ボロフェスタ2014 day1-10m stage編-
片想い
ある人はホルン、ある人は鍵盤ハーモニカ、ある人は三味線、等々、それぞれがそれぞれの楽器を担う街の楽団、片想いがやって来た。のっけからハッピームード全開なのに、そんな中日常をちくりと刺す言葉を陽気な音楽に乗せて潜ませるんだから見てるこっちがはっとなる。そして何より彼らは演奏中にも関わらず楽器を置いて踊り出したり、人間紙相撲をしだしたりとこの空間にいる誰よりも彼らが一番楽しそうなのだ。なんだかずるい。小憎たらしい。こうなったら負けじとこっちも楽しんでやったらいいのだ。実際彼らはライブ中「楽しんでね」と何度も何度も繰り返していた。楽しむということこそ彼らのライブの根幹なのだろう。
楽しい時間というのはあっという間で……終演後の私は視覚的にも聴覚的にも感覚的にも楽しさに包まれているなか、ちょっぴり切なさといとおしさを感じた。それは彼らが陽気なメロディーの中に潜ましたちくり刺さる言葉の力なのかもしれない。終演後までほんとに憎い。楽しいだけじゃ終わらせないなんて。東からの楽団は色んなものを京の都へ置いていってくれた。(text:アンテナ編集部)
Baa Baa Blacksheeps
今回、ホストバンドとして主催者らとともにこのボロフェスタを作り上げてきたBaa Baa Blacksheepsが10mステージの2番手を務めた。MC土竜の前説が終わるとともに、Gt.コニーの切ないギターの音が鳴り響く。最初は、まばらだった観客が徐々に集まってき、タイミングを見計らったかのように”耳鳴り”が始まる。『しあわせになりたい』と歌うVo.神部のその言葉たちを前にして、思わず呆然と立ち尽くしてしまった。欲というのは、弱さでもあり、強さでもあると思うのだが、彼の歌声や彼らの曲たちからは、その弱さと強さの両方を感じることができる。だからこそ、彼らの音楽は、人の心に響き震わせ、そしてぎゅーっと締め付けるのだ。
最後の曲”Blacksheep”では、なんと後ろの幕が引かれステンドグラスが現れる。不安をすべて曝け出すように歌う神部。このときには、もうすでに観客がフロアを埋め尽くし、多くの人が彼らの勇姿を目にしたはずだ。ボロフェスタの10mステージという大舞台で、ボロフェスタが多くの人に知ってもらいたいという思いは大勢の観客に届いたのではないだろうか。(text:アンテナ編集部)
N’夙川BOYS
期待通り、と言うべきか。”プラネットマジック”からスタートしたN’夙川BOYS。リンダのキュートなVoと入れ替わりにマーヤのがなり声が響き渡ると力強い拳がフロアから一斉にあがる。キンブラだけでなく夙川BOYSでも、確かな骨太なロックリスナーの支持を得ていることが感じられる瞬間であった。2曲目では左右の巨大なスピーカーの上にマーヤとシンノスケがまるで仁王像の如くよじ登り、ツイン背面ギター弾きを披露。「久しぶりのライブが楽しくて楽しくて仕方ない。鬱憤を晴らしにきたぜ、ボロフェスタ!!」とまるで子どもみたいにはしゃぎまくる3人。観客も勿論盛り上がっていたが、彼らの全力っぷりはフロアの熱量をも遙かに越えていたかもしれない。
ライブの終盤では、マーヤは「そっちに行っていいですか?」の一言で一瞬で客を前に集めダイブ。例えどんなにキャリアを積んでいても、観客と同じテンション・目線でライブをしてくれる、そんな彼らを身近に感じるライブであった。こんなにアーティストとオーディエンスが通じ合うことができるなんてボロフェスタならではであろうし、それを叶えてくれた夙川BOYSには全京都から心からの拍手を贈りたい。そんな気持ちでフロア中が手拍子に沸いていた。(text:山田和季)
envy
結成して20年を超えてなお、日本のハードコアシーンのトップを走り続け孤高の輝きを放つenvy。そんな彼らのライブを一目見るために集まった多くの人の期待がKBSホールのフロアに充満していた。
深く怪しげな森の中を彷徨い、不安を煽るようにひずむ音の波の中から一筋の光のように鳴り響くギターの音色。息を飲むほど緊迫した空気を切り裂くのは、激しい轟音と絶望を一手に背負ったような咆哮だ。そんな“深く彷徨う連鎖”からライブはスタート。押しつぶされそうな圧力を徐々に解放させていくように“時は終わる”へとなだれ込む。衝動を爆発させるような激しさを持つ“NURO DEVILMAN”ではステージ後方のカーテンが開帳、美しいステンドグラスがむき出しになる。想像以上に彼らのステージにしっくりとくるカラフルなステンドグラスが高揚感を生み出し、心が震えた。ラストには“暖かい部屋”を披露。嵐が過ぎ去ったあとのようなやすらぎをもたらすアルペジオが鳴り響く中、Vo.Fukagawaが一言「ありがとう」とつぶやく。長い余韻に浸れるほど感動する時間であった。(text:岡安いつ美)
七尾旅人
「ピースフルなコースと暗黒のコースどっちがいい?どっちも出来る用意はしてるんだけど」そんな提案から始まった。OPは”星に願いを”。流れる星、爆発する星、巨大な星、いろんな星をホール内に声とギターとエフェクトのみで次々と誕生させていく。流れ星なんて可愛いものではない。子供の頃、宇宙や死について考えてしまって真夜中に大泣きしたあの日を思い出すような、信じられないほどのエネルギーを七尾旅人は一人で放出し続けていた。彼が漏らす吐息ですら聞き逃さないように、と感じる程フロアは静まり返っていた。しかし”サーカスナイト”のイントロが流れ出すとゆらゆらと一人、また一人と止めていた呼吸を吹き返すように動き出した。その呼吸に返事するように、七尾はゆっくりとステージを降り、観客の上にまたがるとそのままゆっくりと人の群の中を歌いながら流れていく。あんなにやさしく穏やかなダイブは初めて見た。
「やっぱり暗黒コースはやめておきます。」と言って歌い始めたのは”tender games”。ギター一本でトリッキーな音を鳴らしていた先ほどとは打って変わって、SSWらしい暖かみのある音色と哀愁漂う歌詞がホール中に響き渡っていく。最後の曲”Memory Lane”を歌い終えた後、まだ時間があるからと観客と話を始めた。「ボロフェスタ、本当にたのしみで正直帰りたくない。ただステージを降りたくない。」散々くだらないおしゃべりを観客と繰り広げたあとようやく始まった”Rollin’ Rollin’”はなんだろう、この人の言うことなら信じてみよう、そんな気分になった。(text:山田和季)
NAMBA69
本祭一日目のトリ、全キッズの王様NAMBA69の登場だ。爆裂的に体の芯まで震わせてくるような音の勢いは体感してみると本当に洒落にならない。もはやフロアは一触即発状態!と思うもつかの間。「みんなも歌える曲やるよ?」との難波の一言で”カントリーロード”が始まると、一瞬にしてKBSホールが人間闘牛場に……!!一度こうなるともう客の勢いは誰にも止められない。およそ40~50人がステンドガラスの下で跳ねるわ転ぶわぶつかり合うわのエネルギーは半端じゃない。曲が終わると難波もGt.K5も客の功績に思わず大拍手、「すごいね!」の一言である。
超メロディックなギターで始まる夏の新曲”SUMMER TIME”では、重めのズンズンくるサウンドの中にも軽やかなメロディラインとギャインギャインなのになぜか爽やかなギターが合わさり、フロアのキッズたちもまるで夏フェスに戻ったかの如くはしゃぎまわる。
「未来で待ってるぜ」と一言放ち、12月発売のアルバムからの新曲を演奏。これでもかというほどサークルモッシュ・ダイブしまくる観客たち。これだけ長い間メロコア・パンク界を牽引し続けた挙句、まだお前らよりずーっと先で待っててやるぜと難波は言うのだ。なんて頼もしく、かっこよく、男気に溢れているのだろうか。(text:山田和季)
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地域に根ざした世界中のインディペンデントな「人・もの・こと・場所」をおもしろがり、文化が持つ可能性を模索するためのメディアANTENNAです。
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