低温多湿な沖縄産・世界基準のポップミュージック
メランコリックなほどに湿り気を帯びていながら、冷たい金属的な質感を感じる。HOMEの楽曲を一言で表すならそんな感じ。「沖縄出身バンド」という枕詞で頭に浮かぶステレオタイプをいい意味で裏切ってくれる音楽だ。
HOMEは、2020年に結成されたsei.(Vo)、o-png(PC) 、shun(Gt)による3人組バンド。2023年は8月2日に1stシングル“Lucy”を、その後も“常時”、“Maybe I should die with you”と立て続けに音源を送り出す、怒涛の活動ペースだった。そして12月13日、初のEP『HOME EP』をリリース。1年の最後を締めくくる、シーンへの名刺代わりとなる1枚だ。
収録全5曲のうち3曲が先行シングルで、セルフタイトル。このことからもわかる通り、コンセプトを軸に練り上げるというよりは、ライブを凝縮しバンドとしての姿形を聴く者にイメージさせること、体感させることに重きを置いている。
まず特筆したいのはsei.のフロントマンとしての圧倒的な存在感だ。アンニュイで、ローテンションでありながら、ダンサナブルな曲調の中で畳みかけてくるパワーも兼ね備えている。ステージでは丸刈りで強面な風貌と歌声のギャップやパフォーマンスも相まって見るものに強烈なインパクトを残す。改めて音源で聴くと、その存在感は純粋にヴォーカリストとしての才覚によるところが大きいことを再認識する。
そのsei.の伸びがある高い声質が、澄んだギターの音色や80s風の機械的な音と調和し、華やかでありながらどこかノスタルジーな味わいを残している。あえて引き合いに出すとすればFuture IslandsやWild Nothing、Neon Indianなどが浮かぶ。2010年代から現在のインディーミュージックシーンを彩ってきたシンセポップ、チルウェイヴに通じるサウンドだ。
疾走感あるオープニングナンバー“Lucy”、ドラムマシンの無機質に刻みつけるリズムと物憂げな歌メロやシュールな世界観が80sポストパンクを思わせる“常時”、打って変わってチルでダウンテンポな“lululu”。いずれも振り幅を持ちつつ、HOMEが鳴らす唯一無二のサウンドを堪能できる。
この1枚をきっかけに大型フェスや対バンイベントに出演する彼らのライブに初見のリスナーも足を運ぶだろう。それだけの説得力がある作品なのは間違いない。曲を知っているかいないかに関係なく、ここに挙げたようなバンドの持つ温度感や世界観はリスナーの感性に突き刺さるはずだからだ。今のHOMEが持つ音を受け止めたうえで、今後どういった活動を展開していくのか、楽しみにしたい。
HOME EP
アーティスト:HOME
仕様:デジタル
発売:2023年12月13日
収録曲
1. Lucy
2. 常時
3. 愛のうた
4. Maybe I should die with you
5. lululu
配信はこちら
HOME
2020年結成、沖縄在住のsei.(Vo)、o-png(PC) 、shun(Gt)による3人組。現行のインディーミュージックやブラックミュージックともリンクしたサウンドでありながらどこか歌謡曲を思わせる普遍的なポップさが特徴。DYGLや鋭児との共演も話題となった。
Instagram: https://www.instagram.com/home_band_
X(旧Twitter): https://www.x.com/HOME_BAND_
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後ろ向きな音楽、胡散臭いメガネ、あまり役に立たない文章を愛でています。旅の目的地は、何もないけれど何かが起こりそうな場所。
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