竹上久美子の「これまで」と「これから」
今回リリースした『slow boat』の反響はいかがでしょうか。
身近な人の反応もありますが、最近ライブしに行けてなかったような東京や名古屋に行くと、さらに反響は感じられます。今までにないところから反響をもらったり、聞きましたという感想をもらったりしています。
今回京都の身近なミュージシャンを起用してアルバムを作成されたかと思います。それぞれの人が今回の制作に合流した理由を伺いたいと思っていまして。まず、LLamaの吉岡さんについて、一緒にやることになった経緯を教えてもらえないでしょうか。
6年前はマザーシップのラリーさんに全てプロデュースしてもらって、まとまりのあるいいアルバムになったんですが、ルーツミュージックを主軸にしたシンガーソングライターっぽさが全開に出ていたアルバムでした。次は違う方向でやりたいなあと思っていて、この6年間でstudio SIMPOの小泉さんや、軽音楽部時代の友達とコラボの曲を作ったりしていたんです。それをいざ1枚にまとめようとすると、しっちゃかめっちゃかな感じで(笑)。レーベルも決まらず、どうしよう、と途方に暮れていたんです。
そんな時、ドラムを叩いてくれていたG君(LLamaの石渡新平)が吉岡さんを紹介してくれて。その時吉岡さんとは面識がなくて、勝手に怖い人だと思っていたんです(笑)。それまで私が作ってきたテーマソングとかもJ-POP色が強いし、吉岡さんとは合わないんじゃないか……とか色々考えていました。
私的にも竹上さんと吉岡さんの組み合わせって、少し不思議だなと思っていました。
怖いなと思いつつ、とりあえず一曲、“海辺の旋律”という曲を録ることにしました。この曲がちょっとポリリズム的な要素もある複雑な曲で、アクセントを置く場所を説明するのが難しいと思っていたんです。でも吉岡さんがぱぱっと指示を出してくれて曲をまとめてくれて、ものすごく早く録り終わって!ディレクション能力の高い人だなと、一曲やって実感して。
それを経て、アルバムの依頼を?
気がつけば、という感じですかね(笑)。“海辺の旋律”を録り終わった時、あまりに早く終わって時間が余っていたので、現状の相談をしたんです。困ってることリストみたいなものを吉岡さんに渡して。そうしたらそれを丁寧にどうしたら解決するか考えてくれて……こんな兄貴肌の人だとは思ってなかったからすごく驚いて。そこからアルバムのディレクションを吉岡さんにお願いしました。途端に、アレンジが決まっていったり、レーベルもすぐに決まり、歯車がうまく回り出して。
吉岡さんがいなかったら、今回のリリースも……
再来年くらいになってたかもしれない(笑)
想像以上のキーマンですね。
“全然怖い人ではなく、仏のような人です”と言って回りたいです。
(笑)。デザイン全般をまかせていたおざわさんについては?
元々軽音楽部の後輩で、作品も好きだし頼もうとしていると、それを吉岡さんとMVとか“FESTIVAL”という曲でコラボした浜ちゃん(Lainy J Groove)に相談したんです。話してみるとその2人がおざわさんと仲が良いことがわかり。そこからおざわさんにも合流してもらいました。
ちょうど話に出たので、浜ちゃんの話もお聞かせください。
元々ライブでベースを弾いてもらいたいなと思って声をかけたら、ライブでベースを弾くのは現在の所属バンドだけに絞っているという話をされて。なんで?って聞いたら「決まったフレーズを一生懸命練習する時間があるなら、新しいもの作りたい」と返されてね。
かっこいいですね……!
そうそう(笑)。浜ちゃんって今そういうモードなんだ、って理解して、映像とコラボ曲を依頼しました。曲のアレンジも映像も、ものすごいスピードで送られてきて。自分主体で動く仕事がものすごく早くて「浜ちゃんってほんとすごい!」と家族にもずっと話していました。
今回は完全にチーム・竹上久美子での制作になったわけですね。
まあ最初から「チーム組んでやるぞ!」とはなってなくて、結果的に、という感じかな。今回すごくわかったことが、私は一緒に何かをやる人は人間性を重視しているということ。普通シンガーソングライターの人がサポートを頼む場合って、お金を払っている以上、演奏を優先するはずで、人間性を優先することってそこまでないと思うんですが、私はどっちもを求めてしまうんです。だから意外や意外に、遠そうと思っていた吉岡さんがバッチリ合ったりして、面白いなと思いました。
合うと思っていた人ほど合わなかったりしますしね。今回キーマンとなる3人が集まったのも、必然だったのかなと思いました。今回は特に顕著ですよね。
この人はすごいドラマーだよとか、この人とやったら売れるよ、とか言われたとしても、人として合わなかったら結局続かないんです。そういう意味では、はなから名誉欲とか、出世欲とかはなかったのかもと思います。今回は制作陣に恵まれました。
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これからの竹上久美子 -- 今はドの音を脱力して出す練習をすることに時間をかけたい。
WRITER
- 岡安 いつ美
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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