なぜ今台湾なのか?月見ル君想フ台北店オープンについて迫る
東京は青山に店を構えて今年で10年。多彩なアーティストを招き、移り行く時代の中でも異彩を放ち続けている『青山 月見ル君想フ』。現店長である寺尾さんにお会いしたのは昨年11月公○食堂にて行われた“台湾から来た二人”というイベントでした。
寺尾さんは台湾のアーティストを引き連れてツアーが行えるほど中国語が堪能。なぜ彼が台湾のアーティストを引き連れてツアーをしているのか話を聞いていくと『月見ル君想フ』は台湾にお店を出すこと、それほどに台湾と彼の繋がりが深いことを教えてもらいました。
なぜ青山に店を構えるライブハウスの店長が台湾にライブハウスを出店するのか?その素朴な疑問から『月見ル君想フ台北店』についてお話も聞かせていただくことに。寺尾さんの人物像から、台湾インディーミュージックの事情、そして月見ル台北店について、メールでインタビューを行いました。寺尾さんを軸に、アンテナでは日本とアジアの音楽について少しずつ紐解いていきます。
住所 | 台北市大安區潮州街102號 |
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営業時間 | 11:30-15:00 / 18:00-23:00 (火曜定休) |
電話番号 | +886 2 2391 0299 |
romantictaiwan55@gmail.com |
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HP | |
ライブハウスの運営は誰かの為に自分で編集したミックステープを作る楽しみと似ている
まずこの取材を始めるにあたって、寺尾さんについてお伺いしたいことがいくつかあります。いつから、なぜ月見ル君想フで働くことになったのでしょうか?
自分もバンドをやっていて、イベントを開催したりしていた時に、業界の先輩に声をかけていただいたのがきっかけです。もちろん月見ルでも出演していましたし、他のカフェやライブハウスでも様々なイベントを企画していました。
元々バンドをやられていたのですね。寺尾さんは今月見ル君想フで主にどんなことをやられているのでしょうか?
青山月見ル君想フ、台北月見ル君想フの2店鋪を経営してます。勤務を始めて8年目になります。
8年間月見ル君思フで働いていて、大切にしていることは何かありますか?
お客さんの立場からみて心地よい空間を作れる様に意識しています。
なるほど。その心地よい空間づくりのために実際に行ったことはありますか?
さまざまな装飾を取り入れ非日常的な空間を演出したり、できるだけストレス無くライブを楽しんでもらえるように心がけています。そんな場を提供してさまざまな表現する人同士が店に集まり、繋がりを作ってくれるのが何より嬉しいことです。
それはとても素敵なことです。さまざまな表現者、とはミュージシャン以外にも人が集まる場所であるということなのでしょうか?
そうですね。ライブハウスは出会いの場という魅力的な一面もあると思うので、ミュージシャン同士だけでなくクリエイターの人達とミュージシャンの繋がりや、飲食関係の人達との繋がりも大切にしています。
寺尾さんが勤務されていた8年間でたくさんのバンドを見て来られたと思うのですが、ライブハウスで店長をされていてやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
バンドが自分の尊敬する人を招いてイベントをする時の緊張感が好きです。自分もそうでしたが、やっぱりイベントを作って、好きな音楽を聴いて、お客さんを楽しませたい、という事がバンドもライブハウスも原点の様な気がします。ライブハウスの運営やイベント作りは誰かの為に自分で編集したミックステープを作る楽しみと似てると思うんですよね。
私は今京都に住んでいて東京のライブハウス事情にあまり詳しくないのですが、東京のライブハウス業界について少し教えていただけませんか?
東京のライブハウスはもちろんそれぞれ個性があって、ハコの数も多いのでなにかと大変と思います。でもフリーキーな匂いのするハコはなかなか数少なく、その点で池袋のオルグの閉店は非常に残念だと思いました。
ライブハウス自体が多い東京でフリーキーな匂いのハコが少ないというのはとても意外です。そんな東京を中心とした日本の音楽業界について、寺尾さんはどんな風にお考えですか?
絶えず良い状況に向かっていると思います。そしてアイディア次第で可能性は無限大だと思います。今はインディーズに目を向ける人が多くなっている気がするので、やり方次第だと思いますよ。
台北にお店を作りは、新たなチャレンジ
台湾にお店を出すことになったきっかけをお伺いしたいです。なぜ今、台湾にお店を出すのでしょうか?
台湾の雰囲気が好き、というのが一番ですかね。空気も人もやわらかい雰囲気で居心地が良いです。あと細かい所にこだわらないという方が多いように感じるのですが、自分にとってはとても心地よいです。
台湾のアーティストで日本に馴染みがあるのは透明雑誌やskip skip ben benのようなバンドかと思うのですが、どのようなアーティストが台湾には多いのでしょうか?
台湾の音楽にも色んなジャンルがありますが、優しいものが主流ではあるように思います。激しい音楽にも優しさと情熱を同時に感じます。あとインディーズシーンもとても活発で元気がありますね。自分で物を作る、ということに積極的な方が多く、良い刺激を受けます。
自分で物を作ることに積極的、というのはミュージシャンが多いということでしょうか?アートなどのクリエイターも多いということでしょうか?
ミュージシャンに限らずクリエイターも多いように思います。ものづくりでも日本とはまた違ったアイデアを発見するのが面白いです。
国内ではなく、海外に出店を決断した理由は何だったのでしょうか?
文化の違う所で新たなチャレンジをしてみたいという気持ちもありました。台湾は海外なんですが、日本の文化を好意的に受け入れてくれるので、その点他の国より苦労は少ないのではないかと思います。
台北店を構えた潮州街について教えてください。
ここはビジネス街と学生街に挟まれた、閑静な住宅街です。落ち着いたカフェや雑貨屋さんがあちこちにあります。近くに永康街という小籠包で有名な通りがあって、そこからも近いです。
来てみた印象として、小さなおしゃれな店が多く、日本のサブカル好きな人は絶対好きそうな印象です。京都に住んでる人とか、京都が好きな人はとても好きそう。細かく回ってみたいと思いました。
話は変わって、台湾の音楽事情についてもお伺いしたいです。単刀直入に、オススメのアーティストはいますか?
オススメは、「閃閃閃閃(The Shine&Shine&Shine&Shine)」です。今レコーディング中ですが、2015年に日本ツアーすると思いますのでお楽しみに〜
台湾には日本のようにライブハウスはたくさんありますか?
日本のようにとはいきませんが、夜フラッとライブを見に行ける場所はいくつかあります。ただ、週末の営業がメインで、平日はお休みところも多いです。
他にも日本のライブハウスと違うことはありますか?
ライブの時間帯は日本より遅めです。夜の9時から、とかもよくあります。中規模以上のライブハウスだと、ドリンク購入は必要ないところもありますね。日本のライブハウスと同じくなにかが起こりそうな、ワクワクする場所としての魅力があります。
とても内装にもこだわられていて、おしゃれなのに居心地のよい不思議な空間です。今日店の中に入って気になったのが壁に貼られているライブの写真だったのですが、あれは常設されているものですか?
あれはあの日のイベントの内容の一つで、台湾のライブシーンを撮影し続けている友人のカメラマンの写真展を同時開催しました
台北店の1階は飲食を提供できるカウンターもありましたが、台北店はライブハウスというよりかはカフェがメインの印象なのですが…実際はどうなのでしょうか。
1Fは常にレストランとしてランチタイムとディナータイムどちらも営業してます。 1Fでは通常はライブはやりません。オススメメニューは、台湾では存在自体が珍しい南インドカレーと、台湾の季節の食材をふんだんに取り入れた各種デリがオススメです。
台北月見ル君想フをどんなお店にしていきたいか教えてください。
しばらくは、日本と台湾の音楽が混ざる場所として様々なイベントを企画していけたらと思います。青山月見ル君想フと台北月見ル君想フでの連携イベントもやっていく予定です。そして将来的には、日本と台湾が融合した物が生まれるような場所になればと思っています。まずはここ台北月見ル君想フをあわてずのんびり良いスペースにして行きたいと思います。
今後どのようにお店が進化していくか、楽しみにしています!ありがとうございました!
アンテナ取材班がお邪魔したのは台北店オープン初日のこと。 日本からキセルをシークレットゲストとして招いたこの日は多くのお客さんでにぎわっていました。1階はレストラン、地下に通じる階段を下りて現れるライブスペースは天井も高く、フローリングのフロアでとてもアットホームな空間でした。フロア右手には青山店でもおなじみの月の絵が投影され、台湾にいることを忘れさせるほどゆったりとした時間の流れる、とても居心地のよいハコでした。
またキセルのライブの盛況ぶりを見て、日本と台湾の垣根はそんなに高いものではないと実感しました。これからどんなアーティストがこのステージに立つのか想像するだけで胸が高鳴ったのをよく覚えています。日本の音楽好きにこそ、一度足を運んでもらいたい月見ル君想フ台北店。ぜひ台湾を訪れた際には足をお運びください。新しい出会いがそこでは待っているはずです。
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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