中川正子 個展「ダレオド」
「誰も見ていないみたいに、踊って」
どこかの牧師が書いたそんな言葉を以前、アメリカのスーパーで見かけた。
その一文は心のどこかにすっと、静かに沈み、
美しい景色となってずっと、わたしの中に存在しました。
夢中で踊る誰かの姿とともに、いつしか、「踊る」という動詞は、
わたしにとって、生き生きと生きることの、象徴になりました。
わたしは、ひかりを集めたい。
戦い争い傷つけ合うこと。不安や恐怖や絶望。
それらに抗う代わりに、わたしはひかりを粛々と集めたい。
わたしの、あなたの、彼らの、生きる日々にこぼれる、ひかり。
はかなく、強く、おだやかに、鋭く。
それらを余すところなく拾い、積み上げることは、わたしにとって、
強い祈りのようなものです。
歌が作れないから、歌の代わりに。踊るみたいに。
拾い集めたひかりの粒はやがて、わたしの手を遠く離れ、
それぞれが呼応し合って、明るさを増してゆく。
ひかりに包まれたひとびとは、抱き合って許し合い、恐れは消えてゆく。
そこは、助け合い、分け合い、愛し合うひとびとの世界。
そこからもう、焦点を離さない。そう、決めました。
ね、誰も見てないみたいに、踊って。
ワコールスタディホール京都は、一貫して混沌とした世界の中から
ひとつずつ光を選びとることをテーマに活動する
写真家・中川正子の個展「ダレオド」を開催致します。
「誰も見ていないみたいに、踊って」
あるとき見つけたこの言葉から、中川はひとつのイメージを育ててきました。
それは、のびやかに生き生きと踊り、歌い、愛し、生きる人の姿。
中川にとって、いつしかこの無心に「踊る」姿は、
あることの象徴として存在するようになりました。
世界で何が起ころうとも、大きな力が押し寄せようとも、
それらがつけ入る隙もないほどに、目の前にある確かな光に意識を集め
それを手放さない。そんな生き方の、象徴として。
http://www.wacoal.jp/studyhall/gallery/event/article79500
写真には、日々にこぼれる光とともに、踊る人の姿が写し出されています。
写真家の中川が踊るように生きるために選んだ手段は、シャッターを切ることでした。
そうして集めた光のひとつひとつは、はかなく微弱かもしれません。
しかしそれぞれが集めた光の束はいつか世界を明るく照らして行く、
という強い祈りにも似た願い、そして誓いが
「ダレオド」という4 文字の言葉に集約されています。
是非この機会にご覧ください。
中川正子 (なかがわ・まさこ)
自然な表情をとらえたポートレート、光る日々のスライス、美しいランドスケープを得意とする。
写真展を定期的に行い、雑誌、広告、アーティスと写真、書籍など多ジャンルで活動中。
2011年3月に岡山に拠点を移す。全国及び海外を旅する日々。
2017年に最新写真集『ダレオド』(BOOK M ARUTE/Pilgrim)を上梓。
台湾を皮切りに、全国で展覧会とフェアを展開する。写真集に『新世界』(PLANCTON刊)
『IMMIGRANTS』(Octavus刊)などがある。
日時 | 2018年3月2日(金)-31日(土) 火曜~金曜 10:00-20:00/土曜 10:00-17:30 |
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場所 | ワコールスタディホール京都 ギャラリー |
入場料 | 無料 |
主催 | ワコールスタディホール京都 |
企画制作 | スパイラル/株式会社ワコールアートセンター |
WRITER
- 岡安 いつ美
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昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。
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