【ボロフェスタ2015 / Beelow stage】DOTAMA / ミノウラヒロキマジックショー / 平賀さち枝
DOTAMA
YUMIMPOさんの手掛けたファンシーでキュートな空間、Bee-low stageの一発目はDOTAMAで幕開け。ヒゲでメガネのおしゃれなお兄さんがやってきたなーとか思ってたら、挨拶もそこそこに初っ端から顔を真っ赤にして凄まじい勢いでリリックを歌い出すはギャグラップとな?!「名曲の作り方知らない ファーストアルバム超えられない」と笑えないぐらいトラウマティックで呪縛的なナンバー”名曲の作り方”をのっけから披露。他にも”HEAD””カリカチュラ”など最新アルバムからの曲を矢継早に繰り出してくる。
「実はわたくし、フリースタイルという即興でラップができる特殊能力を持っております。」そう言ってフロアの客から無条件にワードを募り、でてきたワードは「ラグビー」「介護」「UMB」「BACK TO THE FUTURE」「杭打ち」の5つ。このワードをもってフリースタイルを披露してくれるというのである!うおお!この瞬間、このステージでしか見ることができないなんてアツすぎる展開だ、フリースタイルすごい…。もちろんDOTAMAはいとも簡単にお題ワードでリリックを刻んでいくのだが、ワードが出る度にドッと興奮に満ちるフロアよ!お題に出てきた「UMB」とは「ULTIMATE MC BATTLE」という日本での代表的なMCバトル大会のことで、なんとつい数日前にDOTAMAは東京予選にて優勝したとのこと。そりゃ客もテンションぶちアガるわ。そのままのテンションで向かう”通勤ソングに栄光を”では、脳味噌のてっぺんから吐きだすように会社勤めに苦しむ人たちを称賛。DOTAMAの「月曜日からまた仕事だよ!!!!!」の絶叫には客たちも今日イチの雄叫びをあげる。揃いも揃ってやけっぱちのこの姿!続くはもちろん”リストラクション”へ。あらゆる全てをブン殴り、上司の頭をブチ抜くまでを全力で歌うのであるが、小道具のマシンガンを抱え辞表を叩きつけるそのDOTAMAの姿はなぜか他人とは思えない…。いや、マシンガンなんて持ったこともないし辞表も叩きつけたことはないのだけど、DOTAMAが代わりにこのすべての不平不満を体現してくれているような気がして笑えないぜ。笑ったけど。
ラストシット(ってラストソングのことB-BOY界では呼ぶのか?)は “イオンモール”。「イオンモールで俺は迷子 何を買いに来たのかも忘れるほど」深そうで…浅いっっ…のか深いのかっっ…!といろいろ考えながらも、終始血管がブチ切れてしまうんじゃないかと心配になるほど顔を真っ赤にするDOTAMAを眺めていた。最高。
平賀さち枝
1stステージの在日ファンクと地下ステージのSATORIの音もれに挟まれ、ややカオスな音空間と化していたロビー。しかし一歩奥に踏み入れば、平賀さち枝の歌とギターが生み出す、ほんわかとした空気に心が休まる。いい意味で、完全に異世界なのだ。まるで違う星の小さなささやきに耳を傾けているような気持ちになる。2分足らずの短い曲、”ホリデイ”に詰まっているのは、誰かと過ごす日常の温かさそのもの。軽やかなメロディーがまぶしい”眠ったり起きたり”や、”Loving you”の言葉選びに見え隠れする彼女のコケティッシュな魅力が、ライブでは存分に発揮されている。先ほどまでHomecomingsやneco眠るのリズムの上を駆け回っていた無邪気な歌声が、日が落ちたいま、まったく違う表情を見せている。これはずるい。「今年は歌うぞっ!」「聴きたいかっ!」と申し訳程度に声を張る姿にも、心がとろけてしまいそうだ。”江ノ島”に続いて、ラストは「夜の歌」だという”青い車”。刺激に満ちたボロの空間に、一陣の涼風が吹き抜けたのだった。
(Photo : fujimari(DOTAMA)、岡安いつ美(ミノウラヒロキマジックショー、平賀さち枝)
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