【脇役で見る映画】『アイアンマン』シリーズ スタークに寄り添うポッツ、ふしめのひ! 今日はにげきれ、いまは静かに
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アイアンマンは、もう。トニー・スタークは、もう。物語世界の内外の全ての人類が残され、立ち尽くす。僕もまたそのうちの一人であることには変わりはありません。
とはいえ。
いや、みんな忘れてない?ヴァージニア・ペッパー・ポッツのことをさ。他でもなくトニーの伴侶。トニー・スタークと最も親しかったパートナーであり、彼に最も愛された女性のことを。今日は彼女にフォーカスを絞ってみたいと思います。
というのも、僕はずっと彼女を見守ってきたのです。
「よかったやん、結婚できて!」
「ええ加減仲直りしなよ」
「いや~~おめでと~~」
「それ旦那さんが悪いんとちゃう?」
こんな風にウチはポッツに声をかけながらMCUを見てきたわけ。だってもう親友だから。みんなもっとポッツのことも気にかけて欲しいわけです。旦那さんがあんな風になって、落ち込んでないはずがない。そうは思いませんか?
そりゃそうだけどさ……
たしかにトニー・スタークの生産性は素晴らしいけれど、それだけが人の価値じゃない。どれだけたくさんの人を救ったか。どれだけ役に立つ発明を残してきたか。そして、どれだけ多くの人に寄り添うヒーローをとりまとめて輩出してきたか。それももちろん大事です。でもその数字に目をくらませていちゃいけないと僕は思うのです。
トニー・スタークは偉大。そりゃそうだけどさ。
でも、残されたポッツのことも祈りたい気分になるのです。誠実に人生を歩み続け、そして時に大切な人を失い、それでも実直に今日を生きる彼女こそ励ましが必要なのではないでしょうか。
たおれてしまった昨日の英雄を偲び、今から立ち上がる明日の救世主を待つ。たしかにそれも必要です。されど、その影にスッポリ隠れてしまっても「今」を実直に生きるしかない人を、僕は応援したい。
よく見たらポッツもすごいんだから!
ちょっと待って。少々「しんみり」が過ぎちゃいましたが、冷静に思い返してみてください。よく見たらポッツもすごい。
スタークの秘書からはじまり、数センチ単位の曖昧な関係を経てついに真剣交際。もう10年ほど前のことなので忘れられかけていますが、これだけでも十~~~分に大波乱ですよ。
そこからさらに「主人公」のトニー・スタークを支えるだけでも並々ならぬ苦労であることは想像に難くありません。ヒーローの苦境とは違うディメンションで戦って……というだけにとどまらず。サポートしようとは致命傷を負いかけることもしばしば。よく見るとポッツはすっかり同じ次元で「当事者」として物語に積極的に参加しているのです。
狙われたり、囚われたり、異能のダークヒーローになったり。しかもその異能を治療してまた普通の人に戻って。そんな七転八倒の波の合間にしっかりバリバリ仕事もこなす。月日は流れ結婚・出産。落ち着いたかと思った矢先にアイアンマンは最後の決闘へ。もし彼女が僕のようなノミの心臓の持ち主であれば、この時点でもう何回寝込んだことでしょう。しかし彼女は気丈に振る舞い、『アベンジャーズ / エンドゲーム』では前線にまで足を運びます。
最悪の敵サノス率いる軍団と、それと互角に闘うべく総動員されたヒーロー。あんなのもう宇宙戦争のフェスみたいなもんですからね。モッシュどころじゃ済まない現場に参戦してますから。
内助の功からゴリゴリの助太刀まで、高密度のドラマに流されてきたのです。激動の人生。トニーではなく、むしろポッツにこそ、こんな言葉が相応しいでしょう。
その挙句にさ
そして、悲しみの最終楽章。彼女は「スーツ」を着用して戦場へ。ポッツもまた世界を救う軍団の一員となるのです。「I am Iron Man.」あの言葉とともに殉死するトニーを看取ることとなるのです。
エンタメだからしかたない。トニーのこともみんな忘れる。しかし、ポッツという存在は、この節目の日のあと、世間から忘れられた後もずっと生きていくはず。このことを僕は心にとめておきたいのです。
今は頑張らなくていい
とにかく、今までありがとう。ポッツは今まで頑張りすぎた。
新しく公開された『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』には登場しなかったけど、まあそれも仕方ないでしょう。制作の都合なんざ知りませんが、ペッパー・ポッツは(決して女優のグウィネス・パルトロウではなく)いま表舞台に出てこれるほどの気力はきっと残って居ないのです。
愛する人を失ったポッツの明日はどうなることでしょうか。今度は彼の代わりに立ち上がってくれるのか。トニーを埋め合わせるべく邁進してくれるはずだ。熱烈な映画ファンからはそんな期待も寄せられますが、せめて今はじっと悲しみにくれる時間が必要だと僕は思っています。
どうか負けないで欲しい。そう願います。でも、今この瞬間くらいは頑張らなくていい。とにかくポッツ、ありがとう。憂鬱な日も、無限に繰り返すわけじゃない。きっと明日もツラいのだろうけど、とにかく今日をやり過ごすしかない。
今日はにげきれ、いまは静かに。
いいえ、5年も経ったら少しは落ち着いたのでしょうか。
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WRITER
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95年生。映画ライター。最近大人になって手土産をおぼえました。
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「フラスコ飯店」というwebの店長をしています。