FOREST @ 京都GROWLY 2016.02.25
台湾インディーズシーンへの興味が尽きない。
昨年月見ル君想フ台北店の取材をさせてもらってからは特にそうだ。
日本に度々来日している透明雑誌やSKIP SKIP BEN BENから、台湾のインディーズシーンへの想像を膨らませ、その後実際に台湾でライブを何回か見に行ったのだが、そのギャップに少し驚かされた。ポップスが主流の台湾で、地下のライブハウスで爆音を鳴らし独自の路線を突き進むバンドは少ないという。さらに話を聞けば、20代半ばでバンドをやっている人は一握りだけ、30歳をすぎてバンドをやっていているのはほんのひとつまみ程度の人だけなのだそうだ。みな、一定のラインで見切りをつけるらしい。
そんな話を聞いて、より台湾のインディーシーンを知りたいと思った。
小さなシーンで生まれた素晴らしいバンドたちがいる台湾には、可能性で満ちているはずだ。それをもっと知りたいと。
約2年前の来日時からSKIP SKIP BEN BENと交流があるのだが、彼女に「今一番台湾でオススメのアーティストは?」と訪ねたところ、彼女は迷わずにFORESTの音源を聞かせてくれた。
「彼らは本当にかっこいいよ!」と。
FORESTはわずか1枚のアルバムをリリースして解散した伝説のバンドBOYZ&GIRLのメンバーで、
そのバンドにはSKIP SKIP BEN BENもギターボーカルとして参加していた。
最新音源『Dead Species』リリース直後の2015年11月に台北に遊びに行っていたのだが、
台北の街中で『Dead Species』のレコードを裸で持ち歩くアメリカ人に遭遇したり、waiting roomという世界各国から集められたレコードや本やZINEを販売している店でも一番目立つ場所に『Dead Species』が陳列されていた。
FORESTSの台湾での人気を目の当たりにして、これはいつか実際にライブを見てみたいと思っていた矢先のこのジャパンツアーの知らせが届き、今回その京都公演へ足を運んだ。
日本版のプロフィールの『現在の台湾で最も実験的で先鋭的なバンドであると言えるだろう』という記述どおりのライブを目の当たりにして度肝抜かれた。暗転したステージにうっすらと浮かびあがる照明。スモークが充満したステージ上はまるで霧の中のような光景であった。
その中から腹にどしん、とくる低音が一音発せられ、次々と予測不能なノイズ音に身体を震わせる。まるで夜の森林の中を手探りで進んでいるような感覚に陥った。
ノイズ、エレクトロ、サイケ……あらゆる音楽を飲み込んだ彼らの新たな境地はそこに確かにあった。オフィシャルサイトで過去の音源を聞いてもらえばわかるのだが、もっとガレージロック風で60年代へのオマージュ的な要素が強かったのだが、『Dead Species』では一変、今までとはまるでバンドが変わったのではないか!?と思わされるほど実験的なサウンドを彼らは繰り出してきた。別媒体でのインタビューでは「もともとFORESTSでこの曲調はやっちゃダメだとかってことは一切なくて、自然な成り行きでの変化なんだけど、ちょっと変化が激しかっただけだと思う」とその変貌について語られていたのだが、年齢を重ねた彼らが行き着いた境地であることは間違いない。
これまで積み上げてきたサウンドにとらわれず、今自分たちが一番求める方向へ突き進む精神が、多くの台湾ミュージックラバーたちの心を捉えているのだろう。
台湾インディーズシーンでも重要な存在なのは間違いないし、そのクオリティを実際にライブで体感して、その情報に違いはないことを感じ取る事ができた。
成長過程にある台湾インディーシーンでFORESTに感化されたバンドがこれから台湾で出てくるかと思うと、これからもその動向からは目が離せない。そしてあと数年で30歳になる彼らが今後バンドをどう続けるか、これもシーンでは重要なポイントになることは間違いないだろう。新たな境地をこれからどう昇華させていくのか、見ものである。これからも追い続けたい。
WRITER
- 岡安 いつ美
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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