REPORT

『言志の学校』第三回レポート -デザインとは? 印刷って何? –

2限目:「印刷」はこんなに面白い! ――印刷 古屋 光一(レトロ印刷 JAM / 創設者)

講師:古屋 光一(ふるや・こういち)

講師:古屋 光一(ふるや・こういち)

1959年生まれ。台湾在住。孔版印刷をこよなく愛する、レトロ印刷JAM創設者の一人。2016年3月、台北に海外初となる「台湾レトロ印刷JAM」をオープン。2018年4月から7月には、スリマッカおじさんとして自ら真っ赤に塗装をほどこしたスリマッカーで日本各地をまわりシルクスクリーンの楽しさを伝える活動も行う。もうすぐ還暦をむかえる。

印刷の歴史:印刷には4つの種類がある?!

講師:古屋 光一(ふるや・こういち)

ひとくちに「印刷」といってもその種類はさまざま。なんと4つの種類があります。みなさんはご存知でしたでしょうか? 平版(へいはん)印刷、凸版印刷、凹版印刷、そして孔版印刷の4種類があります。まずはこの4つの印刷方法について印刷のプロである古屋さんが直々に解説してくれました。

①平版印刷

オフセット印刷とも呼ばれる印刷方法。
現在最も多くの紙媒体で採用されています。水と油の反発関係を利用することで版にインキをつけていきます。

②凸版印刷

ハンコのような凹凸のある版の凸部分にインキをつける方法。所謂「活版印刷」ですね。日本では昭和30年頃までの主流がこの凸版印刷。近年ではわざと圧をかけ過ぎることで、へこませることがブームにもなっているそう。

③凹版印刷

凹んだ溝の部分にインキを擦り込んで、その上に紙を置いて圧をかけて複製する印刷方法のことです。

精密で綺麗な反面、版の複製が難しいというデメリットも。そうした理由でお札の印刷には凹版印刷が採用されています。

また別名グラビア印刷とも。そうです、あの「グラビア」です。雑誌巻頭のグラビア印刷カラーページによくセクシーなポートレートが掲載されることから、この種の写真が「グラビア写真」と呼ばれるようになったという経緯があります。

④孔版印刷

そして、レトロ印刷さんが採用しているのがこの孔版印刷。
リソグラフという機械により版に穴(孔)を空けて、その版にインクを通していくスタイルのことです。あの「プリントゴッコ」も孔版印刷の一種。シルクスクリーン印刷とも呼ばれています。

この孔版印刷が出来る印刷所は世界で200か所ほど。どこもZINE をつくっているスタジオなんだとか。

レトロ印刷の語る、「孔版印刷」の世界

そして最後はレトロ印刷さんが孔版印刷の特徴と、その面白さについて語ってくれます。

紙がなくても、誰でも気軽に文章が発信できる時代なのに、言志の学校の受講生は敢えてフリーペーパー・ZINE を作ろうとしています。もしかすると紙の存在感や、実物の安心感、あるいは紙の面白さを重視しているのではないでしょうか? だとすればレトロ印刷がピッタリかもしれません。独特の質感の紙と、印刷してみるまでどうなるか分からない遊び心が作品の魅力に磨きをかけてくれます。

①版がズレる、②色がかすれる、③色と色が混じる
この3点がレトロ印刷の特徴。普通の印刷の世界なら “失敗” とされてしまうかもしれない不確実性を、敢えてデザイン性に転化することで孔版印刷の面白さが引きたっています。

実際に手に取ってみよう!

レトロ印刷 JAM

座学も良いけど、紙のプロダクトはやっぱり手に取ってみないと。レトロ印刷さんが用意してくれたサンプルが長テーブルにズラリと並びます。ちょっとした紙のデパート状態。実際のフリーペーパーやZINE を前にして受講生全員が目を爛々と輝かせます。良い意味での「浮わついた」雰囲気の高揚感が会場内を包みます。

 

「これはどういう手法ですか?」
「これも孔版印刷でできるんですか?」

 

などと詳しくプロに話をきくことができる場所はかなり貴重だったのではないでしょうか。紙選びと印刷の面からもクリエーションの妄想の幅が広がりまくります。

次は実際に……!

水迫さん・後藤さんにデザインのノウハウを、レトロ印刷の古屋さんには印刷の種類と孔版印刷の魅力を教わったところで講義は終了。

今回の講義で共通して言えるのは「形にするって難しいけど、やっぱりそれが一番嬉しいし心動かされる」ということです。

さて、残るは制作の追い込みのみとなりました。さまざまなZINE のアイディアが生まれ育った言志の学校。最後に全員巣立つことができるのか?! 受講生は期待と不安が入り混じる原稿を胸に抱えて帰路につきました。

四回レポート ~発表! こんな本作りました!~ はコチラ!

WRITER

RECENT POST

COLUMN
【脇役で見る映画】親の心もこの心も僕たちだけが知ってる『イップマン 完結』
COLUMN
【脇役で見る映画】ニール、かしゆか、天沢聖司『TENET』
COLUMN
【脇役で見る映画】 頼むから決めてくれ!『ショーシャンクの空に』
COLUMN
【脇役で見る映画】 役割をひとに頼らず生きていく『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
COLUMN
【脇役で見る映画】「エピローグ」:ローディーは部活をやめる
COLUMN
【脇役で見る映画】『ウルフ・オブ・ウォールストリート』 せめて浮気でおってよね
REPORT
意味が溶解する水槽 SPEKTRA主催 『INTER+』 レポート
COLUMN
【脇役で見る映画】『トイ・ストーリー3』 バズよりもウッディよりも何よりも、アンディ母の育児の終わり
REPORT
集めて、分解して、理解する。デザイナーの後藤多美さんに聞くデザインの第一歩 言志の学校第2期レポート…
COLUMN
【脇役で見る映画】『アイアンマン』シリーズ スタークに寄り添うポッツ、ふしめのひ! 今日はにげきれ…
REPORT
「見つけてもらうために!」大垣書店の大垣 守可さんに聞く、流通視点の本の魅力 言志の学校第2期レポー…
REPORT
紙とインキも表現のうち!修美社の山下昌毅さんに聞く印刷の奥深さと面白さ 言志の学校第2期レポート② …
REPORT
超絶技巧は必要ない!物件ファンの森岡友樹さんに聞く心を打つ文章を書くための思考のステップ 言志の学校…
COLUMN
【脇役で見る映画】『愛がなんだ』 テルコより大切なのは仲原くん。赤いメガネのボスによろしく
INTERVIEW
第七藝術劇場 / シアターセブン
SPOT
修美社
COLUMN
【脇役で見る映画】『イット・フォローズ』 あの娘にはお願いだからセックスを他の誰かとしてほしくない
REPORT
言志の学校 第1期 まとめ
COLUMN
アンテナ的!ベストムービー 2018
COLUMN
【まとめ】編集部員が選ぶ2018年ベスト記事
REPORT
『言志の学校』第四回レポート ~発表! こんな本作りました!~
REPORT
『言志の学校』第二回レポート – 書くって?編集するって?文鳥社の2人に聞く –
COLUMN
もうダッシュできないオトナへ。映画『高崎グラフィティ。』が切り取った大人と子供のグラデーション。
REPORT
こんなフリペのアイディア出揃いました!TAKE OUT!! vol.2 レポート
INTERVIEW
『きみの鳥はうたえる』三宅唱監督インタビュー 映画の仕事は「見つめること」
REPORT
『ガザの美容室』特別トーク付上映。ガザ地区の今って?
COLUMN
『軽い男じゃないのよ』がレコメンド!『ズートピア』『ファインディング・ドリー』の後はコレ!「差別と戦…
COLUMN
千早の進路間違ってない?!組織運営ってそういうことか? 映画『ちはやふる 結び』を考察 面白かったけ…
COLUMN
アンテナ川合が選ぶ!4月に観ときたい映画!
REPORT
関西の映画シーンの今後は?「地域から次世代映画を考える」レポート
REPORT
「モテるフリーペーパー」大盛況で終宴。結局どうだった? All About TAKE OUT!!
COLUMN
誰だってマチルダは好きだ、僕だってレオンになりたい(『レオン』再上映へ寄せて)
COLUMN
アンテナ的! ベストムービー2017 (byマグナム本田・川合裕之)
REPORT
【川合裕之の見たボロフェスタ2017 /Day2 】 〜ステージの上も下も中も外も、全部ぜんぶお祭り…
REPORT
第五回 文学フリマ 大阪に行ってきました
INTERVIEW
「この作品のあるべき姿」映画『望郷』大東駿介・菊地健夫監督へインタビュー
REPORT
映画『獣道– Love & Other Cults』京都みなみ会館 舞台挨拶
INTERVIEW
学生映画って何?! 京都国際学生映画祭×関西学生映画祭 関係者に聞く!

LATEST POSTS

INTERVIEW
あの頃、下北沢Zemでリトル・ウォルターを聴いていた ー武田信輝、永田純、岡地曙裕が語る、1975年のブルース

吾妻光良& The Swinging BoppersをはじめブレイクダウンやBO GUMBOS、ペン…

COLUMN
【2024年11月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

REPORT
これまでの軌跡をつなぎ、次なる序曲へ – 『京都音楽博覧会2024』Day2ライブレポート

晴天の霹靂とはこのことだろう。オープニングのアナウンスで『京都音博』の司会を務めるFM COCOLO…

REPORT
壁も境目もない音楽の旅へ‐『京都音楽博覧会2024』Day1ライブレポート

10月12日(土)13日(日)、晴れわたる青空が広がる〈梅小路公園〉にて、昨年に引き続き2日間にわた…

REPORT
自由のために、自由に踊れ!日常を生きるために生まれた祭り – 京都学生狂奏祭2024

寮生の想いから生まれたイベント『京都学生狂奏祭』 …