REPORT
【SXSW2018】新しいPeelander-Zを見た
MUSIC
2018.04.27
ピーランダーの“第三形態”
昨年2017年、実に6年ぶりに見たPeelander-Zのライブは、2011年に見たものと大きくイメージがずれていることはなかったが、この6年の間の変化を真正面から感じさせられた。ここ数年のドラムが流動的で、昨年のSXSWでは日本人がドラムを叩いていた。彼らの所属するChiken Ranch RecordsのショーケースではRed River Streetに飛び出し、50人近いオーディエンスがその周りを取り囲んでのライブを見せてくれて「ああ、今年もピーランダーが見れた!」と、根拠のない安堵感を抱いた記憶がある。メンバーが変わればバンドも変わる。しかしイエローがバンドの支柱である限りは、その軸がぶれることはないし、今後も多分そうなのだろうと思ったのが2017年のことであった。
Peelander-Fest 2018
そして今年2018年、イエローには事前に「Peelander-Fest(ピーランダー・フェス、以下ピーフェス)を見に来て欲しい!」と言われていたのでSXSWの終盤3月16日に行われたピーフェスを見に行った。ピーフェスはピーランダー主催のデイパーティーで子供から大人まで、あらゆる人々が楽しめるイベントだ。会場のSpider Houseはオースティンの中心部からは少し離れたエリアにあるが、ナチョやスムージーが絶品、近隣には飲食店、古着屋などもあるので1日Spider Houseで楽しめる。私も毎年ピーフェスに行くのが楽しみのひとつだ。
イベントの大トリはもちろんピーランダーで、イエロー、パープル、ピンクの順番に登場した。そしてステージ上にはドラムセットが、ない。おやおやおや!?と思っていたら、おもむろにピンクがベースを担ぎ出す。昨年のライブでは恐る恐る弦を弾いていた彼女が、堂々とベースを手にしていてさらに驚いた。
そしてライブは普段通りにスタートする。お客さんや最前列を陣取ってる子供たちはきらきらとした目でステージを見守り、飛んだり跳ねたりしてはしゃいでいた。
彼らはしばしば“アクション・コミックバンド”と言われているが、音楽のジャンルで言えばパンクバンドである。単純なコードとわかりやすいリズムと言葉で、会場中のオーディエンスを釘付けにさせ、コールアンドレスポンスで一体感を生み出し、音が鳴るものを手渡して一緒に演奏をする。
彼らのライブは受け身でただ見ているだけのライブではなくて、“参加する”ものなのだ。ただただ見ているだけでは終われない。参加して、全身でピーランダーのショーを楽しむ。だから彼らのショーは記憶に残りやすいし、なんかよくわからないけどすごいし楽しかった!という印象を必ずつけられる。これこそが彼らのパフォーマンスの真髄であろう。私ももれなく魅了された一人である。
「パープルが曲作りに加わって、曲の作り方や曲調が変化した」と、イエローが話をしていた。アレンジャーとしてパープルが曲作りに参加し、パンクバンドとして純粋に原点回帰し始めている、とも。ここ数年は、コンセプトに沿って曲・アルバム作りをしていたが(そのテーマはキッズや、メタル、宇宙など)、コンセプトを取っ払った曲作りを最近は行っているそう。とにかく今の彼らのライブはわかりやすいパンクバンドになりつつある。
さらなる変化としては、イエローの傍にはサンプラーが置かれており、ドラムの音はオケで流れる。ドラム不在の今、新しい形でのライブのスタンスを模索した結果が今の形態なんだとか。バンドの形態は変わろうとも、これまでの人気曲は健在なのは個人的にとても嬉しかった。“S.T.E.A.K”で「Midium Rare!!!」と叫ぶ瞬間、ああやっとオースティンに帰ってきてピーランダーを見ている!という気持ちになれたのは言うまでもないし、“Mad Tiger”での人間ボーリングはいつ見てもテンションが上がる。新曲の“Bike!Bike!Bike!”は新たなピーランダーのアンセムとしてファンの間でもすっかり定着していたし、ピーランダーは変わっているけど変わらない、そんなことを存分に感じられた。
イエロー、パープル、ピンクの3人でスタートさせたピーランダーの第三形態。かなり手探りだったというこの形態での活動は始まったばかりだ。2017年、2018年のたった2回でここまで形を変えてきた彼ら。この形が定着してきたあかつきにはさらに進化した姿を見せつけてくれるはずだ。つい先日より2ヶ月間に及ぶ春の全米ツアーが始まったばかりの彼ら、この第三形態の完成形を見れる瞬間を私は今から楽しみにしている。
ーーそう、ピーランダーは進化して新しくなったばかりなのだ。
今からでも彼らのことを十分追いかけることは可能なので来年SXSWに参加する方は、ぜひともピーランダーのショーを見てもらいたい。これがオースティンで活躍する日本人バンドのリアルであり、彼らのパワフルなパフォーマンスはきっとライブの既成概念をぶち壊してくれるはずだ。
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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