INTERVIEW

the coopeez 3rdアルバム『rucksack』発売記念、全曲解説インタビュー 前編

MUSIC 2015.08.18 Written By 岡安 いつ美

京都には10年以上もDIYで独自の路線を走り続けてきた、the coopeezというポップネスモンスターがいます。そんな彼らがつい先日、自主レーベルchadultから3rdアルバム『rucksack』をリリースしました。

 

唯一無二の彼らの曲がどのように生まれてきて、どのような思いを込めているのか?またメンバー間の関係や彼らが目指す場所とは一体どこなのか?残念ながらBa.山本は不参加となりましたが、その分までVo/Gt.藤本、Gt.小川、Dr.森田に沢山語っていただきました。何故今the coopeezなのか、ファンだけでなくバンドマンにも読んでもらいたいインタビューです。

嫌われてもいいから選ばないといけない時がきて

──

3rdアルバムのリリースおめでとうございます。1stが2012年、2ndが昨年、リリースの間隔が段々短くなってきていますね。意図はあるんでしょうか?

藤本

生き急いでるんですよ、いつ死ぬかわからないから(笑)早く出そうというか、できたら年一くらいで出せたらいいね、みたいな話は前からメンバーでしていて。

──

2枚目のリリースをした時のツアーですでに聞いた曲も今回のアルバムにはありますね。

小川

そうですね、”イチカ&バチカ”とか。

──

早速なのですが、『rucksack』について話をお聞かせください。まず気になるのが1stアルバムも2ndアルバムも収録されているイントロダクション。今回も例に漏れず入っていますね。

藤本

それは趣味ですね。目次的なものをやりたくて、あんまりそれっぽくならなかったですけど……。誰かに歌ってもらおうかとか、ふざけてみようかとか色々とイントロダクション案はいくつかあって。結局アルバムの本編である”イチカ&バチカ”へ繋がるのが面白いよねってところに落ち着いて僕が作りました。

小川

僕ら作っていないんですよ。

藤本

全部僕がガレージバンド(※打ち込みのDAWソフト)で作ったんです。2ndアルバムのイントロダクションが掛け合いで、また同じ感じになるのは違うなと思って今回の形になりました。なんちゃって打ち込みみたいな感じで作ったものをメンバーに聞かせたらOKが出て……「え?」みたいな(笑)

──

時間はかかったんでしょうか?

小川

一晩で作ってたよね?

藤本

ざっくりとした形は作って、「あれOK出た……」みたいになって。そこからまたいろいろ足していきました。

──

お2人は聞いた時どう思いましたか?

小川

格好いいと思いましたよ。

森田

今日アルバムをもう1回聞き直してたんですよ。アルバムの曲目やったりフレーズが入っているんですけど、今まで聞こえていなかったアルバムのいろんな曲名も今日ようやく聞こえて、「聞こえた!」ってなりました(笑)

──

メンバーさんも気付かないくらいに仕込んでいるんですね(笑)そう言えば今回映画のタイトルからの引用が多いことの理由をお聞かせいただきたいです。

藤本

みなさん言われるんですけど本当にたまたまです。レコーディングしていた曲の中に”ダイハード”と”未知との遭遇”とか映画のタイトル多いなって話になって、後半でレコーディングした曲のタイトルはあえて若干映画のタイトルを使ったものはありますけどね。

──

映画はよく見られるんですか?

アメリカのその辺の映画しか見ないですね。でも未知との遭遇は見たことないです。

森田

えー!そうなんだ……(笑)

藤本

あれはもう映画がどうこうとか言うんじゃなくて、単純にその映画のタイトルだけ知ってて付けた。曲名が思いつかなかったら映画のタイトルへ逃げるっていう癖が今回……。

──

曲を作る時はタイトルは後回しなんでしょうか?

藤本

メロディがポンッて出るパターンと、こんなの作りたいってリズムから作るパターンと、言葉から出るパターンと3種類くらいですね。多い割合で言えば言葉ですけど、様々です。

──

小川さんと森田さんはどのパターンが作りやすいなどはあるんですか?

藤本

あ、僕は曲を断片で持って行かないんですよ。こんなんどうですか?ってデモを作ってから持って行くんで、出来上がりまでの経緯をわかっている人は僕しかいないですね。

小川

基本的に全部入っていて出来上がったものをもらいます。

森田

そのあとは色々、構成やニュアンスだけ残して組み替えたり自分なりに変えたりして。

──

それは曲ができるまでが早そうですね。そうしましたら早速本編に入っていきたいと思います。本編1曲目は”イチカ&バチカ”ですね。これはいつ頃にできたんでしょうか?

藤本

デモができたのはかなり前ですよ。あ、多分1年前くらいかもしれないですね、これの歌詞のきっかけができたのはそれくらいです。

──

どのようなきっかけでしょうか?

藤本

もう、「嫌や!」ってなった。嫌われてもいいから選ばないといけない時がきて、その時に歌詞ができて、曲調は……ブッチャーズの影響ですね。

森田

そうなんだ!全然わからなかった!(笑)

──

前回のツアー中くらいの時期ですね。

藤本

そうですね、1年前か、更にその1年前か……定期的にくるんですよ。そういうモードが。その波の時にできたんで。

──

お2人はこの曲を作った時の印象はいかがですか?

小川

この曲はギターに関しては結構デモに近い感じでやっていて、ニュアンスの部分だけ触ってて……あ、この辺とか。展開がスリリングだからそれに沿うような形で作りましたね。

この曲は私がthe coopeezに入る前に好きで見に行ってた時代のthe coopeezの曲みたいで、とても好きな曲です。場面がパンパン変わるイメージがあったバンドだけど、私が入ってからとか最近はストレートにいく曲が多かったから、この曲に関しては展開が多くて、とても鍛わりました(笑)

──

ありがとうございます。次はタイトル曲ですね。何故”リュックサック”がタイトル曲になったのでしょうか?

藤本

これは聡君(Ba.山本)推しですね。聡君がこの曲は良いって言っていて、アルバムタイトルは他に何個か候補あったんですけど、結局リュックサックがいいという声が多くて、じゃあそれでいいかと。

──

他にどんなものがあったんですか?

藤本

候補は4~5個あって。なんだったかな……それこそ『newbalance』から繋がってた気がする。「ナイスチョイス」だっけ?

小川

そう、「ナイスチョイス」!(笑)

藤本

あ、携帯に候補のタイトルありました。「ミックスセンス」、あの映画のシックスセンスから取って考えたけどこれは速攻でなしになって。あとは「ラストチャンス」って案もあったな。「ナイスチョイス」と、これも反応がなかったけど「ソウルトレイン」。僕はJames Brownに憧れているんですけど、あまりみんなピンとこなかったみたいで。

森田

私「ナイスチョイス」がいいって言ったんですけど、多数決で『リュックサック』に決まりました。

──

いつも多数決でタイトルは決めているんでしょうか?

この曲はできてからしばらくタイトルが付いていなくて、デモのデータを見たら“エスケープ”って書いてたんですよ。でも“エスケープ”ってタイトルがしっくりきていなくて。この曲のサビが象徴しているんですけど、今までの人生の総括的な曲を作ってみたいっていうのがあって、どうしようかなって思った時に、「背負うしリュックか…」となってこのタイトルになりました。

──

「背負って行く」「連れて行く」というのはこれまでの人生への決意を感じます。

そんなことメンバーに言っていたら、「そういうことか、リュックサックめっちゃええな!」ってベースの聡君からメールが来て(笑)「なんかいいな、なるほどな!そのタイトルを聞いてなるほどなって思った!」って。なんか急にくるんですよ、あの人。良い!ってなった瞬間はめっちゃ良い!ってなるし、それまでの瞬間は全然ですね。”イチカ&バチカ”の時もデモをすぐ聞かせていたんですけど、反応がなくて……ある瞬間から急に「いまさらやけど”イチカ&バチカ”めっちゃええな!これもうアレンジもこのままでええやん!めっちゃええな!」ってたくさんメールが来て。

──

それは個人的にメールが来るんですか?バンド全体の連絡網ですか?

藤本

僕その時LINEをやっていなくて、個人ですね。一発のメールで長文で来るとかじゃなくて、ちっちゃいのが連続で来るんですよ(笑)「ナニナニはいいな!」「ちなみにナニナニナニナニ!」「ナニナニナニナニ!」みたいに。性格にムラがあるんであの人。なにかしっくりいったんでしょうね。今回は選曲もわりかしメンバーに任せていました。

──

今回選ばれなかった曲もたくさんあるんでしょうか?

藤本

3~40曲ありますね、デモだけでいうと。だからもうどうしようみたいな。

森田

増え続ける一方。

藤本

最近のやつをやると今までの溜めてたやつどうなるんだろうみたいな。

──

8時間耐久ワンマンくらいはできそうですね。

藤本

できたらいいんですけどね、サンボマスターみたいな(笑)メンバーの消化能力より今のところは僕の方が上回っていますね。僕が作る方が早いんでプレッシャーかけてるんですけど。

森田

消化能力を早くしないと。

藤本

デモができたら速攻で送るんですよ。

──

バンドとしては1曲はどれくらいのスピードでできるんですか?

藤本

結構かかりますね。

小川

“リュックサック”は結構かかってます。

森田

かかりましたねえ。『GOLDENTIME』や『newbalance』の時はここまでにゆっくりやっていこうかって感じでした。今回のレコーディングはレコーディングの日を決めて、そこに向かってここまでに何曲仕上げるっていうケツを決めながら作ったので、早く作らなきゃって焦りましたね。だから今までより一曲あたりの仕上がりは早かったですね。

──

ではアレンジなんかもギリギリまで苦労されたでしょうね?

森田

自分の中でこうと決めたフレーズがあっても、そこまでにスキルを持ってあげるのに時間がなかったです。出来上がりは見えてるんですけど、そこにたどり着くまでに時間がかかった1枚。特に”リュックサック”はそうでした。レコーディングも結構時間使いましたね。

藤本

当日はそんなに使わないんですけど、ギリギリまでは粘ってるんじゃないですかね。

──

小川さんはどうでしたか?

小川

“リュックサック”は、メロのアレンジが苦労していて二転三転して変わってる。リズムが決まってバッキングのギターが決まって、でもリードが思いつかんなあと。いろいろ探しているうちにキーボードでやるのがいいのかなってこれに落ち着いた感じ。

──

イメージ元はあるんでしょうか?

小川

たまたまFlaming Lipsのアルバムを聞いていて音色をそこから。

あんまりみんなハッ!としてないですけど、とんでもなく大事なことに違いないと思っているんです。

──

ありがとうございます。次は”バランスの鬼”ですが、印象的なタイトルですね。

藤本

なんか冒頭の「バラランバララン」というところはThe Whoみたいにしたかったんです。The Who聞いたことなかったけど……暴れ太鼓的なイメージ。「バランスが全て」っていう歌詞は案外アルバムの中で確信をついていることだと思うんですけどね。なんでできたかは覚えてないです。バランスが世の中全てだなってのはずっと思っていて、多分それを曲にしたいなと。曲調がそうなったのは何か理由があったわけではなかったですね。とりあえずめっちゃ言ったんですよ、暴れ太鼓。

森田

私はこの暴れ太鼓って言うよりは、♪ンジャー!ンジャー!みたいなリズムに気に入っていたから毎回「ジャンジャンジャンジャンのところ違う、The Whoみたいにしろ」って言われて。私は来日公演に行ったりとかThe Who聴いたりしてたから、あんな感じなんやそこ!ようやくわかったみたいな。

藤本

The Whoはあんまり聞いたことない(笑)

──

タイトルを見た時に『newbalance』から引き継がれていることがあるのかなと感じたのですが。

藤本

うーん、そういうわけじゃないですね。でもバランスって言葉の重要性は日々感じることなんでそういうことを曲にしたいっていうのはあったんで。

──

この曲はいつ頃完成したんでしょうか?

藤本

この曲はわりと終盤の方ですけど、この曲はある程度主要な曲を録り終わって、こういうハネた感じの曲が欲しいと思って選んだと思います、多分。

──

歌詞に「バランスが僕らの命」だとありますね。

藤本

あんまりみんなハッ!としてないですけど、とんでもなく大事なことに違いないと思っているんです。

森田

私もそう思います。ライブの移動中とか車の中でメンバーといろいろ話すんですけど、藤本さんと話すってなった時には何回かバランスの話になりましたもんね。だからよくわかります。

小川

音楽面でいうと僕らは聞いている音楽がバラバラであったりするから、それをどうバランスを取っていくかとかそういうのもひとつのバランスであるし。『newbalance』は自分たちなりのバランスっていうのを提示した一枚でしたね。まあ今回の『rucksack』もそうではあるんだけど。

藤本

あとこの曲のギターフレーズに関してはThe Strokesの影響を受けてます。

小川

それはね、聞いた時にすぐわかりました、これThe Strokesだって。最初に聞いた時にこういう曲にしたいんだっていうイメージが伝わったから、じゃあこのままいこうと(笑)

──

メンバーに作り手のイメージが伝わるのは大切ですよね。

小川

そうですね、まあそれをどうアレンジするかは僕ら次第なので。

藤本

あれですよ、みんながアレンジで苦しむ前にデモを作るのにひとりで苦しんでいるんで、どうぞみなさん苦しんでくださいって。

──

メンバーには藤本さんからイメージを言語化して伝えられることはないんでしょうか?

藤本

たまに聞かれたらこんな感じって言うんですけど、あんまり具体的な感じで僕はものを言えないんで。でも勝手な解釈が良い風に活きる場合もあるんで、あんまり伝えすぎてもよくないとは思います。「何を残したい?」ってたまに聞かれたりしたら、崩すにあたってもここは残したいってポロポロと言ったりはしますけど、元々の意図は結局曲が良くなるんだったら別になくなってもいいかなみたいな。

後編に続く

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