【映画のすゝめ】第1回
昨年末よりアンテナで『川端安里人のシネマジプシー』という映画紹介コラムを執筆してくださるようになった川端安里人さん。年間数百本の映画を見る彼の頭の中には、過去見た映画が鮮明に記録されていて、映画の事を聞けば、わかりやすく、興味をそそるように教えてくれます。
アンテナ編集部は“映画”というジャンルに苦手意識がありました。というのも、映画を熱心に見る人、深くのめり込む人が誰もいないからです。カルチャー発信をうたいながら、これではまずい……!ということを常々思っていました。過去にはフリーペーパーではみなみ会館の館長さんにコラムの執筆をお願いしたり、次号vol.5では映画という切り口から特集を読み解く事にもチャレンジしてきました。(フリーペーパーアンテナ最新vol.5は2016年春発刊予定です!)
そして、2016年。ウェブ版でも映画をどんどん発信していこう!となり、今回安里人さんに協力をお願いし、新しいコラムを一緒に始めることになりました。それがこの『映画のススメ』です。
簡単にコラムを説明すると……
- ターゲットの背景などを読み解き、その人におススメしたい映画を安里人さんが選ぶ
- 映画は街にあるレンタルビデオ屋で選ぶ
- 最後にゲストが1本映画を選び、感想を書く
人によって見たい映画はさまざま。生活のバックグラウンドに寄り添った映画をセレクトしてもらおう!という企画です。このコラムが、映画を見るきっかけになれば幸いです。
今回のターゲットはアンテナ編集部に在籍している20代後半のOL2人です!
ターゲットについて
20代後半。内勤系のOL。音楽や写真が好きなサブカルかぶれ。
アンテナ1号と同い年のOL。彼女も音楽好きで、最近は一人で登山や小旅行をするようになった強者。
2人の映画遍歴について
・洋画はあまり見ない。
・好きな映画と聞かれたらディズニーやジブリの映画を答えてしまう。
・映画上映中に寝てしまった経験があるなど……映画を見ることにチャレンジし続けているが、これぞ!という映画にはなかなか出会えていない。
今回選んで欲しい映画
ターゲット
20代後半OL
ターゲットの背景
・新しい映画は常に見たいという意欲はあるが、仕事が忙しく、まとまった時間が取れない
・2~3か月に1本映画を見るか見ないか程度
・大作というよりかはミニシアター系の映画に興味がある
ターゲットの要望
・時間がなくてもぱっと見れるような軽い映画
・なんというか、おしゃれな雰囲気の映画が見たい
ーーさてどんな映画を安里人さんは選ぶのでしょうか。 今回は京都の今出川通りにある某有名レンタルビデオ屋さんにて映画を選んできました。
20代OLとか遠い存在だから悩むなあ……
歳的には近いはずですけどねえ(笑)。何か質問があればどうぞ!
好きな映画とか最近見てよかったと思った映画とか、何かヒントになることを教えてもらえたら嬉しいな。
あ、最近『グランド・ブダペスト・ホテル 』を見ました!映画って途中で飽きちゃうことも多いんですけど、これはぐっと引き込まれました。
それって本当に20代OL(笑)?
レンタルビデオ屋でも目立つように並べてあったんですよ。ジャケットも可愛かったのでつい借りてしましました。
私は『マッドマックス』の1と2を見ました。4までたどり着けてないのですが……
『マッドマックス 怒りのデス・ロード 』は早く見てもらいたいなぁ。なんたって僕が2015年1位の映画に選んだくらいだしね……
1と2ってまるで違う映画で、そのギャップにも驚かされました。
アメリカでは2は『マッドマックス』の続編という形ではなく、別の映画として公開しているところもあるくらいだからね。
それは知らなかった!いや、でもそれくらい別物でしたね~。他に普段は金曜ロードショーくらいで映画を見るくらいで、自分から積極的に映画を借りにいく時間も、見る時間もなくて。……でも映画は見たい!そんなわがままな私でも仕事終わりに見たくなるような映画があれば教えてもらいたいんです。
しかし洋画ってありすぎてどれから見たらいいのかわからないよね。
わかる!
邦画だったら、この俳優が好きだから借りてみよ~!ってなれるけど、洋画ではそれができないんだよね……
何か予備知識もないといけないのではないか!?みたいな先入観すらある。
なるほど。実はもう2本くらい決まっているんだけど、もう1本何にしようかな。(選び始めて5分程度)
早い!
アクションが好き、とかジャンルの好みはあるかな?
いや……このジャンルが好きっていうのもあまりなくて、それよりも今流行っているものだったりを見たり、おしゃれなジャケットに惹かれたり、そんな理由で映画は見ているかもしれないです。
なるほど。真面目に見れるよりは、気楽に見れる方が良いかな。
気楽に見たいです!仕事の後とかだと、映画を見よう!ってなるまで腰が重くて。
わざわざこんなしんどい時にこんなもん見たくないよって感じ?
そうそう(笑)!でもテレビは面白くないし、何か見たいなと思う瞬間は多いです。でもいざレンタルビデオ屋に来ると、何度も見ている自分が好きな映画ばかり借りてしまって。それはそれで良いのかもしれないけど、新しいのも見れたらなぁとは思っています。
恋愛ものとかは「はいはい、うそうそ!」ってなっちゃう(笑)。
うわ~なんかそれもわかる(笑)! 私たちなんて卑屈なんだろうね……
はい!決まりましたよ~
ありがとうございます!それでは1本ずつ紹介をお願いしてもよいでしょうか?
それでは1本ずつ紹介します。
ミッドナイト・イン・パリ
内容説明 (Amazonより)
天才ウディ・アレンが真夜中のパリに魔法をかけた! 誰しもをめくるめくおとぎ話の世界へトリップさせる至福のロマンティック・コメディ
◆本年度アカデミー賞&ゴールデン・グローブ賞最優秀脚本賞W受賞! 25年ぶりのアカデミー作品&監督賞Wノミネート!
『グランド・ブタペスト・ホテル』が好きということで選びました。アメリカのウディ・アレンという監督の映画で、『グランド・ブタペスト・ホテル』にも出ているオーウェン・ウィルソンという鼻の曲がった俳優さんが出ている映画ですタイムスリップものなんだけど、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいなのではなく、おしゃれに昔のパリを描き出しています。これはすごくオススメ。
女子好きそう~!3枚の中では一番オススメな感じですか?
この3枚の中だったら、“誰でも好きになれる1本”だと思う。
ありがとうございます。それでは次の1本を。
レイチェルの結婚
内容紹介(Amazonより)
家族の絆と再生をリアルな視点で綴る“最も美しいホームビデオ” 【ストーリー】 キムは過去10年、麻薬中毒者の更生施設の入退院を繰り返していた。そんな折、姉レイチェルの結婚式に参加するため一時的実家に帰ってきた。 キムは自分の存在が家族のバランスを崩すことを痛いほど分かっていた。しかし孤独感や消えない心の痛みのせいで、やはり今回も家族とぶつかってしまう。 結婚式という音楽と愛が満ち溢れる温かいムードの中、緊張で張り裂けそうになる一家。そんな家族の1人1人をつないでいるのは、見えない家族の絆だった。
アン・ハサウェイ可愛いですよね~!とても好きです!
『羊たちの沈黙』だったらみんな知っていると思うんだけど、その監督の映画です。怖い要素はゼロですよ。ジャケットにもなっているアン・ハサウェイはレイチェル役ではなく、アン・ハサウェイが演じる主人公のお姉さんがレイチェルなんですよ。
えー!ジャケットに惑わされた感じです……。
レイチェルの結婚は実家あんま帰りたくないけど、家族だし……とか、これからの人生どうしようとかそういったことも考えさせられる映画。男の人よりも女の人の方が共感できる部分が多い映画なんじゃないかな。いわゆるドラマ映画だけど、分かりやすいないようではなく考えさせられることもあるけど、見やすいし面白いですよ。
なるほど!ありがとうございます。それでは最後の1本をお願いします。
ペルシャ猫を誰も知らない
内容紹介(Amazonより)
(「キネマ旬報社」データベースより) 『酔っぱらった馬の時間』のバフマン・ゴバディ監督が描く青春群像劇。当局の弾圧をかわしながら、インディー音楽のユニットで活動するネガルとそのボーイフレンドのアシュカ。ロンドン行きを夢見るふたりは、資金を得ようとコンサート開催を思い立つ。
これはイラン映画なので、少しだけ難易度が高いかもしれないです。
国の文化が違うから、そもそも考えていることが違いすぎて、とかですか……?
いや、ペルシャ語はそもそも馴染みがないから少し見にくいかも、っていう点でね。この映画はイランのインディーズバンドの話。イスラム圏で音楽をやりたい!って若者の話で、なんとか自分たちの文化に西洋的なバンド文化を持ち込もうと頑張っていて。いろいろと考えさせられる映画でもあると思うよ。
これが20代OLの共感を得られると思った理由は?
まあまず2人が音楽好き、という前提があって。それと主人公が女の子なので、それも共感できるポイントになるかなと。
なるほど、とても気になる1本です。ありがとうございます!
えぐいシーンも、怖いシーンもない3本だけど、多分誰でも好きになれるはずです。ここ10年以内の作品を選んだんだけど、『ミッドナイトインパリ』と『レイチェルの結婚』は「この俳優さん知ってる!」ってなる可能性があるかもというポイントでも選びました。『ペルシャ猫は誰も知らない』はこんな映画もあるんだって発見の1枚になれば良いなと思って。
『ペルシャ猫は誰も知らない』は日本でも公開されていたんですか?
全部日本でも公開されていたよ。『ペルシャ猫は誰も知らない』はミニシアターで、他の2本は京都でも大きめの映画館で公開されていたよ。
ありがとうございます。なんて身になる企画なんだ……!
この中から1本借りて、レビューを書こうと思うのですが、どうしましょう2号……。
どうしようか……
私は音楽好きだし、『ペルシャ猫は誰も知らない』が見たいな。イランの音楽って何か気になる。
それじゃ『ペルシャ猫は誰も知らない』にしよう!亜里人さんありがとうございました!
アンテナおすすめの1本
『ペルシャ猫は誰も知らない』
アンテナ1号のレビュー
まず日本では考えられないイランの現状の数々にとにかく驚かされた。そして自分たちがいかに幸せな環境にいるか、そんなことを考えさせられる映画だった。
イランの検閲は厳しく、西洋文化への規制が厳しい。物語はそんなイランでアシュカンとネガルのカップルがロンドンへの出国を目指しながら、イランの音楽事情が垣間みれる事実と実際にあった事件に基づいた半ドキュメンタリー。劇中に登場するミュージシャンたちはイランで活動する本物のミュージシャンなのだとか。彼らは裏ルートから仕入れたアメリカの音楽雑誌を眺めては目を輝かせ、地下に隠れて音楽活動をしています。笑いながら、音楽活動をしていて「逮捕された」と話し、「シガーロスを見るんだ。それが俺の夢だ」なんて言う。胸を締め付けられる思いだった。 好きな音楽をやりたい。彼らの願いはただそれだけ。この思いに触れたら音楽活動をできることや、目の前で鳴らされている音楽の尊さを感じる事ができるはずだ。バンドをやっている若者、音楽が好きでライブハウスに行く人にはぜひ見てもらいたい1本である。
さて、いかがでしたでしょうか? これからは様々なバックグラウンドのゲストターゲットを招いて取材をして行く予定です。 安里人さんに映画を選んで欲しい!という方がもしいらっしゃいましたら、アンテナ(kyoto.antenna@gmail.com)までご連絡ください。(京都取材にいらしていただける方限定です!)次回もお楽しみに!
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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