アジアのフェスってどんな感じ?実際に行ってみた人に聞いてみた〜中国Concrete and Grass / Clockenflap編〜
うまいことセールのタイミングに合わせて航空券を取れば、片道4,000円程度で香港に行ける。関空までの交通費を合わせても京都⇄東京間の新幹線代より、香港に行く方が断然安い。私が去年香港に一人旅をしに行ったのはそんな理由だった。
新しい音楽に出会うために向かうのは、東京である必要はない。せっかくアジアに住んでるのだし、もっとアジアのことを知りたい!そんな思いから、アンテナ副編集長・岡安は2018年11月に香港で開催される『Clockenflap』へと向かうことに。
編集部内部でこの話をしたら、昨年アジアのフェスに行っていて、アジアシーンに注目しているライター・杢谷栄里さんを紹介してもらった。(彼女はアジアフェスシーンについてこんな記事を書いています)今回は、杢谷さんに「中国のフェスは実際にどんな感じ?」というテーマで話を聞いてきました。
私はとある取材で台湾のSKIP SKIP BEN BENと友達になったことがアジアシーンに興味を持つきっかけでした。彼女がやっている音楽が好きで、それが生まれるきっかけとなった国の音楽のことをもっと知りたいと思ったんです。実際に台湾行ってみると、国ごとでフィットする音楽が違うことに気が付いて、それがアジアシーンを探求する原動力になっています。杢谷さんはどんなきっかけでアジアシーンに興味を持ったんですか?
その国に友達がいるから興味持つ人は多いと思いますね。私はアジアの音楽シーンに興味を持ったのはちょうど一年くらい前なんです。元々イギリスのTOY(トーイ)というバンドがすごい好きなんですけど、2016年に3枚目のアルバムを出した時に来日しなかったんですよ。
アジアに目を向けるきっかけになったのが、イギリスのバンド?
そうなんです。岡安さんとは全然違うというか、ちょっときっかけ的には変わってますよね(笑)。彼らは1枚目と2枚目のアルバム出した時はちゃんと来日してたんですけど、タイミングが合わず一度も観に行けてなくて。だから観たい!という気持ちが高まってて。去年、中国と香港、台湾でツアーすることを知ったんです。
なるほど。
本当は台湾の単独公演に行きたかったんですけど、上海公演の日程が、フェスだったけど、すごく都合がよくて。中国本土に行くのもなかなかハードル高いなと思っていたんですが、せっかくだし行ってみようと思って行ったのがConcrete and Grassというフェスでした。私が行った年には日本から出演しているバンドも多くて、SOIL&”PIMP”SESSIONSとかdowny、cero、RADWIMPSも出ていて、「なんかこのフェスなら大丈夫かな」という感覚で行くことを決めて。その時は本当に中国のバンドも、中国のシーンも全然知らなかったんですよね。
ただその日のタイムテーブルが、RINGO DEATHSTARR、cero、TOY、downy、DIIVという流れで……日本でもこんな流れのタイムテーブル組むフェスがなかなかないので「中国のフェス、なんかすごいぞ!?」と思ったのがはまっていったきっかけですかね。
へー!なかなかないきっかけで、意表を突かれた気分です。実際Concrete and Grassに行ってみて、どんなことを感じましたか?
この時TOYを一番の目当てにして行ったんですが、最前まで行けなかったんですよ。中国本土のお客さんはすごく熱心にライブを見る、というのが一番印象に残っています。中国のお客さんはアメリカとか、イギリスの音楽が結構好きなのかな?と思い始めたのもConcrete and Grassに行った時の気づきでした。そのときに、「中国のお客さんって、どんな音楽が好きなのか」っていうことに興味がわいて。中国をはじめとするアジア圏ってシティポップが人気なのかと思いきや、このフェスのようにシューゲイザーやポストパンクメインのフェスがあって、中国本土のシーンが想像以上に多様性があって、シーン自体の面白さを見つけたのが色々と掘り始めたきっかけです。そしてさらに、そのあと香港のClockenflapにも行きまして。
おお!行動力がすごいです。
たまたまPeachのセールで航空券が片道3000円くらいで取れて、交通費で1万円かからないなら行ってもいいかなと思ったんです。
関西からだと、アジアに行くのは東京行くよりも安かったりしますよね。
そうなんですよね。私が行った年のClockenflapにもアジアのバンドがたくさん出ていました。欧米のバンド目当てで行く友人も多いのですが、フィリピン、香港、台湾のバンドとかもいいバンドが出ていて、フェスを通して知るアジアのバンドも多いです。
上海のConcrete and Grassと香港のClockenflap、中国の2つのフェスに行ったかんじですね。この2つの違いって何かありましたか?
まずロケーションは全然違いますよね。Concrete and Grassは郊外に会場があって、中心部から地下鉄で1時間くらい行ったところにあるんです。テニスコートとかがあるようなスポーツ広場なんです。
お客さんの雰囲気も違いますね。Concrete and Grassはマニアックというか、出演者のジャンルが偏っていることもあってお客さんはすごくお行儀がよいです。Clockenflapは端的に言うとパリピっぽい人が多いというか……(笑)その街の歴史的背景も色濃く出ているかとは思うんですが、Clockenflapは欧米の方も多いです。みんなお酒片手に後ろの方でのんびりステージを見ながらフェスを楽しんでいるかんじ。Concrete and Grassにきているお客さんは音楽マニアな人が多いのか、できるだけ前でライブを見続けたいという気概をお客さんから感じました。Concrete and Grassは日本のゴミ分別ボランティアのような人たちがいて、会場もきれいな印象。2日間開催なので、トイレも綺麗でした。トイレットペーパーが切れたりもしていないし。お客さん自体もそこまで多くないので余計ですかね。
お客さんの雰囲気はそういう要素からかなり判断できますよね。
Clockenflapは都市型なので商業フェスの雰囲気があります。スポンサーの名前が会場内のいろんなところで大きく出されています。Concrete and Grassもちゃんとした巨大資本のスポンサーが付いているんですが、でかでかと掲示されてたりはしないんですよね。
Clockenflapは街中で開催されていることもあって、「手ぶらでも行けるフェス」って言われてたりもします。会場内で水を入れるボトルを配っていて、水が給水できる場所もあるんですよ。あとレジャーシートとかも配ってた。
いいですね!日本のフェスでは手ぶらで行く、って発想はあまりないかも。
お金だけ持っていけばいい、みたいな雰囲気はあります。Clockenflapはグッズや飲み物を買うときは現金やカードは直接使えなくて、リストバンドにお金をカードか現金でチャージして支払うので、カードだけ持ってくるとかの工夫次第でさらに荷物は減りますしね。
この前行ったアメリカのフェスでも、お水を汲む場所があったり、リストバンドにお金をチャージすることもできました。フェスのシステムもどんどん進化していきますよね。話を聞いている感じだとClockenflapはアメリカのフェスに雰囲気が似てそう。
中国は電子決済が、アメリカはカード決済が当たり前でお国柄的なシステムがあるのも面白いなーと中国のフェスに行くようになって思いました。
2018年のClockenflapについて
岡安さんは今年Clockenflapに行くんですよね。
はい!すごく楽しみにしています。
去年はKaiser Chiefsや、Temples、Mitskiとかも出てたんですが、Clockenflapに合わせて日本でもツアーをしていたバンドが多かったので、日本の洋楽ファンがわざわざ香港まで行く要因にはなりにくいよなあと思っていました。私はDandy Warhols目当てで行ったんですけど。でも今年は日本に来ないバンドがたくさん出てて……仕事で行けないのが残念です。
今年は14年ぶりにソロアルバムをリリースしたDavid Byrneが出たり、ERYKAH BADUの出演も発表されて、来日しないアーティストがたくさん。11月に来日が決まっているALVVAYSやブルックリンを拠点に活動しているSUNFLOWER BEAN、ロンドンのSHAMEなど、今年のSXSWで数々のショーケースを湧かせていたバンドを押さえているあたりも行く価値あるなあとすごく思っています。日本からもCorneliusやSuchmos、D.A.Nが出たりと日本ではなかなか見れない組み合わせのラインナップになったなと。
ラインナップはもちろんのこと、都市型フェスの利点で香港観光しやすいのもClokenflapの魅力ですね。香港で美味しいご飯を食べて、フェスも楽しむ。そういう楽しみ方をしている人はラインナップ発表される前からチケット押さえている人も多いと思います。
もう一点、Clockenflapの面白いところとしてはアメリカ、イギリス以外のバンドが多数出演するところでしょうか。地元香港は押さえつつ、台湾、マレーシアといったアジア圏のアーティストも出ますし、ヨーロッパはイギリスではなくフランス、オーストリア、去年だとアフリカのアーティストが出たりとか。ただ騒ぐだけじゃもったいないフェスだと思ってます。ここでいいバンドをたくさん知ることができたので。
すごく幅広いですよね。今年はtricot主催のレーベルから音源を出してる地元・香港のマスフォークカルテット雞蛋蒸肉餅 GDJYBやジャイルス・ピーターソンやイギー・ポップから賞賛を得ているこちらも香港のエレクトロ・サイケバンドBLOOD WINE OR HONEYもすごく楽しみです。
昨年見たバンドの中だど香港のDavid Boringというバンドが頭一つ抜けて良い印象でした。この前はRIDEの上海公演にも出演していたり、来年のSXSWにも参加が決まっていて、今注目株だと思います。実は、2015年に日本に来てて、東京だとFever、大阪ではConpassでライヴやっているんです。
北京オリンピック以降、中国本土にライブハウスもいくつか出来てきているみたいで、規制緩和の余波があちこちで見られるようです。地下でこそこそとやっていたバンド達も少しずつ前に表に出てこれる環境ができつつある今、中国は掘りがいのあるシーンがあるのでこれからもっと掘っていいこうと思っています。
杢谷さんは元々UKの音楽が好きで、日本に来ないアーティストはアジアくらいの距離なら観に行っちゃえ!って感じでアジアに飛び立つようになり、そこで知ったアジアシーンの面白さをどんどん知って行ってる途中っていうことですよね。
知っていくと、アメリカでツアーしている中国本土のバンドもたくさんいるんですよね。なんか、悔しかったんです。アメリカの人が先にこのバンドを見つけていて、アジアに住んでいる私が先に見つけられなかったのが。そこからもっとアジアにも目を向けていかないとなーというモードになっています。
私もこの目でClockenflap確かめてきます!
日程 | 2018年11月9日(金) 〜11月11日(日) |
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会場 | 香港 Central Harbourfront |
HP |
WRITER
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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