これからミュージックFESTA 2016 @ Live House nano 16.06.26
毎週第2木曜日にFM79.7MHz京都三条ラジオカフェにてOA中ラジオ番組『これからミュージック』の5周年を記念したイベント、これからミュージックFESTA2016が二条にあるLivehouse nanoにて行われた。この日出演したのは、番組のパーソナリティでもあり、京都で活動中のシンガーソングライター竹上久美子や、これまでに番組に出演してきた「今、勢いに乗っているアーティスト」総勢19組。リアルな京都を体験出来る1日となった。nanoのステージとnanoの上にあるスポーツバー・ラクボウズの2ステージで交互にライブは繰り広げられた。
イベントのトップバッターを鮮やかに飾ったのはツバクラメ星屑オーケストラだ。彼の真骨頂はライブごとに見合った異なるこだわりの編成を魅せてくれることだろう。4人~8人の自由自在の編成で観るものの視線を釘付けにした。「音楽をやっている人たちへの応援歌です!」とVo/Gt川原田の清々しい宣言で始まった“航海衛星”は見ているこちらの気持ちも熱くさせられた。
続いてnanoのフロアに登場したのは、ミサト&鳥越万紀雄(From.Gue)。ツバクラメ星屑オーケストラの温かな空気感から一瞬にしてフロアの空気を変えた彼女の歌声。実力派のミサトだからこそ成し得る技であろう。三つ編みにジーンズ姿というキュートなルックスとは裏腹、どっしりとした一本筋の通った彼女の姿勢、まっすぐにぶれない眼差しがとても印象的であった。オリジナル曲はもちろんGRAPEVINEのカヴァーも披露。最近アナウンスされた彼女の新バンドへの期待も膨らむライブであった。
その流れでnanoのステージに登場したのはシークレットゲストアーティストとして出演が決定したシンガロンパレードだ。サウンドチェックの段階からライブバンドとしての風格を見せる彼らへの期待が膨らむ。初っ端からエンジン全開のライブは“ビービジービー”や“KYOTO-JIN PEOPLE!!”まで新旧問わずのセットリストで繰り広げられた。「やっぱり彼らのホームは京都なんだな」と感じるかのようなMCが始まると会場に笑いが起こり彼らのにじみ出る人懐っこさに安心感さえ覚えた。
バンドセットステージが3組繰り広げられた後、ラクボウズにトップバッターとして登場したのはバカガミタカッタ世界。オーソドックスなアコースティック編成を基板とし、浮遊感漂うサウンドが特徴的であった。このサウンドにVo/Ag谷口の柔らかな歌声が馴染んでいく。特に、サウンドサウンドループを用いてゆっくりと音を重なり合わせる構成はより一層惹き込まれた。各楽曲の数分間の中に、まるで演劇を観ているかのような、世界感が広がる。それは私たちオーディエンスの想像力を遙かに書き立てるものであった。まさに「百聞は一見に如かず」とは彼女たちのライブに当てはまるのではないだろうか。
裸足スタイルで片足を組みながら、歌い始めたのは石田千尋だ。「大人になりたい、泣いてるだけじゃなくて」ただただ一点の方向を見つめて、発せられた第一声。この瞬間、心奪われた観客が多数いたのではないだろうか。切なさが混じる歌詞が特徴的な“バイバイ、ブラックバード”を歌う彼女からは全く弱さを感じなかった。まさに、強さを秘めたシンガーソングライターの姿があった。
nanoのステージに戻るとMILKBARが登場。音合わせを終えたサウンドのボリュームを徐々に上昇させ、観客の期待を煽る。思わず身体を揺れ動かしたくなるような、独自のグルーヴを即座に作り出していた。アッパーなナンバー“LOWの視点”のサビではオーディエンスとの対話を楽しむ一幕も。どんどんと顔が綻んでゆくVo.北小路。約1年ぶりとなるこの場所でのライブを会場全員で楽しんでいた。
続く、myletterが神髄のオルタナティヴロックを披露。1粒、1音と逃したくない、聴けば聴くほど深みにハマる、ライブサウンドが印象的であった。「現在アルバムを制作中」という嬉しいニュースでも観客を湧かせてくれた。
2組のバンドサウンドの後にはゆ~すほすてるが緩いアコースティックサウンドでクールダウンを。和やかな空気に乗せて普遍的な日常を切り取ったような歌詞を紡いでいた。
続くは、西島衛(From:ザ・シックスブリッツ)、あっけ(From:カトキット)が普段のバンドとは異なった弾き語りスタイルで登場。西島衛が歌い始めると、全身全霊を注いだ言葉が真っ直ぐに伝わってくる。その反面、MCが始まると自身の当日のハプニングを笑いに変えてしまうユーモアさが光っていた。ライブだからこそ、人間性をより感じられるということを思い出させてくれた。
一方、あっけ(From:カトキット)は歌とギターに真っ向に向き合い、まさに男気に溢れるステージングを。20代前半という若さ溢れる姿からは甘酸っぱさというより、不思議と葛藤がくみ取れた。どこか彼女自身の日々の心情も込められている楽曲たち。それらが、同年代に起こりうるであろう日々のやるせない、歯がゆさを代弁してくれるかのように見えた。
そして、ラクボウズのラストを飾ったのはhotel chloe。まるで、ジャズを彷彿とさせるサウンドが心地良さを増してゆく。ハーモニカを携えて歌う姿にも妙に味が出て、歌う姿には思わず見惚れてしまう。一方、日本語詞の楽曲はとても穏やかで和やかな空気感が生まれ、会場を包み込んだ。
いよいよイベントも終盤。残すところ、nanoのバンドセットのみとなったところで観客の期待を裏切らないステージが続く。
キャッチーなメロディーセンスが光る、LOVELOVELOVE。昨年リリースした2nd Full Albumの楽曲から初期の楽曲まで幅広いセットリストを準備していた。思わずキュンとしてしまう爽やかなVo/Ba寺井の歌声と躍動感漲る、サウンド。その隙間になんだか青春時代を彷彿とさせる懐かしさが香っていた。そして、彼らのステージは「大人も子供みたいに楽しんでいいんだ」という雰囲気を漂わせていた。
お次は京都発ギターポップバンド、空中ループ。ライブが開始する頃、オーディエンスは前のめり気味だった。これがまさに彼らが長年の活動の中で積み上げてきたキャリアの証なのだろう。演奏が始まると安定感のあるリズム隊にエレクトロなギターサウンドが鳴り響く。そこに乗せられる透明感のある、松井のVoがやっぱりたまらない。良い意味で決してジャンル分けできない幻想的なサウンドで魅せられた。
スーパーノアは新曲が序盤から2曲も続くというファンにはたまらないサプライズを届けてくれた。まさに攻めのステージにグイグイと惹き込まれていく。「くるってしまったまま夢をみている」と癖になるようなフレーズが聞こえて来たらこの曲“ドリームシアター”。その瞬間、思わず笑顔がこぼれ、自然と身体が揺れ動きだしたオーディエンスたち。各メンバーの音が重なり合ったとき、さらに楽曲の色彩が増したときの高揚感はたまらないものであった。
京都のベテラン勢が続いた中に、負けず劣らずなライブを魅せてくれたのはGue。「本当歌いたいことは何。今日歌える歌を歌いたい。」とVoの谷が言い放った後、“Hello, my anthem”を披露。希望に満ちあふれた歌詞が眩しくもあり、たくましくもあった。バックで支えるサウンドは良い意味で若さを感じさせず、洗練されている。そして、まだまだバンド全体としてさらに磨きがかかるであろう期待感をも匂わせた。最近では各所のオーディションに参加する等、さらに活動の幅を広げている彼ら。この日も新たな観客の心を確実に掴んでいたことだろう。
いよいよ、トリには新譜のRECに参加したバンメドンバーとともに竹上久美子が登場。早速POPで爽快なサウンドが1曲目の“グッバイガール”で鳴り響く。彼女の真骨頂である透明感に溢れ、突き抜けていくかのような歌声が映える。こうして5月にリリースしたばかりのEP『種を蒔く朝』からのナンバーを生のサウンドでふんだんに披露した。
「音楽を投げ出しそうなときに作った大切な曲」と語り、演奏された“月は、”紆余曲折なエピソードが潜むこの楽曲のサビを歌い上げる姿に一段と強さが垣間見えたように思う。
およそ9時間におよぶ見応えあるラインナップは予期せぬアンコール“ふたりでハミング”で幕を閉じた。楽しげで無茶ぶりもありのアットホームな雰囲気が自然と生まれ、最後まで彼女らしさが光っていた。
「99%の嫌なことがあっても、残り1%の今日みたいな瞬間のために皆、生きている。」と主催者である竹上久美子がMCで語っていた。本音であるこの言葉を発信できるのは約13年間、様々な音楽が交差する京都の音楽シーンで活動を継続させてきたからこそ。そしてこれまで自身が活動の中で感じてきた様々な想いがあったからこそ「今、京都から発信したい音楽の形」が生まれこのイベントが誕生したのだと思う。そして、今日も明日も京都のどこかで彼女が期待する「これからの音」を様々な音楽家が確実に鳴らしていくのであろう。その姿に負けぬよう、シンガーソングライターであり、オーガナイザーである彼女は今後もこのイベントを成長させてくれるはず。今から「これフェス2017」の開催をぜひとも、心待ちにしよう。
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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