今この瞬間、このメンバーだからできるパフォーマンスを。劇団ソノノチ最新公演『つながせのひび』への想いとソノノチのこれから。
今のメンバーだからできるパフォーマンスを最大限引き出せるものを。“再演”ではなく“リクリエーション”をする理由。
それでは次に今作について聞いていければと思うのですが、今回三都市公演になった理由は何かあったのでしょうか?
これまで私たちは、愛知までしか行ったことしかなかったんです。ソノノチを立ち上げて5年経ったのと、昔劇団に所属していた人で今東京にいる人も多いということもあり、現在のソノノチの姿を多くの方に観てもらうために、三都市公演を計画しました。あとはうちの俳優である藤原は東京の養成所に通ってたから、彼女にとって東京が第二の故郷なんです。だから凱旋しようって。
5周年だから、大きい興行を打とうとなったんですね。
東京から観に来てくださる方もいますし、今度は自分たちから会いに行ってもいいよね、って気持ちもあって。普段私たち京都でしかやっていなかったので。
今回はリクリエーションということなのですが、台本はまるっと書き換えているんですか?
そうですね、結果的にそうなりました。元々は2年前に岡安さんにも観てもらった初演の『つながせのひび』を、ちょっと直すくらいの気持ちだったんですけどね。
私自身そういうものが見れるのかなと思ってました。
それが今日の稽古観てもらってわかったかと思うんですけど、全然違ったでしょう?
「こんなシーンあったっけ……!?」と実は混乱していました。
再演にしようと思うと、作品としての強度がすごく必要になることがわかったんですよね。本当はマイナーチェンジくらいで今回の公演に臨めたらと思っていたんですが……
作品の強度が必要、と気づいたのは何かきっかけがあったのでしょうか?
2年前に上演した作品をもう一度やろう!と思えるのかどうか、ということをすごく考えました。2年前の自分にはできなくて、今の自分だからこそ表現できるものがあるし、今だったらこんなことをしたいっていう欲求もすごく出てきていたんです。ブラッシュアップしたらそれだけ質が上がることもわかっていたので。もちろん2年前に出演してくれた俳優さんもこの間成長しているので、それに合わせた作品を作りたいと思って台本を書き直しました。
今のメンバーだからできるパフォーマンスを最大限引き出せるものにしたいんですよね。台本を書き直す工程では2年前の『つながせのひび』をなんとか活かせないか、そこにばっかりしがみついていたんですが、ある日突然急に吹っ切れたんです。
逆に言うと台本を書き直す途中では「今のメンバーで見せられる最大限のパフォーマンスを」という発想ではなかったということなんですね。
もちろんその発想はありましたが、初演のときのアイデアをもったいないからって、正直捨てきれずにいました。それをとあるタイミングでパッと手放せたんです。一旦離れてみようって前向きに。
何かきっかけがあったんですか?
今までの私は作ってきたものを壊すことにすごく抵抗があったんですよ。時間をかけてみんなで作ってきたものをばーん!と壊すのはリスクの高いことだと思うんです。壊すんじゃなくて、できれば今あるものを良い方に導きたいという気持ちが強くて。
わりと保守的な考え方だったわけですね。
はい。最近Twitterで“1つの成功と、9つの失敗”というツイートを見かけて。10個のアイディアがあったら、そのうちの1つ程度が採用されるアイディアであって、採用されない9のアイディアは、1の成功を出す上で無駄ではないという内容で。その何気ないツイートにすごく励まされたんですよね。
なぜ励まされたのでしょう?
今までの自分は、1つの成功を1回で出さないといけないって思っていたんですが、他の9があってこその1であるんだっていうことに気がついて。出るべくして出た9は、無駄ではないと思うと、捨てることが怖くなくなったんです。だから“再演”ではなく“リクリエーション”という形に踏み切れました。
NEXT PAGE
自分の殻がやっと見えてきたから進める、次のステージとは
You May Also Like
WRITER
- 岡安 いつ美
-
昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
OTHER POSTS