキャリアを持つアーティストがあるキッカケでフックアップされ、歴史に残る仕事を残すその背後にはそれぞれのアーティストが才能を発揮するまでの蓄積があったという事だ。

 

『ブレードランナー』は決して順風満帆の制作現場ではなく、公開時もヒットする事なく打ち切りの憂き目に会うような作品だったが、その後年の評価より当時自分の仕事をひたすら信じて妥協せずにやりきったその姿勢にこそ自分は勇気と感動を覚える。映画という生き馬の目を抜くようなビッグビジネスの中で、奇跡的な化学反応の結果生まれる歴史的な名作は、そのような有名無名の人々のキャリアの頂点がシンクロするような吸引力を持っているのかもしれない。

 

2017年に公開された『ブレードランナー2049』は35年ぶりの続編という事で話題にはなったが、その後SF映画の傑作として歴史に残っていく作品なのかは今後の再評価が待たれるところだろう。少なくとも自分にとっては今の閉塞感ある時代とリンクした、大変優れたストーリーであったと思っている。願わくば一度だけではなく、何回か繰り返し観る事でそこに新しい自分なりの解釈を発見していって欲しいと願っている。

 

ところで『2049』のクライマックスでの海のシーン、あれ『ロング・グッドバイ』の海のシーンと似てると思わない?

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