REPORT

『言志の学校』第四回レポート ~発表! こんな本作りました!~

BOOKS 2018.12.26 Written By 川合 裕之

只本屋とアンテナが共同主催するZINEとフリーペーパーのスクール、題して『言志の学校』。9月中旬からスタートしたこの連続講義も今日でようやく修了。

 

流通の仕組み、アイディアの出し方、物書きの姿勢、編集者の心構え、デザインのいろはに印刷の知識まで――。これまで3回に渡る講義で、各分野のエキスパートから本づくりに必要なことを、ハード面の知見からソフト面の策方までを一貫して学びました。

そして今日は実際に手を動かして製本された「プロトタイプ」が一堂に会する日。それぞれ違ったバックグラウンドを持つ受講生たちの頭の中が、手に取って触れる印刷物の「本」として生み落とされました。まったく違った読み物たちに一気にアクセスできるこの場は、まるで一種の”雑誌”のような、不思議な出会いのある豊かな空間だったと言って不足ないでしょう。

 

さて、この記事では当日の発表の様子と、審査委員賞をレポートします!

発表: こんな本つくりました!

どのような意図で、どのような経緯で、どのような本が出来たのかを全員が1人ずつ発表してもらいます。持ち時間は1人3分。喋りのプロではない人間が1人でマイクを支配するにはいささか長すぎて持て余してしまう尺ですが、今日集まった受講生にとっては短すぎるくらい。自分の制作物に対する熱意を3分に収め切れない人が続出。「我が子」へ注がれた愛は表面張力を上回り溢れてしまいます。

時間というのは守るためのものですが、こと今日のこの場に限っては例外。
短い持ち時間ながらも精一杯に伝えました。

特別賞

これまで講義をしてくれた先生のみなさんからも特別賞をいただきました。

松倉早星賞:『HAGAN』 大矢さん

第1回目の講義でアイディアの出し方を伝授してくれたNue inc.代表の松倉早星さん。「みんなデザインはまだ少し苦手かもしれない。でも全体を通して高い基準のものが揃いましたね。これだけの数が集まって面白くない物が本当に一つもない」とコメント。

 

その中でも松倉さんは大矢さんの手掛ける『HAGAN』を【破顔】つまり思わず顔が綻んで笑みを浮かべてしまう瞬間を閉じ込めた作品は、大矢さんの日常の「破顔」にまつわる散文にイラストレーションが添えられています。

 

作品を称えて伏見のお酒、玉乃光が贈呈されることに。曰く「これを飲みながらアイディアを出す」が松倉流みたいです。自分の考えたことをここまで開示できるコミュニティというのは貴重。これからもこのメンバー同士での交流を続けていくことがまた新しい作品にも繋がるというアドバイスも。

文鳥社賞 / 土門蘭さん:『ESPER』 山脇さん

「締めきり前の原稿を抱えていますが、受講生の作品を見て “自分のやるべきことをやらないといけない!” と改めて気づかされました」と柔和に語るのはライティング編の講義を担当してくれた文鳥社の土門蘭さん。

 

土門さんがセレクトしたのは山脇さんの『ESPER』でした。「ITって超能力じゃん」もモットーにテクノロジーと社会のコミュニケーションを解き明かすマガジンです。専門家へのインタビューなのに、自分の主観は自分の主観として躊躇なく挿し込むスタイルが土門さんの琴線にヒット。彼女からの賞品は自身と寺田マユミの共著『100年後あなたもわたしもいない日に』。リスペクトを持って互いの作品を “交換する” スケーターの文化に胸を打たれたエピソードを踏まえた、かつてない粋なプレゼント。

また終了後の打ち上げでは「読んでもらうまでが校了!」という貴重なアドバイスも。せっかく書き上げたのだからこそ、しっかりと読者の手元まで届けることも怠ってはいけないと受講生の背中を押しました。

レトロ印刷賞:『FUTILITY』 下伏さん

レトロ印刷の伯田さんからは下伏さんの『FUTILITY』を選びました。

講師間でも「これも本当にすごく良いよね」「でも量産するの大変だよね、どうするのかな?(笑)」などという声が飛び交った作品。再現不可能な一過性の瞬間を記録することへの愛執を表現しています。素材にも十分にこだわった『FUTILITY』は、「印刷で遊ぶ」を掲げるレトロ印刷さんが太鼓判を押すのも納得といえるでしょう。

 

今回レトロ印刷さんからは、賞品として今後の印刷のサポートを全面的にしてくれるとのこと。何よりも心強いバックアップです。

 

アフタートークでは伯田さんから「これからも気軽に色々な紙モノを作って欲しいですね。別に1冊という形にこだわる必要もなくて、1枚でも全然OK。まずは作ってみることで可能性が広がると思います」というメッセージも。裾野を自分で狭めることなくアグレッシブなものづくりを促しました。

アンテナ賞:『DESIGNER』三島さん

私たちアンテナも1作品をセレクト。「最後まで脱落することなく、完成させてくれてありがとう」とまずは謝辞を述べる編集長の堤。そこに膝を向けるのは受け身の立場の「受講生」ではなく、能動的に自分たちの作品を発表する一人ひとりのクリエイターたち。みなさんの表現の手伝いをする、というゴールはしっかり達成されたのではないでしょうか。

 

アンテナ賞が授与されたのは、三島さんの『DESIGNER』。制作そのものの苦悩とカタルシスにすいて語られた作品です。私たちからのプレゼントは、台湾までの航空券。一歩踏み出して見識を広めて欲しいという想いがこもったギフトです。

只本屋賞:『NEO-I 』藤山さん

1限目 流通の授業も担当した只本屋の山田さんはこのZINEをセレクト。アイドルへの愛を余すところなく綴り続けた作品です。

「個性の強い面々が集まりましたね。中にはTシャツまで作ってくる人がいたり、架空の島作る人もいるし。もう何なんだよ!(笑)」とまずは一言。そんな受講生の作品の中でも特にアイドルへの偏愛を書き綴った『NEO-i 』が良かったと語ります。

 

「愛しているものを愛している、とハッキリ言い切る姿勢」が受賞の決め手になったとのっこと。「好き」を突き詰めることこそが、フリーペーパーの原点なのかもしれません。

山田さんからの賞品は、只本屋が出しているトートバッグ。これを持参して只本屋へ行くと好きなフリーペーパーが詰め放題に!「でもみんな頑張ったからね」と全員分のトートバッグを贈呈。「好き」が詰め込まれたフリーペーパーを沢山インプットして、自分の「好き」をさらに煮詰めてアウトプットする機会が生まれることでしょう。

オーディエンス賞

観客同士でも良かったと思う作品を互いに投票します。順位や優劣は必ずしも大切ではないですが、「評価される」という体験は大変貴重。お互いに称えあうことは自身の成長にも繋がります。実際に手を動かして汗を流した者だからこそ見えてくる長所だってあります。

1位:『HAGAN』

2位:『FUTILITY』

3位:『しましま』

今度は届けるフェーズへ

精魂こめて生みだした作品ですが、言志の学校ではその流通先もご用意いたしました。出来上がったZINE, フリーペーパーは蔦屋書店と台湾アートブックフェスにて販売, 展示されます。

数か月前までは自分の頭の中にしかなかったアイディアたちが形となり、実際の書店や、海を跨いだ場所に並ぶ――。ペンさえあれば、顔のわからない人にだって深く理解してもらえる可能性があるということです。これ以上に刺激的な経験はありません。

 

現在受講生は納品を終えて、あとは流通されて読まれるのを待つばかり。そしてまたいずれ新たな出会いを求めて新たな作品づくりに邁進することを、私たちは願っています。もちろん、その流通の仕組みを自分で作ってもOK。むしろ積極的に様々な道を模索して世に送り出してほしい、というのが我々の総意です。

 

言志の学校はこれにて一旦終了になりますが、各々のクリエイターの活動は続きます。また私たちもこのスクールを第2回、第3回と回数を重ねていく予定です。

私たちは誰かの作りたい!という欲求を形にするお手伝いをします。これを読んで何だかソワソワしたというそこの貴方、是非とも次回の言志の学校でお会いしましょう。

第一回レポート – 作ったからには読んで欲しい!読み手に届くフリーペーパーを考える –はコチラ!

第二回レポート – 書くって?編集するって?文鳥社の2人に聞く –はコチラ!

第三回レポート -デザインとは? 印刷って何?はコチラ!

 

 

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