EVENT

田中功起『可傷的な歴史(ロードムービー)』

MOVIE ART 2021.02.01 Written By 小倉 陽子

美術家・田中功起による映像作品『可傷的な歴史(ロードムービー)』が、2021年2月11日から14日まで、京都市南区の〈THEATRE E9 KYOTO〉にて上映される。

 

田中功起はこれまで『一台のピアノを五人のピアニストが弾く』『ひとつの詩を五人の詩人が書く』などそのタイトルに象徴されるように、複数の人が共同して何かを行うこと、またその可能性や限界について、作品制作を行ってきた。それらの作品は、ベネチア・ビエンナーレ(2013年)での受賞をはじめ、国内外で高く評価されている。本作『可傷的な歴史(ロードムービー)』では、在日コリアン3世と日系スイス人の2人の対話から、異なる背景をもつ人びとが「いかに共に生きるのか」という問いを、静かに投げかける。

 

また本作は、京都市が策定する京都駅東南部エリア活性化方針の推進による『映像でつづる東九条2020-2021』の関連企画。上映初日の2月11日(木・祝)17:00の部のアフタートークには、『映像でつづる東九条2020-2021』にて上映される3作品に関わる木ノ戸昌幸(NPOスウィング)、
久保田テツ(NPO remo[記録と表現とメディアのための組織])、やんそる(Books × Coffee Sol. 店主)の3氏がゲストとして登壇する。

 

今、世界各地で分断が生み出され、差別や排斥という問題は私たちにこれまでにない切実さで迫っており、とりわけこのコロナ禍でその問題はより深刻さを増しているように感じられる。そんな今だからこそ、異なる背景をもつ人びとが共生するということについて、本作に触れながら思い巡らせてみてはいかがだろうか?

 

2018年にスイスのミグロ現代美術館で初めて発表された本作の日本での上映は、2019年の東京・シアターコモンズのみ。初の関西上映の機会に、是非足をお運びいただきたい。

『可傷的な歴史(ロードムービー)』

2019年 / スイス、日本 / カラー / 78分

 

世界中でこれほどまでに排外主義が表面化すると誰が予想していたであろう。異なる人びとが「いかに共に生きるか」という問いは空しいものになってしまったのだろうか。

 

本作は、私たちの住むこの社会の深奥を二人の主人公の対話をもとに紐解いていく。東京に暮らす在日コリアン3世とチューリッヒから来た日系スイス人の二人。初対面の二人が、ともに荒川や川崎を旅し、在日コリアン排斥の過去と現在に出会っていく。関東大震災後の虐殺の現場やヘイトスピーチの行われた地域、それらを移動しながら関連する法律を読み上げ、その過程で二人は少しずつ心を開き、いままで語れなかった感情を言葉にしていく。私たちはどのようにして誰かを理解するのだろうか。誰かの複雑さを、どのように受け止めることができるのだろうか。現実とフィクションが交差する拡張されたドキュメンタリー。

上映スケジュール

日時

2021年
2月11日(木・祝) 11:00 / 14:00 / 17:00★
2月12日(金)14:00★ / 18:30
2月13日(土)14:00 / 18:30
2月14日(日)11:00 / 14:00★

 

★アフタートーク付き上映回
2月11日(木・祝) 17:00
木ノ戸昌幸(NPOスウィング)
久保田テツ(NPOremo[記録と表現とメディアのための組織])
やんそる(Books × Coffee Sol. 店主)
※関連企画『映像でつづる東九条2020-2021』

 

2月12日(金) 14:00
あごうさとし(THEATRE E9 KYOTO芸術監督)

 

2月14日(日) 14:00
ハン・トンヒョン(本作プロジェクトアドバイザー・レクチャラー / 日本映画大学)

会場

THEATRE E9 KYOTO

京都市南区東九条南河原町9-1

料金

一般:2,000円 学生:1,000円
※当日券は+500円
自由席 / 日時指定 / 税込
※学生は当日受付にて証明書の提示が必要。

チケット

THEATRE E9 KYOTO
WEB:https://askyoto.or.jp/e9/ticket/20210211
TEL:075-661-2515(10:00~18:00)

『可傷的な歴史(ロードムービー)』クレジット

監督 / プロデューサー / 編集

田中功起

出演

鄭優希 / クリスチャン・ホファー

プロジェクトアドバイザー / レクチャラ̶

ハン・トンヒョン

レクチャラー

⻄崎雅夫(社団法人ほうせんか)

法律アドバイザー

明戸隆浩

事前勉強会レクチャラ̶

山本唯人(東京大空襲・戦災資料センター)

撮影監督

⻘山真也

製作

ミグロ現代美術館

助成

アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)

主催

THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)
『映像でつづる東九条2020-2021』関連企画

田中功起(たなか・こおき)

アーティスト。参加した展覧会にあいちトリエンナーレ(2019)、ミュンスター彫刻プロジェクト(2017)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2017)などがある。2015年にドイツ銀行によるアーティスト・オブ・ザ・イヤー、2013年に参加したヴェネチア・ビエンナーレでは日本館が特別表彰を受ける。主な著作、作品集に『VulnerableHistories (AnArchive)』(JRP|Ringier、2018年)、『PrecariousPractice』(Hatje Cantz、2015年)、『必然的にばらばらなものが生まれてくる』(武蔵野美術大学出版局、2014年)など。近年のテキストを集めた『リフレクティブ・ノート(選集)(アートソンジェ、美術出版社)が2021年1月に出版される。

WRITER

RECENT POST

COLUMN
編集部員が選ぶ2022年ベスト記事
REVIEW
Curve『till the end(10th Anniversary Edition)』 R…
INTERVIEW
流れる日々の中で生まれる、渚のベートーベンズの音楽
COLUMN
Indies New Encounters Playlist 2022.01
COLUMN
編集部員が選ぶ2021年ベスト記事
COLUMN
Indies New Encounters Playlist 2021.11
COLUMN
たなからルーツ Shelf_02 - ナルコレプシン 坂田直樹 –
REVIEW
CIFIKA – HANA
INTERVIEW
みんなの劇場が無い‼ 私たちが自分の言葉で語るための場所づくりを〈THEATRE E9 KYOTO〉…
ART
COLUMN
たなからルーツ Shelf_01 - TheStoneThatBurns アベヒロキ –…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:小倉 陽子】CIFIKA,TENGGER:K-POPを拡張してい…
INTERVIEW
確かさの揺らぐ現代における、孤独と共存の媒介者-烏丸ストロークロック『まほろばの景2020』インタビ…
ART
REPORT
小倉陽子が見たボロフェスタ2019 2日目
REPORT
小倉陽子が見たボロフェスタ2019 1日目
INTERVIEW
ZOOZ始動インタビュー -2002年の音楽が繋ぐ、これまでのバンド活動と現在。-
INTERVIEW
諦めにも似た音楽への深い愛 – NYAI『HAO』リリースインタビュー –
REPORT
【小倉陽子の見たボロフェスタ2018 / Day3】MONO NO AWARE / 清竜人 / 在日…
REPORT
【小倉陽子の見たボロフェスタ2018 Day2】ハンブレッダーズ / Dos Monos / tri…
REVIEW
NYAI – OUT PITCH
REVIEW
HO17 – HOLIDAYS OF SEVENTEEN
INTERVIEW
1+1+1+1に成ったthe coopeezの無限大~京都ワンマンライブ直前インタビュー
INTERVIEW
Post Modern Team 3rdアルバム『COME ON OVER NOW』リリースインタビ…
REPORT
【小倉陽子の見たボロフェスタ2017 / Day3】東狂アルゴリズム / OGRE YOU ASSH…
REPORT
【小倉陽子の見たボロフェスタ2017 / Day2】接近!UFOズ / シンガロンパレード / H …
REPORT
今を生々しく鳴らす3組の、美しい物語の途中~『in-phase KYOTO』 @ 京都GROWLY …
COLUMN
俺の人生、三種の神器 -小倉陽子 ③続ける人たち-
INTERVIEW
my letter×スーパーノアリリース対談「バンドって、辞めるほどのことじゃない」- 京都で活動を…
REPORT
ジャンルという言葉を簡単に越境するWhy?という体験 WHY? Japan Tour @UrBANG…
INTERVIEW
【実は知らないお仕事図鑑】P2:謎クリエイター 吉村さおり(SCRAP)
SPOT
こころ
COLUMN
俺の人生、三種の神器 -小倉陽子 ②舞台に立つ-
COLUMN
俺の人生、三種の神器 -小倉陽子 ①家ガール-
REPORT
企画屋UTAGEが冬の京都にぶち込む「遅れてきた夏フェス」ことパニックバカンスとは?イベントメンバー…
REPORT
【小倉陽子の見たボロフェスタ2016 / Day2】Limited Express (has gon…
REPORT
【小倉陽子の見たボロフェスタ2016 / Day1】台風クラブ / あっこゴリラ / CHAI / …
REPORT
『ウサギバニーボーイさん』祝賀会 @ 京都GROWLY ライブレポート
INTERVIEW
ボロフェスタ15周年記念特集・『ボロフェスタってなんなんだ?』 – ニーハオ!編 …

LATEST POSTS

REPORT
自由のために、自由に踊れ!日常を生きるために生まれた祭り – 京都学生狂奏祭2024

寮生の想いから生まれたイベント『京都学生狂奏祭』 …

COLUMN
【2024年10月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

COLUMN
【2024年10月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…

REVIEW
Tomato Ketchup Boys『The Second Escape From The Summer Darkness』―ウェットで甘酸っぱく、刹那的なエモーションが駆け抜ける

静岡県浜松市出身の3ピースバンドTomato Ketchup Boysが2ndアルバム『The Se…

INTERVIEW
地元愛と刺激に満ちた音楽祭 – ボギーが語るボロフェスタの魅力と自身のライブの見せ方

今年で23年目になる京都の音楽フェス『ボロフェスタ』。毎回、ロック、ポップ、アヴァンギャルド、アイド…