【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Pygtant!! / SATORI / トリプルファイヤー
■Pygtant!!
ときめき☆ジャンボジャンボより派生したバンド”空飛ぶキャッチー”Pygtant!!。少し緊張した面持ちではあるが、深呼吸してふっと前を向いた彼らの一曲目は「とんでけロケット!!」。繊細でまっすぐに響く、背筋がピンとしたような女性の声と、力強いけれど柔らかい男性の声のツインボーカルの絡み合いがより彼らのセンチメンタルな部分の演出に磨きをかける。若々しさというより、大人の余裕が見え隠れするポップな曲が多く、丁寧な演奏で落ち着いたムードでライブは進んでいく。三曲終わったところでベースのハヤシが、「今日が初ライブです、元々ボカロでつくってた曲をバンドでやっています」、「皆さんに楽しんで頂けたら本望です」と短いMCを挟む。
ボーカルの透き通った声は軽さがありすっと空間に馴染むのだが、ベースはその声を守るかのように重圧で、キーボードの音も彼女の声を包みこんでいく。しかし主張をしないわけではなく、本当に音楽が楽しいというような演奏である。そして一筋縄ではいかないような芯の強さがこのバンドの背中を叩いているのだろうか。曲者揃いの地下ステージだが、真っ向から大人の余裕で魅せていた。
■SATORI
全国のライブサーキットに出演しており、じわじわと人気を拡大している京都のニューカマーSATORIが地下ステージに、いつものおそろいの白衣でついに現れた(Dr.内藤ちゃんのみドラえもんのきぐるみ)。気合が入っている反動か、小ネタを仕込んでいる数はさすがである。初っ端から飛ばし気味で旬のネタを披露した彼らは満面の笑みを浮かべながらキラキラの音に乗せて「NO NO NO」「カジキマグロ」を演奏。夏っぽい曲の中が多い彼らの曲の中でもよりまぶしい日差しが差しこむような二曲を続けてお祭り騒ぎに磨きをかける。どのパートの音にも心地良い隙間があり、ゆらゆら踊るには贅沢すぎる空間の中、ベースのちゃん6が言った「ボロボロになりましょう、ボロフェスタ!」という掛け声でフロアからは歓声があがり、本当に楽しんでいるというのを身にしみて感じた。「私、雨、台風」ではSATORIの売りでもあるポップなセンチメンタルさを存分に見せつけてきた。曲同士のこの振り幅が本当にくせになるのだ。ボーカルのハノトモ、YKO両名の声の絡み合いがより彼らの世界観をグッと大人っぽく、切なく丁寧に演出していく。
「2015年の勝負曲やります」と前置きをして披露したのは8月に発売した「トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー!」、勝負曲というだけあって他の曲とは少し雰囲気が異なり、全力でフロアにぶつかってくる。それに応えるフロアもまた全力でSATORIに向かって手を上げて次の展開を期待して目を輝かせて彼らを見つめていた。彼らはポップでキュートだが、ただ底抜けに明るいというわけではなく、どことなく渋さが残っていて力強い。まぶしくてキュートで渋いなんて、なんて卑怯なバンドなんだ。
■トリプルファイヤー
はい、お待たせしました。こちらアングラヒーローのお出ましです。トリプルファイヤーが地下ステージのトリを務めると聞いてちょっとニヤリとしてしまったあなた、かなりの好事家ですね。「だって俺、ケータイのゲームしかやってないから」なんて、ある意味パンチの効きまくった、たいして韻も踏んでないリリック。そこから滲んで止まらない、とにかく弱気で虚脱した若者の心の叫び。
観ていて気付いたけれど、自己主張をぐっとこらえたストイックな演奏隊のループと、Vo.吉田の熱っぽさとのギャップがこれまたシュール。なんてイマドキなんだろう。現代に生きるカウンターカルチャーを目撃した感動で胸がいっぱいになった。”トラックに轢かれた”、”全国大会”、”次やったら殴る”など、聴けば聴くほど心がつらくなる名曲の連発に、彼らがアングラヒーローたるゆえんを見せつけられる。吉田も苦しそうだ。そんなに苦しいならやめればいいのに!でもやめないんだね!ありがとう!
”カモン”でフロアに投げかけられる「まだまだいけるでしょ~」の声、口から3cmのところにポトッと落ちてるよ。最後、鳴り止まないアンコールに応え披露された”ブラッドピット”で、ボロフェスタ地下ステージの一日目は、予想以上に濃い後味を残して締めくくられたのだった。
(Photo : 岡安いつ美)
WRITER
-
地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
OTHER POSTS