第七藝術劇場 / シアターセブン
阪急電車に揺られて終点梅田で降りる――のではなく、その手前の十三で降りたことはありますか?乗り換えではなく経由するのではなく、目的地として。大阪市は淀川区、十三の奥まったビル群の中に社会派のドキュメンタリーに強いミニシアターがあるのです。
第七藝術劇場・ シアターセブンの番組編成(*)を担当する小坂誠さんにお話を伺いました。「映画見たいなら普通は梅田にいきますから」――そう自虐交じりに笑う小坂さんが、腹心を布いてミニシアターのこれからを語ってくれました。「映画館」という場所は今後どうなっていくのか、世の中が求める面白いものとは一体なんなのだろうか、そもそも面白いとは何なのか。変革期にあるシーンの中で揺れ動く心境を伺いました。
(*)番組編成:劇場でかける映画のラインナップを決めて配給とやり取りをする仕事
第七藝術劇場 / シアターセブン
住所 | 〒532-0024 大阪府大阪市淀川区十三本町1丁目7−27 サンポードシティ |
---|---|
お問い合わせ | 06-6302-2073 |
シアターセブン | |
第七藝術劇場 |
ドキュメンタリーの第七藝術劇場。きっかけは『靖国 YASUKUNI』
まずはこれまでの劇場の歩みを簡単に教えてください。
今の経営母体である有限会社第七藝術劇場は2002年よりはじまっています。それ以前も第七藝術劇場という名称で別の会社が運営していましたのでもう20年以上の歴史がありますね。1スクリーンの所謂「ミニシアター」という形でずっと続いています。ミニシアターの中では長い方だと思います。このビルの5Fにあるシアターセブンは2011年に開館しました。
経営的に厳しいタイミングもあって休館せざるを得ない状況もあったのですが、それでも存続できたのは誰か一人でも「やろう」という人がいたからでしょうね。映画への愛もそうですが、大阪十三の町を盛り上げようという想いもあって、ずっとこの場所でやっています。
第七藝術劇場(以下「七藝」)もシアターセブンも社会派の作品を多く上映しているようなイメージがありますが、その理由を教えてください。
はい、両館ともに比較的、社会派の、特にドキュメンタリーが多いですが、もちろんそればかりではなく幅広いジャンルの作品を上映しています。2008年に公開された『靖国 YASUKUNI』という映画を上映したことで「社会派」を流す劇場として全国的に認知されるようになったと聞いています。
ほかの映画館では流せなかったんですよ。内容的にセンシティブだし、右翼の街宣車とかが来てしまえば近隣に迷惑になってしまうので。なぜそれでも上映に踏み切ったのか?は当時の人間でないので分かりかねますが、やはりどうしても流したかったのでしょう。ただ、それを七藝で上映することでヒットしたんですよね。そうでなくとも当時はドキュメンタリー映画というものは今ほど浸透していなかった時代というのもヒットした理由のひとつです。
これをきっかけに、今でも七藝は社会派映画やドキュメンタリー映画を主軸にラインナップを揃えて上映しています。
2011年に七藝の1階下のフロアにシアターセブンを開館されましたが、なぜシアターセブンが必要だったのでしょうか?
映画を見たあとにトークショーを催したり、お客さま同士で交流を深められるような場所をつくりたくてシアターセブンが生まれました。
やっぱりスクリーン1枚だけの劇場でやっていくのは経営的にも大変で。いま周りを見渡してみても実はどのミニシアターさんも大抵はスクリーンを複数もっているんですよね。出町座は2スクリーンに加えて書店のCAVABOOKSや、カフェの出町座のソコに加えて、イベントスペースになる教室があります。元町映画館は2階にイベントルームがありますし、シネ・ヌーヴォも2階にシネ・ヌーヴォXがあります。みなみ会館は1スクリーンでしたが、リニューアルして今度は3スクリーンになりますよね。
たしかに、言われてみれば1スクリーンのミニシアターはもう珍しいですね。
どこの劇場も「映画を上映して終わり」では厳しくなってきたんですよ。映画興行のあり方やお客さまのニーズが大きく変わっていっている中、若い人はとくに映画は年に数回劇場に来てくれれば良い方で。なので映画以外にもいろいろな付加価値をつけて提供しないと、という流れができてきました。そういう工夫がないと特に若い人には気にかけてもらえないので。特にウチなんかは、シネコンで流すような普通のラインナップでやっていたら「梅田でいい」(*)となってしまうので。
*:十三と梅田は阪急線で2駅の距離。約3分。
そこで七藝も映画を見た後にトークをしたり、お客さま同士の交流会をやったり、小さなスペースでもちょっとした作品を上映したり、そういった場所を作りたいと思いました。ただ、うちは広さが限られています。ロビーでイベントをするわけにもかないので、別フロアでシアターセブンを作るに至りました。
NEXT PAGE
You May Also Like
WRITER
-
95年生。映画ライター。最近大人になって手土産をおぼえました。
OTHER POSTS
「フラスコ飯店」というwebの店長をしています。