ミュージシャンも主役の映画祭『MOOSIC LAB 2017』
映像のための音楽と、音楽のための映像。両者が寄り添って高い次元に昇華された映画作品を体感するまたとないチャンスです。
Moosic Lab 2017, 通称「ムーラボ」が大阪でも開催。12月23日(土)より大阪十三のシアターセブンと第七藝術劇場の両劇場にて横断的に各作品が上映されております。
同映画祭はミュージシャンと映像作家がタッグを組んだ映画作品を上映するイベント。洒脱で洗練された雰囲気を醸す映画祭ですが、その歴史は決して浅くなく今年でなんと6年目を迎えます。映画好きはもちろん音楽好きも大注目のイベントです。
アンテナ的に注目したいのは『左京区ガールズブラボー』と『ぱん。』の2作。以下、ライター川合が両作品の簡単なレビューを残しました。何かの参考になれば幸いです。
『左京区ガールズブラボー』
(あらすじ)
大学生となってもヒナコとはなこは相変わらず親友であった。夏休みになってもそれは変わらない。京都左京区で繰り返される二人の日々。(トランスポップ、鴨川、レコードショップetc…)レコードをヒナコは買うがプレーヤーを持っていないためはなこの部屋で聞いている。ある日彼女らは京都メトロのオールナイトイベントに行くことになる。Homecomingsのジャケットに描かれた「Have to look for the thing which shold be done」の文字を眺めながら彼女らは「なにかやるべきこと」を見つけられるのだろうか?
監督は今回タッグを組んだHomecomingsのPVはもちろんのこと、ほかにもSeuss、she said、asayake no ato、ベランダなどのPVを手掛ける篠田知典。京都の街並みに融け込むHomcomingsの上品なサウンドは主演の二人を時に優しく時に辛辣に包み込みます。単純だけど複雑な、複雑だけれども単純な二人のドラマ。一度没入すると簡単には帰ってこれません。
英詩に字幕を付けてくれる親切さからも篠田監督がいかに「音楽」と真摯に向き合っているかが垣間見れます。
『ぱん。』
(あらすじ)
パン屋の朝は早い。早朝アルバイトの小麦は寝坊をし遅れてバイトに向かう。 パン屋で働いているのは意地の悪い店長とその妻、アルバイトのインド人留学生とパートのおばちゃん。小麦はあの扉を開いてしまう。 その扉の向こうには…。そこから始まる小麦による復讐劇。パンで世界を救うお話。
腕力とテクニックの散りばめられたこの怒涛の15分は短編部門グランプリを堂々獲得するに相応しいと感嘆を禁じえません。監督は阪元裕吾・辻凪子の両名、参加したアーティストは京都のインディーバンドのフライデイフライデー。
その透明感のある演奏が辻凪子の軽やかな演技と混ざり合います。そんな牧歌的な音楽、映像とは一見マッチしないようなハイスピードで荒々しい物語ですが、何故かそれが心地良い。不安定に攻めたジェンガほど高く高く積み上がり、高いジェンガほど実は安定感を秘めている、というわけです。
音楽は脇役じゃないし、映像は蛇足じゃない。それぞれの芸術性を一度に浴びることのできるMOOSIC LAB。今回の大阪開催では『ぱん。』の阪元裕吾、辻凪子監督コンビと女優の林奈緒美による新作『クレイジーアイランド』の制作会議を公開で行うトークショーや監督や俳優など各関係者の集う「ムーラボ忘年会」などの特別プログラムが用意されています。
軽い気持ちでふらりと鑑賞してみてください。ずっしりと感傷を引っ提げて帰路につくことになるはずです。
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WRITER
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95年生。映画ライター。最近大人になって手土産をおぼえました。
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「フラスコ飯店」というwebの店長をしています。