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【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】BiSH / メシアと人人 / 夜の本気ダンス / my letter

MUSIC 2015.10.27 Written By アンテナ編集部

BiSH

2日目のトップバッターを飾ったのはBiSH。初めに言っておくが僕はアイドルのライブを見るのはほぼ初めてである。多少の偏見がある中でライブに臨んだ事を許してほしい。

 

昨日の熱狂冷めやらぬまま、フロアへ入った僕はスタート前からすでに異様な空気が流れていることに気づいた。何かが違う!いやしかし本日のトップバッターはアイドルであるから僕の経験した事のない空気が流れているのは当然だろう。そんな空気に飲まれそうな中メンバーが出てくると、もはやはち切れんばかりのテンション。ゆっくりとしたイントロからその空気を切り裂くようにブリブリのツーバスとアイナ・ジ・エンドのシャウトから突入したのが”OTNK”。強烈な重低音とともにハードな楽曲がホールを揺らす。同時に会場のテンションは爆発し清掃員(BiSHファンの総称)たちが猛烈に踊り出す。ものすごい勢いで会場の空気を持っていく。これがアイドルの力か!とその勢いに圧倒されていた僕に続けて2曲目が襲い掛かってくる。

 

既にMAXになっている会場のテンションをメンバー全員がステージ最前でヘドバンでさらに煽り、もちろん清掃員たちも合わせてヘドバン。BiSHとは自らを”新生クソアイドル”と称しているのだがこんなにも清楚な見た目。それでいて重低音ずっしりで激しくクォリティの高い楽曲で場を圧倒し、時折見せるセクシーな表情がたまらない。さらにMCでは「キュウソネコカミとくるりが楽しみです。」と普通の音楽好きの女の子感も出してくるのである。MCが終わり続いて4曲目の”スパーク”はまたもや重厚な低音だが、どこか懐かしさも感じるメロでじっくりも聞かせてしまう楽曲。自分自身の勉強不足ではあるが現代のアイドルはここまで進化しているのか。5曲目は再び軽快なリズムに戻り会場を盛り上げていく。

 

そこで僕は気づいた。先ほどから実は何気に目が行ってしまっていたモモコグミカンパニーである。BiSHのフリには力強く手を突き上げたり、大きく振ったりするものが多くあるのだがモモコグミカンパニーの手首、ふにゃふにゃ。可愛い。もう一度言う。可愛い!!!!モモコグミカンパニーから目が離せない。まだ言い足りない。可愛すぎる!僕は完全に清掃員の仲間入りをしてしまったようである。こうなるともう目の前の清掃員の渦に飛び込んでいくしかない。そしてこの日最後の楽曲が”nerve”。サビが来るとメンバーが触れられる位置の最前まで出てきてステージ前は大渋滞。その勢いでステージが大きく動くほどだった。しかし清掃員たちはとても良いマナーの方々が多く、メンバーはもちろん他の清掃員やお客さん、スタッフが怪我をしないようにかなり気を使っていた。アイドルに限らずいいミュージシャンにはいいお客さんが多いのだ。そういった点でもBiSHのまだまだ成長し続ける底知れぬ魅力を感じたライブであったし、ボロフェスタ2日目も素晴らしい1日になる事が予感できたライブであった。

メシアと人人

この日メシアと人人は2ndステージの二番手。1stステージでキュウソネコカミが終わると、リハの段階から爆音が鳴り響く。これを待っていた!そう思っていたのは僕だけではないだろう。それはもちろんキュウソネコカミを見て外に出ていこうとするお客さんにも届いたに違いない。そしていつものいい意味での気の抜けた北山のMCから1曲目”ククル”が始まる。北山のギターアンプ2台にベースアンプ1台から鳴り響く轟音の中でMyBloodyValentineのビリンダを彷彿とさせるドラムの福田のコーラスから始まっていく。何も変わらないいつものステージがそこにはあった。

 

メシアと人人の音楽はお酒を飲みながら聞きたい音楽である。彼らは自身らのをシューゲイザーと呼ぶがそこにはロックンロールのスピリッツもあれば、パンクネス、グランジイズムも詰め込まれていて、いつもよりもバカになって踊り、叫び、手を振り上げてしまう自分。大人になってしまった僕がそれを楽しむためにはやっぱり少しのお酒の力が必要なのだ。そしてそう感じているのは僕だけではなく、フロアにいるお客さんもそうだったようだ。1曲目を終えるなり、フロアからは高ぶりの声が聞こえてくる。そのまま2曲目の”アップル”へ。今度は低音ゴリゴリの所にグランジイズムを感じさせる歌メロが重なってくる。MCが入り3曲目に向かう。今度は軽快なナンバーでフロアを乗せてくる。この”悪あがき”では「最後の最後の悪あがき。悪くはない悪あがき」という印象的なフレーズがあるが、こういった要所要所で心を射抜くシンプルなフレーズがあるのが彼らの武器でもある。かっこ悪い僕たちのためのかっこいいロックンロールである。こうなるとフロアはもう彼らのものである。KBSホールに北山の爆音のギターとシンプルながらもしっかりとポイントをついてくる福田のドラムが鳴り響き、最後まで疾走する彼らは清々しかった。

 

4曲目が終わって最後の曲の前に北山が「最後は真面目にやって終わります」と一言。感情を全てぶつけて音を鳴らす彼らは、ロックに出会えて良かったと思わせるには十分だった。演奏の最後北山はフロアに降りてお客さんの塊の中央辺りまで爆音を鳴らしながら闊歩し、ギターをステージに思いっきり投げた。その姿はフロアにいた全ての人たちにとっては完全にロックスターのそれだった。メシアと人人が今後も何も変わらずにステージに立ち続ける事を願うばかりである。

夜の本気ダンス

さて、2ndステージは3組目の登場前からフロアは待ちわびたお客さんでいっぱいである。フロアが待っているのは夜の本気ダンスだ。ライブごとに確実にファンを増やし、ついには2016年新春メジャーデビューが決まっている期待のバンド。

 

歓声とともにメンバーが登場しDr.の鈴鹿秋斗が煽り、1曲目の”B!tch”のイントロが鳴り出す。そしてVo./Gt.の米田貴紀の「踊れる準備の方はできてますか?」の一言でフロアを一気にダンスの渦へと導いていく。1曲目からここまで完全にフロアの空気を持っていくのは本当に驚いた。しかし何よりも驚きなのは彼らの実力である。最近のダンスロックシーンを否定するわけではないが、夜の本気ダンスというバンドには音楽的な基礎体力というかバックボーンが本当にしっかりしている印象がある。アンサンブルはもちろんであるが、一つ一つの小技でしっかりと見せてくるのである。例えばこの1曲目の”B!tch”ではメロディからもちゃんと音楽的素養を感じられるし、Ba.マイケルのグリッサンドのタイム感や米田貴紀のダブルチョークの揺らしの感覚など。2曲目に演奏された”FunFunFun”ではAメロでのGt.町田建人のアルペジオの歌への寄り添い方もセクシーだし、ギターソロ終わりの低音に戻る所に関していうと、しっかりと音楽を聴いてきた人でないとできないフレージングである。サビでは90年代の泥臭さも匂わせる。もちろんDr.の鈴鹿秋斗もすごく、しっかりとしたビートの中でも歌の隙間をしっかりと埋める揺らし方をしてくるので、さらに楽曲全体のテンポ感が良くなる。長くなってしまったが、現在のダンスロックシーンで一味も二味も違うのはそういった細かい点が楽曲の中にたくさん盛り込まれているのである。

 

2曲目が終わった段階でMCを挟む。Dr.の鈴鹿秋斗が地元のバンドらしいMCでさらにフロアとの一体感を作る。音楽だけでなくしっかりとMCでもつかんで来るのは関西らしいところでもあるし、ショウとしても素晴らしい。MCが終わるとその空気を逃すまいとしっかりと全員でシンガロングできる”too young”から今一度MCを挟み”fuckin’ so tired”へ。Vo.米田貴紀がフロアへ降りて踊り、ライブが進むにつれフロアを巻き込む要素がどんどん増えていく。ステージに戻ってからはコール&レスポンスである。なんとも美しい流れのショウである。ダンスロックとは言うものの、しっかりとしたロックンロールであり、それでいて歌ものとしての魅力もしっかりと出してくる本物の音楽が鳴り響いている。そして圧巻が5曲目”戦争”。いったんフロア全体を座らせてからサビで一気に全員が立ちあがって本気ダンス。フロアから見ていてもこの人数が一斉に踊り出す様はとても気持ちが良かった。最後の”WHERE?”に至るまでしっかりとお客さんとライブを作っていた。

 

子供を抱きながら踊っているお母さんもいて、幅広い年代に愛される彼ら。2016年のメジャーデビューからは日本全体を巻き込んでいくのは間違いないであろう。これからの夜の本気ダンスからは目が離せない。

my letter

続いて登場したのが、京都のアート・パンク・クァルテットmy letter。前回の音源が多方面から絶賛の嵐を呼んだmy letterが今年のボロフェスタ2ndステージに登場した。音源が本当にすごかったのでライブがシビアに見られがちだが、彼らはそんなハードルを簡単に超えてくる。その地道に活動してきた彼らの実績が映し出されたようにフロアにはたくさんのお客さんがいた。残念ながらDr.のキャシーはこの日がmy letterとしての最後のステージであったが、この4人で立つ最後のステージに彼らは笑顔で現れた。

 

そして颯爽と”アメリカ”の演奏が始まり、観客が湧きたつ。軽快なドラムのリズムとギターのイントロから進む楽曲。Vo./Gt.のキヌガサは甲高いながら時折空気が多い透き通った声で、時折詰まらせるような声で淡々と歌い上げていく。静かな始まりだが、決してフロアを置いていく事なく僕たちをどこかへ連れて行ってくれるようだった。my letterの音楽はなるべく荷物を少なくして鈍行列車に乗り、全く知らない町へと一人旅する時に車窓から眺める景色とともにずっと聞いていたいような音楽である。あまりに個人的過ぎる見解はこういう場では避けるべきだが、そういった感覚を誰かと共有したくなるそんな音楽なのである。

 

そして2曲目に演奏されたのは”ルーザー!”。Ba.のおざわさよこがベースを置きシンセに手をかける。”アメリカ”とは打って変わってテンポの速いロックなナンバーである。歌メロに絡まる2本のギター。キヌガサもまつもとも2シングル(ギターのピックアップの種類でハムバッカーがパワフルな音に対しシングルは繊細で軽い音がする)だからこそリズム隊の上で複雑な絡みをしても決して歌が埋もれる事がなくしっかりとアンサンブルが完成するのである。2曲目が終わるとフロアからは大きな歓声が起こる。愛されてるなぁ、my letter。笑顔で答える彼らは何よりもバンドらしいバンドだった。バンドマンもこういう素敵なバンドに憧れる事がある。MCは少ないながらも演奏の中でメンバーそれぞれと、そしてフロアの心地よく揺れるお客さん達と会話を楽しんでいるようだった。最後の曲”ストロボ”までその会話は続き、この曲では真っ白な照明が4人を照らしていた。その光景は4人の音楽に対する純真さが映し出されているようでもあった。ギター2本の絡みは最後まで健在で、この2本の絡みが始まる前はシーンを切り替えるようにDr.キャシーのフィルインに特に力が入るので、ギターの音に集中してしまう。まるで1本の映画を見ているようだった。

 

全曲の演奏が終わりMC土竜からキャシーに感謝の気持ちが述べられ、そこでもう一度大きな拍手が送られた。11月頭にはnoidとのスプリットレコードが発売される。形を変えながらも、my letterはこれからもmy letterの音楽を鳴らし続けていってくれるであろう。

 

(Text:こにー)
(Photo:岡安いつ美(BiSH)、大西晴菜(メシアと人人/夜の本気ダンス/my letter))

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