【ボロフェスタ2015 / 前夜祭】Nabowa / ゆるめるモ! / 渋さ知らズオーケストラ
Nabowa
これから3日間に渡って繰り広げられる祭りへの期待に全員が胸をヒリヒリさせるなか、はじまりの一音をそっと置いたのは、京都が誇る4人組インストゥルメンタルバンド、Nabowa。日本各地の大型フェスだけでなく、ファッション・アート界からも引っ張りだこの多彩な魅力を持つ彼ら。聴こえてくるアンサンブルの精密さにビックリさせられることはあっても、けっして難解ではない、老若男女誰もが気持ち良く身を任せることの出来る楽曲が、集まった人々を気持ちよくほぐしていく。
どことなく南国の宮廷音楽を思わせる”mego”は、ベースのフレーズに絡まるゆったりとしたムードで始まる一曲。後半に向かうにつれ増してゆく、身の詰まったドライブ感にハッとさせられる。ヴァイオリンの音色で華やかに彩られた”Nice Parade”では、Gui.景山奏が小躍りしながら見せる歓喜の表情もひっくるめて、ライブならでは、さらにボロのステージという環境ならではの、祝祭の高揚感が会場の端まで広がっていくのが目に見えて分かる。MCで景山が笑いながら述べたように「超しっとり」とスタートしたのも、2013年に続く2度目のボロ出演にあたって見せた、活動11年目の彼らの余裕なのかもしれない。いや、そうに違いない。ライブの終盤にはVi.山本啓が、弦が切れるほど激しく生き生きした演奏を披露。圧巻のパフォーマンスでボロのスタートをみずみずしく飾った。
ゆるめるモ!
高まるオーディエンスの気持ちは、続くゆるめるモ!の6人へと軽やかにバトンタッチ。「脱力支援アイドル」を標榜するグループながら、メンバーのキャラが立ちまくる見どころ満載なステージは、まさに緊張感のかたまりといったところ。ダンサブルで明るいポップチューン、”逃げろ!!”を皮切りに、ニューウェイブを芯に持つ硬質で尖った楽曲を次々と展開。MCのあとは、11月11日リリースの新譜「You Are The World」より、ハシダカズマ(箱庭の室内楽)提供のトラック”よいよい”を本邦初披露。いちごみるく色のツインテールを振り乱しながら歌い踊るようなぴの姿からは、宇宙の香りさえ漂っている。かたやユルさにおいては唯一無二の存在感を放つあの。”Only You”で繰り広げられる悪夢的なシャウトの重奏のもと、虹色のストロボに切り取られたシルエットが、どれもロックすぎる。これは何かやらかすぞ!というワクワクは見事的中、あののダイヴを横目に、シフォンも客席へ飛び降りる。ステージを見やると、ちーぼうが泣き出しそうな勢いで全身を震わせながら歌い上げている。これまで非常階段やPOLYSICS、神聖かまってちゃんなど、様々なジャンルのコラボレーターを引き寄せてきたのも納得の熱量だ。ラストの”OO(ラブ)”が鳴り止むころには、目まぐるしいパフォーマンスの応酬にすっかり叩きのめされてしまっていた。
渋さ知らズオーケストラ
いよいよ登場!この日のトリを飾るのは真のレジェンド、渋さ知らズ。しかもオーケストラ編成の超豪華版で、本編スタート前からごちそうさまですと手を合わせたくなる見目麗しさだ。管弦楽器の活躍めざましい、今年のボロフェスタを予見するような佇まい。音が鳴り始めたその瞬間から、彼らはバンドやグループというくくりではとても収まりきらない、ひとつの国をボロのステージに作りあげてしまった。
ヴィクトリア調にも金剛力士風にも見えるタダモノじゃない出で立ちのダンサーが妖しく踊る陰から、リーダーであり指揮者、もとい「ダンドリ」担当の不破大輔が姿を現し、すぐに会場全体が”ヒコーキ”の艶っぽいアンサンブルで満たされた。いっけん無頓着な身振りで舞台上を散歩するダンドリがたまに見せる、「これこれ!」という嬉しそうな表情から、一人一人のプレイヤーに対する信頼が見てとれる。ほどなくしてネオンカラーの衣装をまとったパフォーマーたちが登場。アートと音楽の融合が織りなす、空前絶後の一体感。これを祭りと呼ばずしてなんと呼ぼう。”渡”には女性ボーカル陣のまろやかな歌声が光り、”ナーダム”に響く力強いブラスの音色には終始、鳥肌が立ちっぱなしだった。その場にいる者すべてを巻き込むとんでもない求心力のカーニバルは、なんとステージを飛び出し客席へ。たまたま居合わせたゆるめるモ!のメンバーも加わり、しばらくの間フロアが幸せたっぷりのダンスホールに。ボロフェスタの幕開けを彩るに、これ以上の祭り囃子はない。本当にごちそうさまでした。合掌。
(Text:たかいし/ Photo:岡安いつ美)
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