今この瞬間、このメンバーだからできるパフォーマンスを。劇団ソノノチ最新公演『つながせのひび』への想いとソノノチのこれから。
自分の殻がやっと見えてきたから進める、次のステージとは
ソノノチとして、今だからできることを形にした作品になったわけですね。中谷さん自身もこの2年でいろいろ変わったかと思うのですが、作品を通して伝えたいことは変化しましたか?
伝えたいことの主軸は変わっていないです。「人を想って、その気持ちを受け継いでいくことの大切さ」という前回公演の軸であった部分はそのままですね。ただ今回それと同じくらい強く出ているのは、“つくる人の気持ち”という部分でしょうか。
前回は絵本の中の世界のつきちゃんとひびちゃんが登場するお話でしたが、今回はその絵本を作る人にフォーカスして、なんでこの絵本ができたのか?という話になっています。
それでは初演とはかなり内容が変わるんですね。
時間軸が、初演はワンシチュエーションでしたが今回は過去と現在を行ったり来たりしながら、前回語られなかった絵本の作者の苦悩が描かれているんですよ。
今日稽古で見させてもらったシーンは、クリエイターの苦悩として自分と重なるものがあって心が痛かったです(笑)
自分が真摯に向き合っているもの……表現活動でなくても、普段仕事する中でも悩んだりこれでいいのかって葛藤する現実ってあると思うんです。何をどこまで、いつまでやるか、とか。パートナーとの関係とか。いろんな人が抱えている悩みや境遇を私たちなりの表現で見せたいなと思っていて。
ソノノチの劇団のプロフィールに『フェミニンでファンタジックな「おとぎ話」の中のような会話劇』と書かれているじゃないですか。すごくこの言葉がソノノチをしっかり捉えている表現だなあと思っていたのですが、そんな表現からは少し変化していると思いました。
作品の手触りとしてはフェミニンで、ファンタジックで、繊細で……という感覚のままだと思っています。今までは現実感をあえて出してこなかったんですよね。現実の切実さや生々しさを日頃感じているからこそ、舞台ではこうだったらいいな、っていう理想郷を表現したいと以前は思っていたんですが、最近、自分の中の苦悩はなくならないし、なくなったことにもできないことに気がついたんです。だから自分の中にある、「悩み続ける気持ち」を作品づくりをする中で参照するようになったんですよね。
最近作品を開きたい、という気持ちがすごく強くて。
作品を開きたい、というと?
ちょっと前にとある海外の演出家さんのワークショップを受けたんです。その方が作品のテーマやモチーフは自分たちだけで抱えると、自分たちにしかわからない世界観になるとおっしゃっていて。
自分たちだけが抱える……閉じた状態ということでしょうか。
自分たちだけが抱えるとオリジナリティはあるけど、想い入れが強いだけで個人的すぎて、観客に対して閉じたものになってしまったような状態です。舞台の上だけで終わってしまうような、独りよがりな作品では伝えられない。反対にお客さんの方に開ききって、説明的で意味をお客さんに押し付けるようなものだと教育的な印象を与えます。
講師の演出家さんの言葉を借りると「本来観客は知的な存在で想像力を持った主体性のある人々であるから、自分の心に引っかかるものは自分で取りに来てくれるはず。全てを押し付けてしまうと観客の想像力をバカにしていることにもなるんだよ。」っていう話を聞いて。
観客とのイメージのキャッチボールを、以前よりもより強く意識しはじめたところ、なんですよ今。『私にもこんなことある』って少しでも思ってもらえるような要素をちりばめながら作品を作っていっています。
観客に対して共感できるような要素を出していっているかんじですね。
一方で、共感を求めすぎると教育的になっちゃうと思うので、お客さんが想像できる余地を作りたいなと思って、今は試行錯誤しています。
気持ちが切り替わったことでいろんな人に見てもらいやすい作品に近づいたと思っています。クリエイションすることの難しさや素晴らしさ、またその両面をもっていることも含めて、今回の作品から感じ取ってもらえればなと思っています。
0→1を創造することってすごく大変なことじゃないですか。それを続けることのモチベーションって、中谷さんはどこからきているのでしょう?
いやー、何度も辞める!って言ってきてるんですけどね(笑)楽しいだけでは続けられなくなる場面はたくさんあって、心が折れかけたことは何度もあります。
なんでしょうね……答えがでないから辞められないというかんじでしょうか。
答えが出ないこと、というと?
私、演劇を始めて10年くらい経つんですけど、まだまだわからないことだらけなんです。面白い作品とは何か、いくら突き詰めてもキリがありません。自分の見る目や感じ方もどんどん変わっていくし、はっきりとした答えが今のところ見つかっていなくて。だからそのおかげで飽きずに作品を作れているんだと思います。仮に最高傑作と思えるものが作れてもうこれ以上できひんわってなったら、その時にやめると思うんです。何回やってもうまくいかない部分があって、やればやる程もっとやりたいことは出てくるし。もうこれで満足、って全然思えないんですよね。
ありがとうございます。それでは最後に、ソノノチのこれからについてお聞かせ願えればと思います。
ここ2〜3年で、自分の破る殻が見えてきた感覚があるんです。これまではまず破る殻が見えてすらいなかったんですよ。それがやっと目の前に見えてきたなと。それは劇団としての殻もあるし、作品の殻もあるんですけどね。
中谷さんの殻はどんなものだったのでしょうか。
殻って自分で決めつけていることなんですけどね。例えば私たちの劇団はこういう作品を作っていかなければいけない、みたいなね。そういうものを壊したい気持ちが出てきているんです。
具体的に何か考えていることはありますか?
既成戯曲や古典にチャレンジしてみたいと思っています。古典がなぜ残り続けているのか、それには絶対理由があるはずなので。他の劇団や芸術家がやっている仕事にも興味があったりします。自分の好きなことや興味のあることのほかにも、まだまだ世界は広くて、知らないことがたくさんあるなと痛感する日々です。
具体的には、これまで10〜20席程度のキャパで、小さな日常の物語を間近で見てもらう形の公演を行ってきたのですが、その形式の公演に今回の『つながせのひび』で一旦区切りをつけようと思っています。
来年以降はもう少し大きいキャパの劇場でも公演を行っていければと思っています。そうなると使える演出効果が大きく変わってくるので、そういった公演のシリーズを作っていけたらと思っています。
今回の公演が、ソノノチにとって大きな節目になるわけですね。
はい。ここ数年は小さい場所で密度の高い作品を作ることに注力していてその能力については向上しているので、自身と劇団の新たな表現の幅を探るために、今度は大きな場所だからできることにもチャレンジしたいなあと思っています。
私、なかなかすごいタイミングで取材できたわけですね……!
この小規模公演をやめるわけではなくて、自分たちの強みとして持って行きながら、次のステージに向かっていこうと思っているタイミングが今、という感じです。小さな規模でできる作品のレパートリーを増やして、「絶対にこの場所に行かなければ観ることのできない風合いの作品」という自分たちの強みは引き続き強化していこうと思っています。
こっから加速していく感じですね。
そうですね。あとは、京都は劇場が近年相次いで閉館するなど、演劇の環境も変化しているので、それをどう守っていくか、演劇のお客さんをどう増やすか、も自分たちにとっての課題のひとつかと思っています。自分たちが続けていく環境を守ることについても、作品創作との両輪で考えていくつもりです。
日程 | 2018年12月19日(水)〜12月24日(月祝) |
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公演日時 | 12月19日(水) 19:00 ※受付開始は開演の20分前です。上演時間は約85分を予定しております。 |
料金 | ●当日精算 予約・当日チケット …3,000円 ペア 予約チケット …5,600円
●事前決済 前売チケット …2,700円 ペア 前売チケット …5,000円 絵本付きチケット …5,000円
●高校生以下 前売・当日 一律 …1,000円 ※ペアは、同一回に2名でご来場の場合、利用可能です ※数量限定の原作絵本(新版)付きのチケットです |
チケット | チケット発売日:9月12日(水) (1)WEBフォーム(前売・絵本付きは銀行振込。予約は当日精算) (2)パスマーケット(事前決済。支払い方法:クレジットカード、コンビニ決済、Yahoo!ウォレット) (3)演劇パス(事前決済。支払い方法:クレジットカード) (4)窓口販売(事前決済。支払い方法:現金) (5)電話・メール(前売・絵本付きは銀行振込。予約は当日精算) |
会場 | Social kitchen 2F Space(京都市上京区相国寺門前町699) |
クレジット | 原作:絵本「つながせのひび」 出演:藤原美保(ソノノチ) 豊島祐貴(プロトテアトル) 演出部:外谷美沙子、木下創一朗(以上、ソノノチ)、英衿子(ハナさくラボ) |
HP |
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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