Color of Yellow:イベントレポート
アンテナとSTUDIO MONAKAの共催で行ったイベント『Color of Yellow』。ライブあり、ライブペイントあり、座談会あり、出店ありと盛りだくさんな内容で、会場の1000KITAは一日中まるでお祭りのよう。当日は雲行きも怪しく時折激しい雷と豪雨に見舞われましたが、訪れたお客さんは雨にも負けず晴れやかにイベントを楽しんでいました。イベント名からもわかるとおりこの日のテーマは”Yellow”でしたが、むしろ雨の後に架かる虹のようにカラフルで賑やかな一日になったと思います。当日来られなかった方も、これを読んでぜひイベントの雰囲気に触れてみてください!
文:キャシー / 齋藤紫乃
写真:岡安いつ美 / 堤大樹
ライブレポート
テキサス州オースティンにて活動中のアーティスト・Peelander-Yellowの来日に合わせて企画された今回のイベント。彼のライブパフォーマンスに負けじと、京都からはIKIMONOとEasy Yokeが迎え撃ちます。重たい雨模様の空気を、三者三様それぞれの音楽の力で吹き飛ばしてくれました。
Peelander-Yellow
彼のライブを一言で表すならば、まさに”やりたい放題”だ。
開始早々、抱えていたアコースティックギターをおもむろに取り上げて「誰かギター弾けるやついるかー!?」と声を掛け、手を挙げたお客さんにバトンタッチ。コードを弾かせている間、自身はまるでアニメーションのようにコミカルに飛んで走って動き回り、取り囲むお客さんたちと即興のコールアンドレスポンスを始める。「今日お昼何食べた?ハイ!」「おにぎりおにぎりおにぎり!」「カレーカレーカレー!イエーイ!」とこんな調子である。
常にテンションはフルスロットル。半ば巻き込まれた状態のお客さんたちだが、こんなYellow氏を目の前にして盛り上がらないわけがない。なおも勢いをつけたYellow氏は、途中で小さな少年を椅子に立たせてクラクションを吹かせたり、突然目の前の市バスを追いかけて乗ろうとしたりで大暴走。終いには企画者アンテナの目標「世界のカルチャーを混ぜる」とそれに相反する「混ぜるな危険~」のコーラス大合唱が起こり、会場は一気に一体感に包まれていった。
もはや笑顔にならない人は一人もいない。ここが京都の町の大通り面前であることを忘れて、誰もが馬鹿みたいにはしゃいで手を叩いて笑っていた。この黄色いおじさんは「どこでもどんなふうにでも、楽しむことは簡単だ」ということを全身で示してくれたようだ。
IKIMONO
男女2人組バンド、IKIMONO。いつもはドラムを叩いているセブンがこの日はアコースティックセットを意識して楽器をベースに持ち替えての演奏だったが、ギターとベースの組み合わせもこれはこれで実にマッチしており、特別編成とは思えないほどの完成度で、ベースのフレーズアレンジも絶妙であった。
女声ボーカルのイノウエの声は刺さるほど真っ直ぐで芯が通り、強烈に言葉を届ける力がある。雨で重たい会場の空気を切り裂くような歌声に、セブンのアンニュイかつ寄り添うような柔らかい男声コーラスが重なっていく。不釣り合いなほどに真逆の声質だが、だからこそイノウエのボーカルが際立つのかもしれない。そしてこれこそがこのバンドの肝だろう。
可愛らしいミントグリーン色のダンエレクトロ製ギターを掻き鳴らしながら、放たれる言葉の数々。「何でもいいのに言葉で縛って」「僕はたった一人だから いつまでも大切にしておくれよ」。極め付けに、最後に演奏した『メトロで』で歌われる「許さないさ 例えばそれがあらかじめ決められていたとしても」のフレーズが完全に私の心を掴んでしまった。彼女の声のロングトーンで少しハスキーに掠れる不安定さと、裏声でフッと空気が抜ける心地よさに惚れてしまったのは、きっと私だけではなかったはずだ。
Easy Yoke
この日のトリを飾ったのは京都の5人組バンド、Easy Yoke。彼らもまた、この日のステージでは編成を若干変更し、ベースの高石は鍵盤を、山崎と栗栖は両者ともアコースティックギターでの演奏であった。
先のIKIMONOの2人の声質が”真逆だからこそ良い”のに対し、Easy Yokeのそれは”溶け合うように重なる良さ”である。山崎のボーカルは涙を誘うような終始強めのビブラートが美しく、高石と高橋、女性2人の声はまるで降り注ぐ光のようで、3人の歌声が混じり合うと何とも言えない神秘的な響きになる。ギターやキーボードのコードの中にキラキラと輝くピアノの旋律、大地を踏みしめるようなバスドラムのリズム、シンバルと鈴の音、様々な音がひとつになって彼らだけの音像を作り上げていた。曲の合間に挟まれるMCでは冗談を言ってクスッと笑わせてくれるのに、次の曲が始まると途端にそれを忘れてしまうほど、一瞬で彼らの世界に引き込まれてしまう。
最後に演奏された『強い眩暈』は彼ら自身も「アンセムです」と語っていた通り、ボーカル3人のハーモニーを中心にして、どこまでも続く壮大な祝福の音楽が鳴っているようだった。この日の最後を締めくくるのにふさわしい圧巻の演奏であった。
イベントレポート
当日会場を訪れると、そこには2枚の大きなキャンバスが。この日は2組のアーティストがライブペイントを行いました。1人はもちろん、この日の主役・Peelander-Yellow。今回は京都のバンド・おとぼけビ~バ~のよよよしえと合同で作品を作り上げました。もう1人はアンテナデザイン班のyellow jam。ともに”イエロー”の名を持つ2人が、それぞれの世界を大胆に描きます。
午後から天気が崩れたもののお昼は晴天で、むしろ日差しが暑いくらいでした。汗がじんわりにじむ中イラストレーターyellow jamによるライブペインティングが始まりました。イベント名にちなんで大きな黄色い家を描き始めた彼女。
小さい体で大きなキャンバスに挑んだ作品のタイトルは『Home』です。彼女はつい最近宮崎から京都に上京してきたので、京都がHomeになれば良いなという想いが込められています。yellow jamらしい愛らしい作品に仕上がりました。
Peelander-Yellow×おとぼけビ〜バ〜よよよしえ ライブペイント
今回のイベントの主役によるライブペイントはライブ同様、こちらもお客さん巻き込みスタイルで、絵筆を渡されたお客さんもPeelander-Yellowの指示で少しずつ作品に色を加えていきます。中央に描かれた大きなパンダと、その周りには出っ歯のかわいいビーバーたち。一体この組み合わせはどうまとまるのか?ときっとギャラリーは不思議に思っていたはず。最後にパンダの頭の周りに”京都”を表す「KT」の文字が書き込まれ「これがアンテナ!これがパンダだ!」の言葉と共に締めくくられたその作品は、迷いのない筆で、カラフルでちょっと珍妙なPeelander-Yellow×よよよしえらしい作品に仕上がりました。
手作り市・ワークショップ
イベント会場の隣のスペースでは手作り市が開催されました。リネン素材の枕カバーと洋服、キャンドル、木工作品、真鍮のピアスなど特に女性がきゅんとなるようなかわいいものが勢ぞろい!また、アンテナのイラストレーター後藤多美による似顔絵コーナーもあり、匠な筆使いで出来栄えも4割増に仕上げてくれるということで、一躍人気コーナーとなっていました。そんな出店者の皆さんを作品と共にご紹介します。
ELAMICA(エラミカ)
ラテン語で”素敵な人”という意味の『ELAMICA』。デザイナーの飯間博子さんは元インテリアコーディネーターで、さすがネーミングのセンスも素敵です。コーディネーターとして働いていた10年間でベッドリネンだけは自分が良いと思えるものに出会えず、それならばと自分で枕カバーを作り始めます。
飯間さんが扱うリネンは密度が高くとてもしっかりした生地で、毛玉も付かないし10年使うと水分を吸ってふわふわのアンティークリネンになるそうです。雨季に1日15メートルしか織れない希少な生地を使っていて、なんとエルメスがスーツのジャケットに使う生地で、日本ではCOMME des GARCONSとELAMICAしか扱っていないのです!
さらさらっとすごいことを話される飯間さんこだわりの枕カバーの他にもワンピースなどの洋服も販売していますので、皆さんもぜひ一度触れるとわかるELAMICAのふわふわのリネンに袖を通してみてください。
marie(マリエ)
名前の通り、まりえさんが作るアクセサリーブランドです。普段はレコード屋で働いている彼女ですが、もともと天然石やパーツを集めるのが好きで、気が付けばアクセサリー作りを始めていました。商品は基本的にピアスが多いですが、オーダーでバングルなども作ってくれます。季節的に今回のイベントでは真鍮や石を扱ったものが多かったのですが、冬は羊毛を使ったもふもふのピアスもあります。ほぼ独学で始めたとは思えないほど、まりえさんのセンスがとても良く、アンテナ女子メンバーが殺到してあっと言う間に3つが即売れしていました。最近はあまり出店しておらず今回は久しぶりの出店だったので、アンテナとしても出会えて良かった!普段は三条高倉にあるギャラリー&カフェ『Collabo』に作品を置いていますので、気になる方はそちらに行かれてみてはいかがでしょうか。
kininal(キニナル)
イノグチシマによる木工の生活雑貨ブランドとして2017年にスタート。毎年春と秋に京都文化博物館で開催される「京都アートフリーマーケット」に今年の3月に出店したことがきかっけで始めたブランドです。この日はマガザン京都で共同で展示をしていたデザイナー大貫 茜さんとのコラボユニットNESSHIIの箱も売っていました。2人のアイデアが詰まった取っ手付きの箱は触るとわかる楽しさに溢れています。
大学時代に工芸科でアート寄りのオブジェを作る勉強をしていたことから、それまでは個人でオブジェを制作していたのですが、食器を売るにあたりブランド名として「kininal」を立ち上げました。これからオンラインショップなどでも展開予定です。
なんと自宅に設備を用意してフリーランスで制作しているそうで、彼女の今後の活動にも注目です。
HB.CANDLE(ハタボーキャンドル)
ポップでカラフルでひとクセある配色のキャンドルを作るHB.CANDLE。本業である美容師をしながらキャンドル作りの活動をしているはたぼーさんは、もともと物を作ることがとても好きで、家に籠って作れるものを探していた時にたまたまキャンドル作りの教室を見つけて通い始めました。初めは趣味でやろうとしていたのですが、作品もたくさん出来てきた時に声をかけられて、ご縁もあって2011年よりブランドをスタートしました。1つの作品を作るのに時間がかかるため活動はマイペースにではありますが、出店をするとキャンドルを通して人と話せるのが楽しくて、続けているそうです。
作品といえばアンモナイトのキャンドルが特徴的で、オリジナルのデザインをシリコンで固めて、型から手作りしています。今回は新作の鳥型キャンドルもあって、他にはないデザインと出会えますよ。
Photolabo hibi(フォトラボ ヒビ)
京都の東山二条にお店を構える写真屋さん、hibi。普段はお店で写真の現像等をしているとのことですが、一瞬を切り取る楽しさや思いを形に残したいとの思いから、自身で様々なイベントやワークショップも行っています。この日はチェキを使ったおしゃれな写真の撮影ブースを出店。レンズ部分を半分ずつブラインドで隠した状態で、写真を2回重ね撮りすることによって、アートな雰囲気の合成ポラロイドが簡単に出来上がります。撮影後、ポラロイド台紙に写真が浮き上がってくるまでのワクワク感はたまりません!
後藤多美(ごとうたみ)
似顔絵ブースの出店をしてくれた、アンテナのイラストレーターで現在は大学院生の彼女。もともと人を観察して描くことが好きで、電車などでもよく観察して描いているんだとか。美大生ならではですね。その実力には定評があり、企業からも声をかけられて似顔絵ブースでお仕事することもあります。アンテナでもイベントのフライヤーデザインも担当していて、いつも素敵な世界観で仕上げてくれます。
アンテナとして、この規模のイベントを行ったのは初めてでしたがいかがでしたでしょうか。Color ofシリーズのイベントは今後も行いますので、今回参加できなかった方はぜひ次回にご期待ください!
※座談会「働きながら音楽活動をする」については、別記事にてより詳しく取り上げます。そちらもどうぞお楽しみに!
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WRITER
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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