【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】ミライスカート / 黒猫チェルシー / トクマルシューゴ
■ミライスカート
昨年のボロフェスタも出演し、今年の夏に『COSMOsSPLASH』でメジャーデビューを果たした、京都発の”はんなり”&”ポップ”なアイドルユニット・ミライスカート。今年は5月に行われたワンマンライブはソールドアウトし、数多くのイベントに出演、関西で一番波に乗っているアイドルでもある。…といった堅苦しい話はさておき、ボロフェスタでは毎年数組のアイドルが出演しており、なんといってもアイドルである。振り付けや動きがきちっと揃っているのは当たり前なのだが、アイドルライブには必要不可欠な合いの手も「ファンの方」も完璧なのだ。アイドルライブの醍醐味とも言えるが、いわゆるバンド編成のライブばかり見ていてはあまり経験しないことだろう。そういった全く異なる音楽を一度に楽しめるのがボロフェスタらしさでもあり、その「らしさ」をミライスカートに一任しているのだ。
『メグリメグル』『ハンナリ☆スター』から飛ばし気味の彼女らは、「みんな楽しんでいってください!」と声を張り上げる。アイドルとして当たり前になっている「可愛い」を全力で振りかざし、ふっと見せる真面目な顔がよりダンスのキレに磨きをかけている。マイクをファンの方に向けたり、ウインクをしたりと見ているとついついクラっときてしまう。自己紹介を含めたMCでは「かわいい!」やメンバーの名前を呼ぶ声が行き交っていた。
そんな彼女らを応援しているファンとの掛け合いを重視したゴミがテーマの曲『ミーゴ!ゴミーゴ!』では一体感を演出しつつ些細な事柄ではあるが社会的な問題をポップなトラックに載せて歌うのは影響力のあるアイドルならではの曲と言えるだろう。そして最後の曲の『ナモナイオト』では彼女らが鑑賞者であるファンに対してよりアイコンタクトをし、より熱狂的でキラキラを輝くステージを完成させていく。同曲の「どこまで行けるのかな ここから歩き出すよ」という歌詞を歌う本人たちが”はんなり”とどこまで行けるのかとても楽しみだ。
■黒猫チェルシー
「京都――――!!!!!!!!」と大絶叫しながらステージへとあがってきたVo.渡辺大知。”ベリーゲリーギャング”の唸るギター音の中、フロアの一番遠くまでをみつめている渡辺の眼差しはギラッギラのギットギトで完全に仕上がっている。ノッているぞこれは!!期待が高まる……!負けじとGt.澤の色気たっぷりかつシブいギターがガツガツと主張してくる。すでにこれはたまらんぞ、今日は大変な日になる!最高のカッティングを聞かせてくれてるぜー!メンバー全員が最高の表情で演奏してくれているこの感じ、なんと言ってもダントツで表情豊かな渡辺……やっぱ顔で歌ってくれてナンボやで!!!!
3曲目にはNHK朝ドラ『まれ』の劇中で作成した”涙のふたり”を披露。この展開にはどうしようもなく胸が高鳴った人たちも多かったのではないか。恋に敗れたすべての人に捧ぐ!と言っていたが、「死ぬまで一緒にいたいよ」「ずっとずっと離さないよ」なんて超ド級ストレート甘酸っぱソング……どこまでもブチ抜いてピュアな黒猫チェルシーに思わずガッツポーズを捧げてしまう。このご時世ここまでド直球なラブソング書けるの黒猫チェルシーが銀杏BOYZしかおらんて…。こんな歌を捧げてもらえるなら月イチぐらいで失恋してもいい…なんて突き抜けてピュアな気持ちにさせてくれるステージだった。続いての新曲”グッバイ”では間奏のリードギターが完全に泣きじゃくっている最高のロックンロールラブソング。顔でギター弾く人と、ギター泣かせにかかる人に限っては絶対に音源にはこの空気感を乗せきれないはずだから、そういう意味で本当に黒猫チェルシーはライブバンドでしかないなぁと思わされた。
「俺たちから京都ボロフェスタ、そしてあなたたちに向けて、愛を!込めて!」と言って演奏されたのは”恋はPEACH PUNK”。ちょっぴり懐かしいポップなメロディにのせながらくるくると目まぐるしく渡辺の表情は変化し、客にむけてとびきりの笑顔を向けてくれる。「いつでも迎えにくるよ!」と叫ぶその姿はなんて素敵で夢のようであろうか。熱狂の中、最後の曲”Hey ライダー”でお別れ。「踊ってさよならしましょう!」と言い残して彼らは去って行った。
■トクマルシューゴ
グロッケン、アコーディオン、スティールパン……大小さまざまな楽器たちが2nd Stageにぞくぞくと並び始めた。インディゴブルーのジャケットに身を包んだトクマルシューゴが現われると、自ずと会場はハンドクラップに包まれた。オープニングソング”Katachi”では終始ハンドクラップは鳴りやまず、いきなりステージとフロアの垣根を超えてしまうようなごちゃまぜの演奏で全てを持っていかれてしまう。頭の毛先から足の爪の先までが幸せに震える!
ステージ上ではにぎやかな楽器だけでなく、金色のテープが宙を舞ったり人形が傍らで踊っていたり、文句なしに華やかではあるのだがそれ以上にトクマルの優しくも芯の強いハッキリとした歌声に異様な緊張感すら感じられる。優しく暖かいステージとこの威圧感・緊張感の同居……ゾクゾクさせられる。”Green Rain”では変則的なリズムに複雑なハンドクラップ、そしてトクマルのロングトーンのあと……そのまま演奏はストップし会場はシンと静まり返るがその空気感にたまらず観客はくすくすと笑い始める。「――――…ふぅ。なんか我に返っちゃった。コンタクトがね、コンタクトが入っているからお客さんの顔が見えちゃう。僕はね、極力お客さんとコミュニケーションをとりたくない。」と優しく吐き捨てた瞬間、時間が巻き戻ったかのように演奏を再開する。いじわるなオルゴール箱みたいだ。4曲目は現在制作中の楽曲の中から披露してくれた。幾重にも重なっていくコーラスと楽器のハーモニー。音に包まれながらも圧倒的情報量の過多にまたしても身震いしてしまう。なんだか別の世界に連れていかれてしまうみたいで、ちょっとした恐怖すら感じるぞ!
続いてアコースティックギターに持ち替えたトクマル。「40分の持ち時間なのに50分ぐらいのセットを持ってきました。タイムアップのところでいきなり止めるので。」と冗談なのか本気なのか分からないMCを述べたのちに”Mushina”を口ずさみはじめる。トクマルのギターに少しずつ音が加わっていき、どんどんとスピードアップしていく。その様子に思わず観客はため息をもらす。確かに楽器の数は多いのだが、土台となっているのはドラム1台・ベース1本・ギターに至ってはトクマルの弾く1本だけであるのにこの広がり、重厚感。降り注いでくる音たち。魔法使いだとしか思えない。待ちわびたあの”Rum Hee”のイントロメロディが響き渡るとフロア中には恐れも不安もなくなって、ただただ眩いばかりの光景が広がっていた!!なんて神々しい空間。「できる限りをやっていきます。」といいラストソング”Down Down”を演奏し終えると足早にステージを後にした。「21時にドラムを帰さないと新幹線がヤバいので。」とMCで言っていたが終わった時間は20:58。うーん、時間を守りながらも全9曲と大満足のステージを見せてくれた、大変デキる男である。
(Photo : さいとうまゆみん)
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