このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューのひとつです。
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どこまでもリスナーであるという、パワー・ポップの精神
リード曲「MISS YOU」は、フレンズの三浦太郎(Gt)作曲により、ナードマグネット史上初の共作となった。三浦とナードマグネットの須田亮太(Vo/Gt)が、ともに敬愛するウィーザ―へのオマージュが随所に散りばめられたこの作品は、かつて三浦がフロントマンを務め「和製ウィーザ―」とも評されたHOLIDAYS OF SEVENTEENへの懐古を思わせる歌詞で、過去と現在を繋ぐ楽曲となっている。
また「DUMB SONG」は、ワンマンなどでカバーも披露した『HO17』収録の「Is This Love?」へのオマージュに溢れた作品だ。コードや構成、曲のテーマを上手く引用しながら、センチメンタルでゆったりした泣きメロなどは、ナードマグネットらしさに満ちた音楽に昇華されている。
こういった「敬意を込めた引用」が多用されるのは、彼らが今尚リスナーの視点を持ち続けているからこそであり、自分たちの表現を通じて新しい音楽との出会いの喜びを届けたいという精神が根底にあるように思う。
ちなみにHOLIDAYS OF SEVENTEENが『HO17』を全曲MP3で無料配布したのは、より多くの人に構えることなく自分たちの音楽に出会って欲しいという願いからである。彼ら自身が心から音楽を好きでどこまでもリスナーであるからこその表現は、日本のパワー・ポップのマインドなのではないかとさえ思う。
第二回【3×3 DISCS】:ナードマグネット『MISS YOU』を中心とした9枚のアルバム
選定:ki-ft・アンテナ
WRITER
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滋賀生まれ。西日本と韓国のインディーズ音楽を好んで追う。文章を書くことは世界をよく知り深く愛するための営みです。夏はジンジャーエール、冬はマサラチャイを嗜む下戸。セカンド俗名は“家ガール“。
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